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西原宏一_メルマガ取材記事
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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

ついに底打ちの兆候が表れ始めたユーロ。
それを確認する2つの方法とは?

2010年06月18日(金)18:38公開 (2010年06月18日(金)18:38更新)
陳満咲杜

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■ユーロ/米ドルが底打ちしたと考える2つの理由とは?

 為替マーケットの関心は引き続きユーロであり、「ユーロ崩壊論」が巷で真剣に語られている。

 そのような中で、ユーロ/米ドルの切り返しが目立ってきた。6月7日(月)安値の1.1876ドルと比較すると、6月17日(木)には一時1.2412ドルまで上昇しており、その上昇幅は500pips以上にものぼる。

 もちろん、2009年11月高値からの下落幅が3300pipsであることを考えれば、足元のリバウンドは微々たるもので、底打ちしたと判断するには時期尚早と言わざるを得ない。

 だが、テクニカル的な要素からは、少なくとも次の2点を理由にして、その可能性が示唆されている。

 1つ目は、5月14日のコラムで取り上げた、ドルインデックスが連続して陽線引けとなっている件についてだ「ユーロもポンドも夜明け前で『陰の極』。米ドルの上昇がニセモノと考えるワケは?」を参照)

6カ月以上の陽線引けはあまりないことから、今月あたりでそろそろ陰線引けに転じることだろう。6月は高値をつけてから反落しているが、これはその兆候だと見ている。

 また、ユーロはドルインデックスの60%近いシェアを有しているだけに、ユーロ/米ドルも連続6カ月の陰線引けにこの辺で終止符を打ち、陽線引けに転じるのではないかと思っている
ユーロ/米ドル 月足(クリックで拡大)
(出所:米国FXCM

 2つ目は、6月4日のコラムで書いた、ドルインデックスが「上昇トライアングル」のフォーメーションを形成しているという件についてだ「米ドル/円の100円台回復が見えてきた!ユーロ/米ドルの底打ちもそう遠くない!」を参照)

 ドルインデックスは「上昇トライアングル」のフォーメーションを上抜け、本来ならそのまま上昇を続けていくはずだった。

 ところが、ターゲットをトライするどころか逆に反落し、「上昇トライアングル」のパターンを消滅させてしまった
ドルインデックス 1時間足(クリック拡大)
(出所:米国FXCM

 つまり、「発生すべき現象が起こらなければ、その逆に行く」という、いわゆる「ダマシ」であったかのように見える。

■センチメント指数もユーロの底打ちを示唆している

 マーケットの心理面でも、ユーロ/米ドルの反騰を裏付ける要素があった。

前回のコラムで、欧米の大手金融機関が競ってユーロ/米ドルの下値ターゲットを下方修正していることを紹介したが、彼らは口先とは違って、実際の行動ではむしろユーロのショートポジション(売り持ち)を手仕舞っているようなのだ「ジム・ロージャズはユーロ買いに転じた!金融機関の過激な予測を信じるな!」を参照)

 今週に入り、格付け機関大手のムーディーズがギリシャ国債の格付けを「ジャンク」級に引き下げ、さらに、スペイン国債の入札への懸念が市場関係者の間に広がった。

 それにもかかわらず、これらを無視する形でユーロ/米ドルは切り返している。これは、欧米の大手金融機関が手仕舞いを進めているという何よりの証拠であろう。

マーケットは悪材料をユーロ売りの根拠とはせず、むしろ、ポジション整理の好機として利用した。つまり、手仕舞いの需要が相当強いことが読み取れるのだ。

 その上、個人投資家の行動パターンを示すセンチメント指数も同じことを物語っている。

一般的に、個人投資家は逆張りを行う傾向が強いため、センチメント指数が示す方向と実際の相場が反対方向に行くケースは多い

 ユーロ/米ドルならば、ユーロ安が進むにつれて、個人投資家はユーロの底を狙った逆張りで、「ユーロ買い・米ドル売り」を続けていた。

 だが、センチメント指数は先々週から、順張りで「ユーロ売り・米ドル買い」に転じている

 このことも、ユーロ相場の反転を暗示していたと言えるだろう。
■なぜ、個人投資家は「売り」に転じたのか?

 それでは、個人投資家のセンチメント、すなわち、ロングポジションとショートポジションを相殺させた結果が、なぜ先々週から「売り」に転じたかを考えてみよう。

 これについては、筆者は主に、次の2点で説明できると考えている。

(1)ずっと逆張りのユーロ買いを行ってきたが、ユーロ安が止まらないために白旗を挙げるしかなかった。

(2)ユーロ安が進むにつれ、マスコミ、アナリストのレポート、大手金融機関の見通し、すべてがユーロ安一辺倒になり、ユーロ売りしかできなくなっていた。


 基本的には、センチメント指数は「プロ」の行動ではなく、「アマチュア」の行動パターンを示すもので、「プロ」の行動パターンよりも相場の転換点を示すことが多い

 一般的に、「プロ」も「アマチュア」も相場の転換を見逃しがちなことに変わりはないが、トレンドが進行するにつれて「プロ」はトレンドをフォローすることが得意なのに対して、「アマチュア」は逆張りの傾向が強いと言われる。

 そして、トレンドの反転時には往々にして、逆張りがうまくいかず我慢しきれなくなった「アマチェア」がスタンスを逆転したのに伴い、「プロ」が「君子豹変」して新たなトレンドをフォローし始めるといったことが起こるのだ。

■相場の転換点を確認する2つの方法とは?

 つまり、ユーロ/米ドルが底打ちしたかどうかわからなくても、「アマチュア」の行動パターンが逆転し、「プロ」の行動でもそれが検証できれば、相場の転換点を確認できる可能性は高くなる

 具体的には、次の2点にそれが表れると思っている。

(1)IMMのデータがユーロの売りポジションの急減を示す

(2)機関投資家の見通しが180度転換する
シカゴIMM通貨先物ポジションの推移
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移

 経験上、往々にして「アマチュア」のスタンス転換は苦痛を伴う上、かなりの時間を要する傾向が強い。それに対して、「プロ」のスタンスの転換は素早い。

 もし、これからユーロ/米ドルの上昇が続けば、ユーロの売りポジションの急減といったIMMデータの急変が発生し、さらに、機関投資家は相場見通しを転換させる。

 だが、これは驚くべきことではない。孔子が言う「君子豹変」は、まさにこのようなことを指していると思っている。

 これは無理もない。「プロ」は基本的に他人のお金で相場を張るため、自分のお金で相場を張る「アマチュア」よりも精神的な苦痛が少なく、臨機応変にスタンスを転換できる。

 だから、2008年に「米ドル崩壊」を声高に主張していた金融機関が、最近になって「ユーロ消滅」と言っていることも、ある意味では納得できることだ。

■ジム・ロージャズはユーロの買い増しを考えている!

 さて、前回のコラムで、あのジム・ロージャズ氏の「今はユーロを買う時だ」という発言を紹介した「ジム・ロージャズはユーロ買いに転じた!金融機関の過激な予測を信じるな!」を参照)

 そのロージャズ氏が、また発言している。

「俺はユーロを買っている。ユーロ消滅と言っていたが、10年後か15年後以降のことだ。今は買い増しを考えている」

 今朝、中国の友達から憤慨を示すメールが届いた。

 彼は、ユーロが「ゼロ」になるまでひと儲けしようとして、積極的にユーロのショートポジションを建てたらしい。

 彼には酷であるが、筆者は次の2つの単語の真意をわからなければ、為替取引はしないほうがよいとすすめた。

 それは、「ポジショントーク」と「自己責任」である。

(2010年6月18日 13時執筆)
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