■クロス円が堅調だが、円は相変わらず「蚊帳の外」
株高の局面は相変わらず、為替市場は保ち合いを継続しながら円安基調を保っている。
英ポンド/円、豪ドル/円の高値更新が、目先のクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の堅調さを示し、トレンドを一段と鮮明化させている。
(出所:TradingView)
もっとも、円は「蚊帳の外」。円安基調とは言うものの、円が主体性を発揮するような相場ではないことも明らかである。
この意味において、「リスクオフの円高」はもちろん杞憂であるが、「リスクオンの円安」云々も理由の後付けにすぎず、的を射ないと思う。
つまるところ、メイントレンドとして米ドル全体の下落基調が維持され、その中で相対的に米ドル/円の切り返しが鮮明になればなるほど円安基調は定着しやすいから、米ドルの動向次第のほかあるまい。
円自体のパフォーマンスは二の次で、従来のリスクオン・オフの視点では捉えられなくなっていることも、鮮明化しつつある。
■ドルインデックスは3月安値を大きく割り込んでいるが…
繰り返し指摘してきたように、円がすでにリスク回避先として見られなくなってきたことは、昨年(2020年)のコロナショックにて検証済みだ。よって円の主体性を強調すべきではない。
米ドル/円に関して一番重要なポイントは、やはり昨年(2020年)3月安値である。
本コラムでも度々取り上げたように、ドルインデックスが昨年(2020年)3月安値を大きく割り込んでいる状況の中、米ドル/円のみ割り込めず、また、その上で保ち合いを維持していること自体、円安の土台を作っていると言える。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
何しろ、それはほかでもなく、主要外貨のうち円が一番弱い存在であることを示唆しており、主要クロス円における外貨高・円安のトレンドの継続も自然な成り行きというわけだ。
■本格的な円高局面が到来する条件とは?
市況は流動的、また、相場の一寸先は闇とも言われるから、将来の見通しについては誰も断言できないが、1つだけ言えるのは、仮に本格的な円高局面の到来があるとすれば、それには先行条件がある。
それは、前述のように、米ドル/円の昨年(2020年)3月安値(101.19円を)割ることだ。2020年3月安値割れがあれば、それから円高云々を心配し始めても遅くはない。逆に言えば、割り込めないうちは円高云々は、やはり杞憂のほかあるまい。
また、あえてもう1つ可能性を挙げるなら、米ドル全体の急速な切り上げに伴うリスクだ。
ただし、この場合でも、米ドル/円の上昇幅やスピードが米ドル全体をリードする可能性が大きく、結果的に円高傾向にはつながらないかと思う。何しろ、2021年年初からの市況がそうであったから、継続される公算は高い。
■米ドル全体の切り返しにおいて円の弱さが目立つ
米ドル/円の2021年年初来安値は、102.58円程度。先週(2月1日~)高値105.78円で計算すると、最大3%以上の上昇幅を記録したことになる。
一方、ドルインデックスは、2021年年初来安値の89.16から先週(2月1日~)高値の91.60までの切り返しを計算すると、2.7%程度に留まっている。
(出所:TradingView)
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これらのことから、米ドル全体の切り返しにおける対円の強さ、要するに米ドル/円のリードが浮かび上がり、円の相対的な弱さが目立つ。また、しばらくそのような局面は維持されると推測できる。
■米ドル/円が年初来安値を割り込むのは容易ではない
先週(2月1日~)高値から、米ドル/円もドルインデックスも、ともに反落してきた。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
米ドルの対極としてユーロに比べ、英ポンドや豪ドルなどの外貨の方が、米ドルの切り返しによる影響が小さかったから、英ポンド/米ドルは高値更新を果たし、豪ドル/米ドルは高値圏にて堅調な推移を示した。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
ゆえに、主要クロス円の中では、ユーロ/円より英ポンド/円や豪ドル/円の方がより堅調、また高値追いしやすい環境にあることが明らかで、円安基調が保たれるわけだ。
もっとも、巷における円高思考は、なお盛んである。米ドル/円の戻り売りを仕掛けたいという考え自体、わからなくもないが、ハードルは高まりつつある。
昨年(2020年)3月高値から引かれてきた大型下落ウェッジに対する上放れが確認されたばかりの段階なので、目先の反落は、むしろ切り返す途中のスピード調整と位置付けされやすい。したがって、2021年年初来安値を割り込むことは、相当なエネルギーや何等かの材料なしでは容易ではないと見る。
■米ドル/円は底打ちの可能性高まる
プライスアクションの視点では、先週(2月1日~)の高値が、一時昨年(2020年)11月高値を打診したことが重視される。
週足で見ればわかるように、昨年(2020年)11月第2週の大陽線が、いったん強気のサインを点灯したものの、結局「ダマシ」となり、その後、2021年年初来の安値につながったわけだが、同週安値の割り込みが、本来、さらなる米ドル安の余地を拡大するはずだったことは、見逃せない。
(出所:TradingView)
しかし、2021年年明けの安値打診が102.58円に留まり、その後、一転して大陽線で大引け。週足では、再度、「強気リバーサル&アウトサイド」のサインを点灯した。
同サインが効いているからこそ、先週(2月1日~)の高値トライがもたらされ、昨年(2020年)11月第2週の大陽線が、いったん否定(高値更新)されて新たなサインを点灯したわけだ。
それはほかならぬ、昨年(2020年)11月第2週の安値に対する一時の割り込み自体が「ダマシ」であったことを暗示しており、米ドル/円の底打ちの可能性が高まる。
大型下落ウェッジに対する上放れと相まって、底打ちを果たした公算が大きく、ここから安易な下値更新を回避できると思うわけだ。
そうなると、押し目があれば、むしろ拾う好機と見なされる。
その上、ドルインデックスの切り返しが足元のように弱いモメンタムに留まれば、やはり主要クロス円、特に英ポンド/円や豪ドル/円の上値追いにつながる。
トレンドの明白さでいえば、米ドル/円よりも英ポンド/円や豪ドル/円の方がより追随しやすく、しばらく順張りのスタンスで臨みたいところ。市況はいかに。
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