■スコットランド独立派が勝利、BOEは実質テーパリング
5月6日(木)に投票された、英国・スコットランド議会選挙の結果が出てきました。
勝ったのは、スコットランドの独立を掲げるスコットランド民族党。
独立派の躍進は英ポンドにとっていい材料ではありませんが、今朝(5月10日朝)から買われています。
独立派の勝利といっても、単独過半数に届なかったためでしょうか。
それもありますが、テーパリング(※)が近づいていることも大きいのでしょう。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
先週(5月3日~)のBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])会合では、債券買い入れの規模こそ据え置きでしたが、買い入れペースが減額されています。
BOEのベイリー総裁は「金融引き締めには当たらない」と強調していますが、実質的なテーパリングですよね……?
そう思います。
マーケットへの負荷を抑えるために、市場との対話をうまく進めようとしているのでしょう。
言葉尻の問題でもあり、ヘッドライン的な要素が強い。ポジションが取りづらいですね。
(出所:TradingView)
■米雇用統計で急落した米ドル/円が戻りそうなワケは?
先週の米雇用統計はサプライズとなりました。
NFP(非農業部門雇用者数)は100万人増の予想に対して26.6万人増。驚きの弱さです。
注目したいのが米10年債利回り(米長期金利)。1.58%だったのが発表直後には1.46%まで急落しました。
米ドル/円も109円台から1円近く急落しています。
ところが1時間後、米長期金利は全戻ししたものの、米ドル/円は下げたまま。
おそらく米長期金利のほうが正しく、やがて109円台へと回復する(※)のでしょう。
(※編集部注:本コラム公開時点で、米ドル/円は109円台を一時回復した)
(出所:TradingView)
今週は5月12日(水)に米CPI(消費者物価指数)、5月14日(金)に米小売売上高が発表されます。
先週の米経済指標は予想を下回る弱い数字が続きましたから、注目が集まりそうですね。
一方で、豪ドル/円やカナダドル/円などのクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)は堅調です。
過去1年で見ると、米ドルに対して主要通貨の中で円だけが売られています。
買われているのは、豪ドルやカナダドル、ニュージーランドドルなどの資源国通貨。
コモディティ高を背景にして、この傾向はまだ続くと見ています。
※ザイFX!編集部が作成
■リモートワークの広がりで「ウッドショック」
先週は「ウッドショック」=木材価格の上昇が騒がれました。1年で6倍の上昇です。
【参考記事】
●テーパリング着手で上昇のカナダドルは、材木相場の急騰で、さらに買い妙味アリ?(5月6日、西原宏一)
(出所:TradingView)
リモートワークの広がりで「郊外に戸建てを」という需要が米国で増えているようです。
友人も「一戸建てを買おうか」と話していました。
カナダの年金基金や、アジアや中東の政府系ファンドが、米国の住宅会社と組んで住宅の購入や建設をする投資を行っているそうです。
米国人の需要増を見込んだ資本が住宅市場へ流入して、木材需要を増大させているようですね。
一般消費者を巻き込んでバブル的な価格上昇を招き、やがてバブルがバースト(破裂)する、といったこともあるかもしれません。
そうなるとしても、まだ初動でしょうか。バブル破裂を懸念するのはずっと先でしょうね。
木材、とりわけ住宅向けとなると注目されるのがカナダですし、コモディティ市場では鉄鉱石や銅も上がっています。
鉄鉱石は4月末から約25%の上昇です。
(出所:TradingView)
鉄鉱石といえば、豪州ですよね。「豪州は鉄鉱石の上に国がある」と形容する人もいます。
【参考記事】
●LNG高騰など中期での豪ドルの強さは不変。下落中のユーロ/豪ドルの動向に注目!(1月21日、西原宏一)
●2021年、ポストコロナの注目通貨は豪ドル! コロナ変異種の感染拡大は懸念されるが…(2020年12月14日、西原宏一)
●豪ドル、鉄鉱石急騰を受けて上昇継続! 長期では水素燃料関連の報道も買い材料に(2020年12月17日、西原宏一)
それだけに、鉄鉱石が25%も上昇すると豪ドルも上がってくる。
注目しているのが豪ドル/円の直近高値である85.45円。
今朝(5月10日朝)の上昇でこの水準へ到達しましたが、さらにここをクリアに抜けてくると90円が見えてきます。
(出所:TradingView)
■豪ドル/円、カナダドル/円を押し目買い
週末には米最大のパイプラインがサイバー攻撃を受けて、操業を停止しました。
石油製品の備蓄は潤沢とはいえ、在庫は5日分程度とも報じられています。
パイプラインの停止が長期化すると、原油価格がさらに上昇するかもしれません。
この事件が株価や為替にどう影響するかはまだ不透明ですが、中長期的なトレンドとしての資源高は続くのでしょう。
今週の戦略はどう考えますか?
資源国通貨買いでいいと思います。
テーパリングへと動き始めたカナダドル、鉄鉱石が上昇中の豪ドルを、対円で押し目買いしていきたいと思います。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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