■米ドル全体は2008年に歴史的な底値を形成していた?
さて、為替相場は米国株ほど明確なトレンドが出ていないが、2011年半ばから2016年年末まで米ドル全体(ドルインデックス)が大きく上昇し、その後、2018年2月まで大きく調整、そして目先まで総じて米ドルのリバウンド、といった基調が観察される。
(出所:Bloomberg)
昨年(2019年)秋以降の調整は目先まで続き、おそらくこれからも続くと思うが、米ドル全体の強気変動を否定できるものにはならない、という大局観を持つべきであろう。
換言すれば、米ドル全体の歴史的な底値がすでに2008年にて形成された可能性が大きいことが大きなポイントである。
戦後の為替相場そのものは、米ドル安の歴史だったと言っても過言ではない。米ドルと金との兌換の放棄(ニクソンショック)で始まった為替相場は、大きなサイクル(約16年)をもって大きな米ドル安・外貨高の相場を推進してきたが、2008年のリーマンショックで、本質的な修正が行われた。
それは他ならぬ、リーマンショックを退治するため、FRB(米連邦準備制度理事会)が前例のない史上最大の量的緩和(QE)を数回にわたって実施してきたにも関わらず、ドルインデックスが2008年3月安値70.80を切らなかったことに表れている。
このような歴史的視点を大事にすれば、おのずと、「なぜ天文学的な量的緩和があっても、ドルインデックスが底を割らず、逆に上昇してきたか」という疑問に正面から答えられる。
筆者が考えることはシンプルだ。
つまり、「米ドル全体が歴史的な安値をつけたから」という他あるまい。戦後一貫してきた米ドル安の歴史に終止符が打たれ、すでに米ドル高のサイクルにあるから、これから紆余曲折はあったとしても、基調としては米ドル高が維持される公算が大きい。
ドルインデックスの構成通貨の中で、一番大きなシェアを有するのがユーロであるから、目先はユーロの切り返しを有力視するものの、中長期ではユーロの一段下落が避けられないだろう。
(出所:TradingVeiw)
■2020年は相場が動く! 仮に円高なら90円がターゲット?
そして肝心の円だが、米ドル/円とドルインデックスの連動性は主要通貨のなかで一番弱くはあるものの、やはり、歴史的なトレンドとして円高の時代はすでに終焉し、円安の時代に入っていることを、大局観として強調しておきたい。
(出所:Bloomberg)
ゆえに、目先なお主流に見える根強い円高論には同意できない。2015年から大型トライアングル型保ち合いが形成され、これから放れるなら円高方向に、といった固定観念にこだわるせいか、日本の銀行系アナリストの大半はなお「有事の円高」とか、「リスクオフの円高」とか従来のロジックで円高の余地を議論しているようだ。
(出所:TradingVeiw)
しかし、米中の軋轢、ブレグジットなどなど数多い「有事」があっても、米ドル/円は底割れを回避してきたから、今こそ従来のロジックが通用しなくなった根本的な原因を今一度検証しなければならないのではないかと思う。
昨年(2019年)年末に集計された統計では、銀行系アナリストの多くは今年(2020年)の米ドル/円の上値を111円台と予測、高くても112円台程度なので、目先のレートに近い。
筆者の考えは「楽観」的すぎるかもしれないが、早ければ、111円台のターゲットは、2020年年内ではなく、今月(1月)にでも達成できるのではないかと思う。仮にこのような市況があれば、やはり、従来のロジックを改める必要があると強く意識されるだろう。
(出所:TradingVeiw)
さらに、2018年に続き、2019年の米ドル/円の変動率もかなり小さかったのに(史上最低?)、今年(2020年)動かないわけがないと思う。円高にしても円安にしてもかなり動く可能性が大きいから、覚悟したほうが良さそうだ。この意味においても、筆者からみれば、円高予想の多くは「物足りない」。
仮に円高の予想が正しい場合、102円~105円とか(銀行系アナリシスの中間値)ではなく、また単に100円の大台ではなく、90円とかのターゲットが達成されるのではないかと思う。
(出所:TradingVeiw)
筆者としては、あくまで円安・株高が正論だと思うが、まったく「落とし穴」がないわけでもない。その「落とし穴」についてまた次回議論したい。市況は如何に。
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