■今晩の米雇用統計は予想それ自体が「最悪」の可能性も
今晩(5月8日)の米雇用統計は史上最悪になるだろうと言われているが、猫も杓子もそう言っているから、史上最悪でも相場に対する影響は限定的だと思う。
すでに周知された事実なので、それが織り込まれていることはもちろん、結果が出たら一種の「出尽くし」として晴れ晴れとした気分になる可能性さえあるかと思う。そして、非常時における一般論として、予測自体がより悲観的になり、またセンチメントとして主流になりやすいから、予想それ自体が「最悪」になる可能性があることにも注意が必要だ。
■株式市場の回復基調に対し、為替市場は値動き限定
株式市場の回復基調が保たれている一方、為替市場は値動き限定、レンジ変動の様相を深めている。
3月の「恐怖の米ドル買い」で米ドルの急伸もあって、4月から米ドル全体はいったん反落、また、中段保ち合いの値動きを見せてきたから、一種の反動とも受け取れる。
(出所:TradingView)
換言すれば、3月の米ドル全体のV字回復は、「恐怖の米ドル買い」の急伸で一時深刻な「買われすぎ」が発生したから、その後の反落や目先までの保ち合いは一種のスピード調整とみるべきだと思う。
前述のロジックが正しければ、スピード調整後の方向としては、やはり米ドル高だと推測される。未曽有の金融緩和があったから米ドル余剰が発生し、米ドルが売られるといった見方が多いようだが、将来的にはそのような局面が避けられないとしても、当面は来ない可能性が大きい。
言い換えれば、当面、米ドル高の基調が保たれ、また、ドルインデックスは3月高値をもう1回トライする公算が大きい。
(出所:TradingView)
■米ドルや米国債への資金流入は止められない
なにしろ、目先は米ドルの余剰が心配される局面ではない。米失業率が史上最悪になることが予想され、また、それが相場に織り込み済であったとしても、現実の経済活動がたちまち良くなることはない。
日米欧の深刻な景気後退自体は間違いなく、むしろ、これから惨憺たる状況に直面しなければならない。そのような状況にあるうちは、米ドルや米債券が随一、真の安全資産としてなお手放されず、また、選好されるはずだ。実際、昨日(5月7日)米2年物国債は、史上最高値(利回りは最低)を更新した。
米財務省は来週(5月11日~)、960億ドルの史上最高規模の国債(35年ぶりに20年国債発行も含め)を発行するが、うまく消化されるだろう。
コロナショックで新興国が受ける打撃は、もう測り知れないから、新興国からは資金が流出し、米ドルや米国債への資金流入は止められない。アルゼンチンはまたデフォルトに踏み切り、トルコリラは「底なしの急落」をしている。これらは事態の深刻さを物語っており、米ドル選好はむしろこれからだと思う。
(出所:TradingView)
■ユーロや円はリスク回避先として選ばれないだろう
一部、リスク分散のニーズでユーロや円に資金が流れ込む可能性もあるが、コロナショックで炙り出されたEU(欧州連合)圏の構造上の問題や、日本政府の危機対応能力の問題で、その可能性はあっても限られるから、ユーロはもちろん、円もリスク回避先として選ばれないと思う。
このあたりの詳細はまた次回にて検討したいが、言いたいことは1つ、米ドル買いはなおマーケットの主流であるから、目先、安易な米ドル売りは避けるべきだ。
米ドル/円に関しては、やや度合いが弱まったとはいえ、ドルインデックスとの連動性をなお保っており、前述の米ドル全体に関する考え方が正しければ、米ドル/円の下値余地はあっても限定的で、押しがあればむしろ拾うべきであろう。
(出所:TradingView)
目安としての基準は、筆者が一貫して主張してきたように、週足では105円の大台、月足では106円の大台を終値で割らないことだ。そうすれば、米ドル/円は3月安値を割り込むことなく、紆余曲折はあっても2月高値の打診につながるとみる。
【参考記事】
●金融市場における恐怖のピークは過ぎた?ドル/円は下がっても週足終値105円前後まで(2020年3月6日、陳満咲杜)
市況はいかに。
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