「いや、そうはならないでしょう。公的資金を入れる支援策が出てきたのはそれだけ事態が深刻だということ。これだけで、米国経済が回復するわけではありません。むしろ、これから悪化して、どんどん飛び火していくんじゃないでしょうか。
たとえば、どこかの投資銀行がつぶれそうになったら、それはどうするんだ…とか。今回の件は、そういう一連の出来事の入り口かもしれないと思います」
■大事件がなければ、ドル/円は100円も割れない
ただ、『ザイFX!』の本日のコラム(※)で、今井さんは「ドル/円は3月の安値、95円を割れないだろう」と述べている。これはどういうことだろう?
「いや、ボクは100円も割れないと思ってますけどね。ホント言うと。
まあ、ショック度によるんですよ。たとえば、○○○○○○(伏せ字にさせていただきました)がつぶれてしまうとか、そういった大きな事件があれば、一瞬100円を割れるかもしれません。でも、そういう場合でもせいぜい98円ぐらいかなと思ってます。
小さな事件、小さなショックで終われば、102円ぐらいでドル安は終わるんじゃないかと見ています」
では、「ファニー・メイとフレディ・マックの支援策だけでは米国経済が回復するわけではない。だけど、ドルはそんなには下がらない」と今井さんはなぜ見ているのか?
「株価は企業の業績を反映するもの。だから、米国経済の悪さを反映して、ニューヨークダウは下がってますね。ただ、通貨は相対的なものです。米国企業の業績が悪化しても、世界みんなが悪くなれば、ドルだけが下がることにはなりません。
確かに米国の一人負けかもしれないけれど、そんなに極端な一人負けにはならないだろうなと思ってるんです。だから、ドル/円でいえば、去年の秋口から今年前半までに起きたような急激な下げはもう起きないと思っています」
(※マット今井の「為替で読み解く世界経済」:金融不安深刻化でも、ドル安は限定的か?)
■ユーロ高は8~9合目まで来ている
米国が極端な一人負けにはならないということは…。今井さんはユーロについては、どう見ているのか?
「ユーロ圏で、たとえばドイツなどは確かにまだ景気がいい。だから、ユーロはシッカリしています。まだ、ユーロ高になると思いますが、これもすでに8~9合目まで来ていると思いますよ。”時間差”でユーロ圏の景気もこれから悪くなるでしょう」
ユーロ/米ドル 週足

「ここ2~3ヵ月、米国経済がどんどん悪くなっていっても、なかなかドルが下がらなくなってきました。『米国経済が悪くても、それが他国へ波及したら、ドルだけが下がる相場にはならない』、市場参加者はみんな、そんなふうに感じ始めている、とボクは思っています」
今井さんの話をまとめると、ドルは極端に下がったりしないし、かといって、ドンドン上昇していくわけでもない。いったん小波乱の可能性を秘めつつ、まだ、しばらくは行ったり来たりの保ち合い相場が続くということだろうか…。
(ザイFX!編集部・井口稔)
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