■ユーロへの見方が急変。カナダはテーパリングへ
先週(4月19日~)、BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])はテーパリング(※)を決定しました。
「もうテーパリング!?」と、意外な感じもありましたが。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
【参考記事】
●テーパリングに着手したカナダ。カナダドルは全面高! 次は、米国やオセアニア?(4月22日、西原宏一)
●テーパリング開始決定で、カナダドル急騰! 米FRBも、早ければ夏ごろに示唆する可能性(4月22日、志摩力男)
●菅首相、ファイザーCEOとの会談でワクチン確保にめど。米ドル/円の108円台は買いか(4月19日、西原宏一&大橋ひろこ)
カナダドルは当日(4月21日)こそ急騰しましたが、そこから伸びません。それなりに織り込まれていたようです。
注目は、同じく先週、ECB(欧州中央銀行)理事会が開かれたユーロ。
6月にも、テーパリングを議題にして道筋をつけるのでは、との見方が台頭しています。
経済指標も強いですね。
4月30日(金)に発表される第1四半期GDPはマイナス成長の予想ですが、第2四半期はプラスになるだろうとの期待が高まり、ユーロは買われています。
ゴールドマン・サックスをはじめ、ユーロへの見方が先週から急速に強気へ転じています。
ユーロ/米ドルの動きを振り返ると、1月6日(水)に1.2350ドルの高値、3月末に1.1704ドルの安値をつけました。
この1.1704ドルという3月安値は、2017年安値から2018年高値への上昇に対するフィボナッチ38.2%押しの水準。ここできれいに反発し、一時、1.21ドル台まで上げてきました。
年初来高値まであと200pips強です。
(出所:TradingView)
2008年高値から引いた、長期トレンドラインも上抜けてきましたね。
(出所:TradingView)
背景とされるのが、ワクチンの接種状況。
ワクチン接種が順調な通貨は買われる、という傾向です。
■「誰が円をショートするの?」
「コロナからの脱却」という面では、日本は3度目の緊急事態宣言となりました。
米ドル/円も、年初来の米ドル安・米ドル高のピークはユーロ/米ドルと同じような感じです。米ドル/円は1月初旬に安値102.59円、3月末に高値110.97円をつけています。
4月以降、ユーロ/米ドルが年初のレベルを超えようかという水準まで上昇し、全体的に米ドル安気味となったことで、米ドル/円も年初来安値・高値で引いたフィボナッチの38.2%押しの水準を割り込み、チャート形状が悪化しています。
(出所:TradingView)
緊急事態宣言でGW(ゴールデンウィーク)の経済活動は停滞し、再びマイナス成長に転落する可能性も高まっていますが、菅総理は補正予算を編成しないと明言。
国内生保の運用計画を見ても、外債は買うものの、為替ヘッジ付きなので円買いが出てきます。
これでは「誰が円をショートするの?」という話ですね。
【参考記事】
●本邦投資家の外債投資が、ドル/円の重しに。欧州のワクチン接種進展で、ユーロ反発へ(4月15日、志摩力男)
一方で、円を積極的にロングする人もいない。結果、米ドル/円は動かないのかもしれません。
為替への影響はないでしょうが、日本郵政の失敗も気になりますね。
2015年に6200億円で買収した豪州(オーストラリア)の物流大手への投資が失敗。
現在の価値はわずか7億円だそうです。
景気が落ち込むようだと、レパトリの円買いも出てくるかもしれませんね。
米国に目を移すと、キャピタルゲインへの増税が話題となり、株価が急落する場面がありました。
「今すぐの話ではない」と市場も冷静になったようですが、増税の話が具体化すると、米金利は上がりにくくなりますね。米金利と相関性が強い米ドル/円も上がりにくいことに…。
■バイデン米大統領、4月28日にも「米国家族計画」を表明
米金利は、今年(2021年)の上昇があまりに急ピッチだったための調整だと思っています。
インフレがすぐに落ち着くわけではないですし、FRB(米連邦準備制度理事会)のテーパリングも視野に入ってきた。
テーパリングが具体化すれば、米金利も再び上がり出すのでしょう。
テーパリングの時期ですが、「6月FOMC(米連邦公開市場委員会)で示唆、12月に開始」との声がある一方、「12月に示唆し、開始は来年」という見方も。
予想は割れていますね。
JPモルガンも6月に示唆する可能性があるとしています。
その意味で、4月28日(水)のFOMCは注目ですね。
4月28日(水)には、バイデン米大統領にとって就任後初となる議会演説も。
育児支援などを盛り込んだ、1兆ドルから2兆ドル規模の「米国家族計画(American Family Plan)」や、キャピタルゲイン増税について話すかもしれず、米金利が動く可能性もあります。
先ほども紹介しましたが、米ドル/円のチャートを見ると、年初来安値・高値で引いたフィボナッチの38.2%押しの水準を割り込んでチャート形状は悪化。
50%の水準も割り込むようだと上値余地が限られてくることにもなります。
(出所:TradingView)
■ゴールデンウィークの為替、輸出の売りが108.50円に
今週(4月26日~)後半から、日本はゴールデンウィークに入りますね。
企業の為替担当者は、指値を置いて休暇へ入ることがあるのですが、すでに米ドル/円の108.50円や109円に輸出企業の売りオーダーが置かれているとのウワサです。
金額は小さいですが、センチメント的に上値を重くする要因ともなっています。
その他の市場では、ビットコインが週末に5万ドルを割り込む場面がありました。
イエレン財務長官が仮想通貨のキャピタルゲインに対して80%課税を検討、とのツイートが流れたことが一因でしたが、悪質な「FUD(※ウワサ)」だった様子。
今週の戦略はどう考えますか?
(※編集部注:FUD(ファドまたはエフユーディー)とは、Fear(不安)、Uncertainty(疑念)、Doubt(不信)の略で、これらを煽る悪いウワサのことを意味する)
今週は、重要な節目に差し掛かっているユーロ/米ドルに注目。
1月から3月までの下落幅を4月だけで取り戻しつつあり、年初来高値まであと200pips強。抜ければ上値余地は大きいでしょう。
シンプルにユーロ/米ドルのロングでもいいのですが、テーパリングがテーマとなっている米ドルを売るというのもピンとこない。
ユーロ/円の押し目買いでもいいと思います。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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