戦後の為替はかなり長い間、固定相場制だった。それが1973年に変動相場制へ移行する。ドル/円は1ドル=360円の固定相場が長く続き、1ドル=308円の固定相場を挟んで、変動相場制へ移行した。
「変動相場制に移行してからのドルはずっと安くなり続けています。アメリカはずっと貿易赤字だったから、ドルは下がるだけなんですよ。長期的に見て、この大きな流れは今後も変わらないでしょう」
この時代、円はどうだったのか? 日本は目覚ましい経済成長を遂げていた時期で、円はドンドン強くなっていった。つまり、ドル安と同時に円高の時代だったのである。一番円高が進んだのは1995年。この年、円は1ドル=79円台の史上最高値を記録している。
米ドル/円の長期チャート

しかし、その流れは変わったという。先に示した「(2)2000年以降のユーロ台頭、中国台頭によるドル安と円安」という時代に入っていくのだ。
■欧州ではユーロが誕生し、アジアでは中国の時代が始まった
「1ドル=360円の時代から79円台までずっと続いてきた円高はもう終わっています。アジアでは日本の時代が終わり、中国の時代が始まったからです。中国は1992年ごろから本格的に市場経済へ舵を切ったのですが、さらにこの流れが本物になってきたのが2000年ごろからです」
アジアにおける中国の台頭が相対的に日本の地位を押し下げ、円安の時代に入ったというのだ。そして、これに加えて、もう一つの重要なポイントがユーロの誕生である。
「1999年にユーロが誕生。ユーロ圏の経済規模が大きくなり、ユーロが強くなってきたことで、アメリカの地位は相対的に弱くなってきました。ユーロはもう一つの基軸通貨になりそうな勢いですよね。これでドル安が進んだわけです」
(「ドルはどこまで下がるのか? (13)」へつづく)
(ザイFX!編集部・井口稔)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)