忍び寄る、デルタ変異株による新しい危機
「もしコロナがなかったとしたら、株価は今よりも高かったのか、安かったのか」
コロナ初期の頃、この未曾有の危機に株価は上がるはずないと思いました。ところが、各国政府がかつてない規模で経済対策を行い、超金融緩和政策を採ったため、膨大なマネーが株式市場に流れ込み、株価は急騰しました。コロナ前の水準が随分安く感じられます。
よってこの答えは、どうしても、コロナがなかったとしたら、今より株価は低かった……そう思ってしまいます。日経平均は、日銀による購入と、コロナがなければ、3万円を回復していなかったでしょう。
(出所:TradingView)
なぜこのようなことを考えるかというと、今、新しい危機が忍び寄っているからです。それはデルタ変異株です。
デルタ株の感染力は強力です。米国から次々と情報が流れてきます。デルタ株の感染力は水疱瘡並だとか、ワクチンを2回接種した人でも感染する、いわゆる「ブレークスルー感染」ケースが多いとかです。
米マサチューセッツ州バーンスタブル郡でのクラスターのケースでは、感染者の4分の3が、すでにワクチン接種済みの人でした。
写真はイメージ。デルタ株の感染力は強力で、米マサチューセッツ州バーンスタブル郡でのクラスターのケースでは、感染者の4分の3が、すでにワクチン接種済みの人だったという (C)Studio Romantic/stock.adobe.com
そして何より困るのは、ワクチン接種をしてもデルタ株は非接種者と同じように感染し、発病しなくても他人に感染させることがわかったことです。
これでは、撲滅するのは相当難しい。
ただ、ワクチンの2回接種で重症化するケースがかなり減っていることは、希望ではあります。おそらく、英国同様、どの国も最終的には、ワクチン接種で重症化しないことを前提に、経済・生活を元に戻したいと思っているはずです。
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米長期金利の動きは、デルタ株感染拡大を見通していた!?
しかし、マーケットはワクチン接種で元の世界に戻ることをかなりの程度、前提にしていたはずです。デルタ株の猛威が続くと、そのシナリオは大きく狂ってきます。
米国経済は好調で、しかもインフレ率が高いにも関わらず、米長期金利は低下してきました。しかも、上昇する気配がほとんどありません。ポジションが過度に偏っていたためと考えられていましたが、結局、マーケットが正しかった。米長期金利はデルタ株の感染拡大を見通していたことになります。
【参考記事】
●米長期金利が低下で、米ドル高の違和感…。そのワケは、新型コロナ「デルタ株の脅威」にアリ(7月21日、志摩力男)
●米長期金利が低下している要因を総点検。自然反発すれば、1.40~1.50%程度までの戻りは想定できる(7月14日、志摩力男)
米長期金利は、そのうち1.50%以上に戻し、いつかは2%というシナリオがまだ語られていますが、それはもうないでしょう。むしろ、1%を割り込む可能性が出てきていると思います。
(出所:TradingView)
金融市場は、いつ米国の「テーパリング(※)」が始まるか、そこに注目していますが、市場の織り込みより、ずいぶん後ろにずれ込むのではないでしょうか。今月(8月)末にジャクソンホールで開催される経済シンポジウムでは、テーパリング開始が言及されると市場は考えていますが、それは「早い」。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
グロース株からバリュー株にという動きも難しい。飲食・旅行関連は、今後も厳しい局面が続きそうです。
移動の制限は続くでしょう。そうなると、制限が撤廃されることを前提に動いていた原油価格には下落圧力がかかります。もしかしたら100ドル!、ということはないかもしれません。
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デルタ株が猛威を振るうと、米国株は上昇するのか?
中国国内でもデルタ株が見つかったことで、今後、中国政府は徹底的に移動制限をし、抑え込もうとするでしょう。中国経済が停滞することになります。世界の需要エンジンなので、この影響は小さくありません。商品価格への圧力は、少し和らぎます。
そして、国ごとの状況が今後大きく違ってきそうです。感染を抑えることができているところは、好調な経済が続きそうですが、抑えられなければ低迷します。
どうしても、ワクチン獲得に有利な先進国経済が良くて、新興国は苦しい状況が出てくるでしょう。
唯一の勝ち組、それはまたしても米国株です。そこで、最初の質問に戻ってきます。今回も、デルタ株が猛威を振るうことで、米国株は上昇を続けるのか。
米国は金融緩和が続くので、その可能性はなくもないと思います。しかし、昨年(2020年)同様の政府支出ができるのかというと、それは今後、難しくなります。どの政府も、パンデミックがいつか終わるということを前提に、大盤振る舞いしてきました。同じことは難しい。
(出所:TradingView)
米ドルに対する影響は難しい。それでも金利が上がらないということであれば、やはり米ドル安でしょうか。米ドル/円は、民主党が上院を抑えたジョージア州選挙をきっかけに、米長期金利の上昇に伴って、米ドル円も上昇しました。もし、米長期金利が低下するならば、それにつれて少し下落しても良いはずです。
【参考記事】
●金融緩和し過ぎとの警戒感で、米ドルは少し反発か。中長期のドル安は変わらない(1月13日、志摩力男)
国によって状況の違いが今後拡大すると思います。感染を抑え込み、経済が好調なニュージーランドドルは上昇が続くでしょう。短期金利市場の利上げ織り込みもかなり進んでいますが、今後は金利を反映して、好調となると思われます。
豪ドル/ニュージーランドドルのクロスは、割とレンジ内に収まるクロスですが、目先は好調なニュージーランド経済を背景に、1.00ニュージーランドドル方向を試す動きもあるのではないかと思います。
(出所:TradingView)
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