米雇用統計の予測に限っては、エコノミストも小学生も大差なし!?
また米雇用統計待ちの時間になってきた。いつものように、それに関する予測や解釈が巷にあふれているが、すべて無視した方がよい。
繰り返し指摘してきたように、米雇用統計の数字を予測できる個人はもちろんいない。
ウォール街の強者、すなわち投資銀行さんも、予測実績としては長年惨憺たる記録しか残していない。
また、エコノミストと称する専門家たちも、米雇用統計の予測に限って言えば、小学生の予測実績と大して差をつけられなかったので、面目ないというのもやさしい言い方だと思う。
一昨日(8月4日)のADP雇用統計の数字さえ、予測とかなり大きな差が出たから、本番の数字を予測すること自体がムダというか、トレーダーにとっては百害があって一利なしである。
トレーダーたる者、相場のことは相場に聞く姿勢を維持し、あくまで相場の流れについていくしかない。
ゆえに、現時点も、米雇用統計後の市況も、徹底的に相場の反応を注意深くフォローし、その最大公約数を推測し、また、トレンドが明白になるまで慎重なスタンスを崩さないことが重要である。
市場参加者全員の思惑や判断は、目下の値動きに反映されるはずであり、最大公約数を推測しようとするなら、足元におけるチャート上のサインを点検するほかあるまい。
結論から申し上げると、米ドル全体の調整はすでに完了したか、今晩(8月6日)の米雇用統計後の波乱を経てから完了するだろう。米ドル全面高の基調はこれから強まる公算が高い。
ドルインデックスチャートは上昇のサインを形成、米雇用統計待ちがなければすでに大幅に続伸していた?
ドルインデックスの日足を見てみると、一昨日(8月4日)の足型が重要なサインを示唆しているとみる。
同日の安値は、7月30日(金)の大陽線と同様、再度GMMAチャートの長期移動平均線組(ピンク)のサポートを確認し、また、いったん安値をトライしてから反転して陽線で大引けした。よって、プライスアクションの視点では、「強気リバーサル&アウトサイド」のサインを形成」していた。
(出所:TradingView)
今晩(8月6日)の米雇用統計待ちがなければ、そのまま大幅な続伸がすでにもたらされていたとしてもおかしくないから、米ドル全体の調整(反落)は、早期に終焉した可能性に注目しておきたい。
ちなみに、7月末の安値はおおむね5月安値を起点とした全上昇幅の38.2%反落水準と合致しており、そのことも下落一服の公算を高めている。
もちろん、米雇用統計後は波乱が想定されやすいから、目先の強気サインが帳消しにされる可能性もある。
ただし、ADP雇用統計の数字が予想よりだいぶ悪かったにもかかわらず、7月30日(金)以降、底堅い値動きになっていることから考えると、相場はすでにかなり諸事情を織り込んでおり、目先改善された基調を一気に否定するような値動きは容易ではない上、あっても一時的なものに留まるのではと思う。
ユーロ/米ドルは反落のサインを点灯、切り返しはすでに頭打ちか
となると、米ドルの対極として、ユーロ/米ドルのチャートを確認するのが一番わかりやすいだろう。
対極としてまったく反対のサインを灯したから、解釈もドルインデックスと反対になる。
7月末の頭打ちがあったあと、一昨日(8月4日)、ADP雇用統計の発表後、波乱となり、いったん高値トライしたあと反落。「弱気リバーサル&アウトサイド」のサインを点灯し、目先までの続落もあって、切り返しがすでに頭打ちとなった可能性は大きい。
(出所:TradingView)
今晩(8月6日)の米雇用統計次第で波乱があってもおかしくないが、目先の弱気基調を完全に否定するのは容易ではなく、高値トライがあっても一時的なものに留まるかと思われる。
1時間足のサインをプライスアクションの視点でフォローすればわかるように、「1」と表示した大陽線がその後の高値トライをもたらした。
(出所:TradingView)
同大陽線は「強気リバーサル&アウトサイド」のサインを点灯していたから、同始値の1.1813ドルや安値の1.1774ドル前後が、今夜(8月6日)の市況を測る基準になりえる。
なにしろ、一昨日(8月4日)のADP雇用統計後の値動きは、「2」と表示したように、「宵の明星」のサインを点灯しただけでなく、いったん高値トライしてからの大幅反落となった。
よって、事実上、「フォールス・ブレイクアウト」、つまり「ダマシ」的な存在であった。
ゆえに、目先の軟調をもたらし、また元のサポートゾーンが再度レジスタンスと化したところも、弱気基調を強めている。
この場合、ここで再度切り返しを果たして高値更新につながるよりも、続落して安値トライしていくほうが「ハードルが低い」と思われる。
目先のレートは、前述の1.1813ドルに近づいており、米雇用統計後の波乱や値幅拡大の習性から考えて、一気に1.1774ドルをトライ、また下値打診していくような市況があっても、別にサプライズではなかろう。
ユーロ/米ドルの反騰もなくはないが、ハードルは高い
もちろん、米雇用統計後の市況は非常に不確実性が高いので、ハードルが高いとはいえ、前述とは逆の流れになることも、まったく想定できないとは言えない。
4時間足における直近の「強気リバーサル&アウトサイド」のサインの強さから考えると、サポートゾーン(青)を死守できるなら、順次レジスタンスゾーン(黄・1~3)をトライしていく可能性もある。
(出所:TradingView)
万一、そのような流れになれば、短期スパンにおいてフォローしていくしかないが、ハードルが高いことを再度記し、念頭においてきたい。
米ドル/円に関しては、米ドル全体次第の側面も強いが、結局、米ドル全体の切り返しが強ければ強いほど、米ドル/円は逆に頭が抑え込まれる可能性がある。
【米ドル/円と米ドル全体の関係についての参考記事】
●米ドルは押し目買いか上値追いの2択のみ! ミセス・ワタナベは逃げ時を見失うな!(2021年7月2日、陳満咲杜)
このあたりの理屈は当コラムで繰り返し説明してきたので、ここでは省略するが、言いたいことは、米雇用統計後に米ドル全面高のトレンドが明白になれば、それはスピード感のあるものになる可能性があるから、総じて米ドル/円の上値追いについては、現時点ではなお慎重なスタンスを取りたい。
逆に、今晩(8月6日)の米雇用統計後に一転して米ドル全面安の進行となった場合、今度は米ドル/円が米ドル全体とリンクした値動きになりやすいから、やはり性急な押し目買いはできない。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
このあたりの検証はまた次回、市況はいかに。
(14:00執筆)
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