■中東情勢の緊迫化は短期間で終結
年初は、中東の地政学リスクから、リスク回避の動きとなりました。
米国軍が、イランのソレイマニ司令官を空爆で殺害したことから、1月8日(水)に、イランは報復攻撃を行いました。
これを受けて、米ドル/円は107.65円まで下落。
(出所:TradingView)
しかし、イランの報復攻撃で米国人の死者は出ず、イランは戦争を求めていないとの報道もあり、さらに、トランプ大統領も、演説で軍事報復を示唆しなかったことで、中東情勢の緊迫化は短期間で終わりました。
【参考記事】
●米ドル/円は、新たなレンジで戻り売り! 中東情勢緊迫化は、短期で決着がつきそう(1月7日、バカラ村)
●イランと米国による戦争回避で株価反発! リスクオフ沈静化で豪ドル買いに妙味!?(1月9日、西原宏一)
●イラン戦争の心配はイランかった!? 出た~! 米ドル/円に調整完了のサイン!(1月10日、陳満咲杜)
■戦争回避で市場は反発。リスク出ても影響軽微に
完全に払しょくされたわけではありませんが、戦争が回避されたことから、金融市場は反発し、米ドル/円も109.94円(※)まで上昇してきました。
(※ 編集部注:本記事の寄稿後、1月14日(火)の東京時間に米ドル/円は一時、110.20円付近まで上昇した)
(出所:TradingView)
イランとは、今後も部分的に小競り合いが出てくると思いますが、両国とも戦争をするつもりはないことから、地政学リスクの材料が出てリスク回避になったとしても、下げは軽微になると思います。
■米中摩擦は長期戦。景気後退の材料に
今週(1月13日~)の注目イベントとしては、15日(水)に予定されている米中第1段階の合意の署名式になります。
トランプ大統領は、15日(水)より遅れる可能性もあると発言していましたが、仮に遅れたとしても、市場は合意を織り込んでいると思います。
合意によって、追加関税第4弾の関税率は15%から7.5%へ引き下げられることになります。
ただ、追加関税第1~3弾の関税率は、そのままになります。
トランプ大統領は、この追加関税を第2段階の合意に向けたカードと考えているようです。
第2段階の交渉は、すぐに始まるようですが、合意は11月の大統領選よりもあとになる可能性が高いようで、そうであれば、それまで追加関税が適用されたままになります。
米中の第2段階の交渉はすぐに始まるようだが、合意は11月の米大統領選よりもあとになる可能性が高く、それまでは追加関税措置が継続しそうだとバカラ村氏は指摘。写真は2019年6月の大阪G20時のもの (C)Visual China Group/Getty Images
そうなると、中国の景気が鈍化し、その影響でユーロ圏やオーストラリアなども影響を受けることになります。
すぐに金融市場に影響が出るわけではないですが、長期的には景気後退の材料になります。
■米中合意署名のあとは方向感なく推移!?
中東情勢が緩和され、米中の第1段階の合意署名も1月15日(水)に行われることから、リスク選好となっていますが、合意署名されたあとは、それ以上、リスク選好を積極的に仕掛けていくほどの状況ではないと思います。
米ドル/円やクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)は上昇していますが、その後は方向感なく推移するのではないかと思います。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)
■米ドル/円、チャートからは上昇余地!
ただ、チャートからは、米ドル/円はまだ、上昇する可能性があります。
米ドル/円は、108~109.70円のレンジを下抜けて、107.65円まで下がりましたが、そこからV字回復していることもあって、まだ上昇するチャートパターンとなっています。
(出所:TradingView)
中東情勢も、もうしばらく続くかと思っていましたが、あっという間に沈静化したこともあって、上昇余地が出てきたのではないかと思います。
■ダマシに終わる可能性には注意だが…
昨年(2019年)は、何度もダマシの形があったため、今回の米ドル/円も、上へのブレイクはダマシに終わる可能性があります。
追いかけるのも躊躇するところですが、中東情勢などのリスクや米中の対立も緩和しているため、米ドル/円が下がる材料もなくなっています。
【参考記事】
●エリオット波動から読むポンドの下値は? 3年連続小動きの米ドル/円。2020年は…?(2019年12月24日、バカラ村)
●動かない米ドル/円から投資家が離脱!? リスクオン継続で、豪ドル/円に買い妙味!(1月13日、西原宏一&大橋ひろこ)
米中が第1段階の合意署名をすれば、動きもなくなってくると思いますが、チャートからは、米ドル/円はまだ、上昇する可能性が出ていることになります。
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