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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

「コップの中の嵐」と
米ドル全面安の傾向はまだ続くのか?

2009年08月28日(金)17:59公開 (2009年08月28日(金)17:59更新)
陳満咲杜

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 為替市場は「コップの中の嵐」を引き起こしながら、米ドル全面安の傾向が強まってきている。

 「コップの中」とは、狭いレンジ内での変動のことを示す。

 足元ではレンジ内の乱高下が繰り返されているため、米ドルのロング派、ショート派のいずれもがストップロス・オーダーに引っかかりやすくなっている。トレーダーにとっては「嵐」とも言える相場だ。

■「振り落とし」で身軽になり、米ドル安がさらに進む?

 下に示したドルインデックスの日足チャートを見ると、8月第4週(24~28日)は週初から米ドルが切り返し、26日(水)には、前週の20日(木)、21日(金)の高値を一時超えていた。

 しかし、27日(木)は一転して大幅に下落し、再び米ドル安の傾向を強めている。テクニカル的に言えば、26日(水)までの値動きは一種の「振り落とし」であり、トレンドの進行が加速する前によく見られる現象だ
ドルインデックス 日足(クリックで拡大)
(出所:米国FXCM)

 つまり、週初からの揺り戻しで米ドルのショートポジションの一部が決済され、身軽になった分、米ドル安の傾向が一層強まると考えられるわけだ。

 相場は常に、ロングポジションとショートポジションのバランスと、その攻防や崩れ方によって作られている。だから、ファンダメンタルズ的な材料は、あくまで売買のきっかけとして利用されるに過ぎない。

 今週の好例は、26日(水)の米ドル高であろう。

 この日は、7月の米国新築住宅販売件数が発表となり、前月比9.6%増という結果を受け、マーケットは米ドル高に反応した。

 しかし、27日(木)の値動きを考慮すると、新築住宅販売件数が単に売買材料として利用され、米ドルのショートポジションの振り落としを図ったとも考えられる。これがより本質に迫った見方であろう。

■日本の選挙よりも、市場は中国の動向に敏感に反応

 ところで、米ドルの波乱とは違って、円は週初から一貫して強かった。それは2つの要素に起因していると思う。

 1つは、中国の温家宝首相が、過剰生産と無駄な投資を抑制する姿勢を示したことで、世界的に景気回復への懸念が増大したことだ。

 最近の米ドル/円は、日本サイドの経済データばかりか、選挙の状況さえも蚊帳の外で、もっぱら米国と中国サイドの材料によって左右されている。そして、株式のパフォーマンスから見ると、日本は総じて、米国よりも中国の動向に敏感に反応する傾向がある。

 ただ、米ドル全面安のトレンドが続くようであれば、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)相場における円高の勢いが弱まる可能性が高く、米ドル/円の下値も限定されて、一方的な円高にはならないだろう。

■「米ドル・キャリートレード」は、対円では発生しない

 週初から円が一貫して強い2つ目の理由は、米ドルLIBOR(ロンドン銀行間貸出金利)が16年ぶりに、円LIBORよりも低い水準まで落ち込んでいたことだ。

 米ドルLIBORの低下によって「米ドル・キャリートレード(※)」が発生すれば、早期利上げ観測の強い豪ドル、カナダドルなど、資源国通貨に対しての米ドル売りが強まると考えられる。

 しかし、円との金利差を考えると、対円での米ドル売りは考えにくい。その上、日銀は米FRB(連邦準備制度理事会)よりも遅れて利上げするといった見方が一般的で、米ドルLIBORと円LIBORの逆転は長く続かない見通しが有力だ

 いずれにせよ、米ドル/円を除き、米ドル全面安が続く可能性が高い

7月24日のコラムで書いた「ユーロ/米ドルは1.4700ドル、英ポンド/米ドルは1.7150ドル(場合よっては1.7500ドル)、豪ドル/米ドルは0.8500ドルというターゲットが射程圏に入ってくる」といった見通しは実現されるだろう「米ドル安トレンドが再開したかどうか米ドル/スイスフランを見ればわかる!」参照)

 もっとも、豪ドル/米ドルは0.8500ドル手前まですでに迫っており、ターゲットを0.8600~0.8800ドルに引き上げる余地もある。ちなみに、米ドル/スイスフランは前日に再び1.0600フランを割り込んでおり、米ドル安を促すシグナルととらえられるだろう。

(※編集部注:「キャリートレード」とは一般に、金利の低い通貨で資金を調達し、それを相対的に金利の高い通貨に替えて運用する手法のこと)

■米ドル/円は引き続き、切り返しの可能性に注目!

 テクニカル的には、いくつか気になるポイントがあったので、チャートに図示して指摘しておきたい。
米ドル/円 日足(クリックで拡大)
(出所:米国FXCM)

 まずは米ドル/円の日足だが、先週同様に、まだ「下落ウェッジ」のフォーメーションを形成しているように見え、引き続き、切り返しの可能性に注目したい「中国と英国で2つの事件が発生!それでも大きく上昇できない米ドルの弱さ」参照)
 ユーロ/米ドルは、RSIの弱気ダイバージェンスが消滅すれば、逆に大相場に発展しやすいので注意が必要だ。
ユーロ/米ドル (クリックで拡大)
(出所:米国FXCM)

 弱気ダイバージェンスの消滅によって逆に大相場に発展した好例は、上に示したように、ほかならぬ、ユーロ/米ドルの週足にあった。

■英ポンド/米ドルは上昇トレンドに復帰か?

英ポンド/米ドルに関しては、RSIの強気リバーサルのシグナルが点灯し、切り返しの可能性を示唆している。
英ポンド/米ドル (クリックで拡大)
(出所:米国FXCM)

 RSIのリバーサル・シグナルに関する詳しい説明は次回以降に譲るが、強気リバーサル・シグナルの見方としては、上昇傾向が続く場合、値動きとRSIの両方の「谷(安値)」を見比べ、値動きが前の主要安値より高いのに、対応するRSIが前の安値を割り込んでいるならば、往々にして上昇トレンドへ復帰する可能性が高いとされている。

 ちなみに、英ポンド/米ドルの週足チャートに好例があったので、上に示した。

9月相場に入ると、主力筋が夏のバカンスから相場に戻るため、マーケットはトレンドを出しやすい状況となるだろう。気を引き締めて相場に臨みたい。

(8月28日 12:30記述)
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