RBAをきっかけにした米ドル高は対ユーロ、対豪ドルで進行中
みなさん、こんにちは。
先週のコラムでご紹介させていただいとおり、11月2日(火)にRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])がYCC(※イールドカーブ・コントロール)政策から撤退した最初の中央銀行になったことをきっかけに、対豪ドルを中心に米ドル高が進行。
(※イールドカーブ・コントロールとは、中央銀行が国債の利回りを一定の水準以下に保つために必要なだけ国債を購入することを約束するもの)
【参考記事】
●豪ドルで始まり、豪ドルで終わる為替相場。豪ドルの反落でリスク資産が軟調に転じる可能性、今後の豪ドルの動きには警戒!(11月11日、西原宏一)
上のグラフは、10月末から本日(11月18日)まで、対米ドルでの主要通貨の騰落率を示したもの。
豪ドルを筆頭に、ニュージーランド、ユーロ、カナダドルと主要通貨に対し、米ドルは全面高。円に対しても、わずかですが米ドル高になっています。
米ドル/円は115.00円のバリアオプションを突破できるかがポイント
米ドル/円での米ドル高が伸びないのは、115.00円で待っているバリアオプションの影響です。
【参考記事】
●【西原宏一が教える FXトレード戦略超入門】オプションを知れば節目がわかる!
バニラオプションはどのぐらいの規模であるのかはおよそ見当がつくのですが、バリアバリアオプションは相対での取引となるため、規模が読みづらい状態。
数年前までは、中国が激しくバリアオプションを取り引きしている時期があったため、節目にあるオプションの規模の巨大さを把握しやすい時期もありました。
ところが最近では、トレーダーというよりもAIが取引していることが増えた影響もあるのか、その規模のめどをつけるのが難しい状態になっています。
今回の米ドル/円の115.00円の攻防も同じ。
11月16日(火)と17日(水)に、米系短期筋がまとまった米ドル買いをしかけ、115.00円突破を何度もトライしました。
しかし、結果は114.97円とわずか3pip届かず、米ドル/円はあっさり反落。
本日の東京市場では、米短期筋の米ドル/円の投げもあり、あっさり114.00円を割り込んでいます。
結果として、115.00円のバリアが巨大だったことがわかるわけです。
(出所:TradingView)
米ドル/円の押し目はあまり深くないことに
一方、実際にバリアオプションが115.00円ブレイクをせき止めていると想定するならば、押し目はあまり深くないことになります。
115.00円手前で米ドル売りを持ち込んだオプションプレイヤーが、米ドルを買い戻す公算が高いためです。
どちらにせよ、すべての主要通貨の中で、米ドル/円だけ米ドル高の進行が遅れているのは、この115.00円のバリアオプションが上値を抑えているからだと言えます。
2022年に起こる米ドル高を牽引するのはユーロ/米ドル
こうした中、2022年に向けて注目されている通貨がユーロです。
前述のように、RBAがきっかけとなって始まっている米ドル高相場ですので、豪ドル/米ドルの下落は徐々に鮮明となっており、一時、0.7252ドルまで下落しています。
(出所:TradingView)
一方、マーケットで豪ドル/米ドル以上に注目されているのが、ひさしぶりにユーロ/米ドル。
筆者は引き続き、2022年の米長期金利(米10年債利回り)は、米国で進行しているインフレを背景に上昇すると予測しています。
今年(2021年)の米長期金利は2.00%どころか1.80%すら上抜けませんが、来年(2022年)に入ると、米長期金利上昇トレンドが明確となり、春先に2.00%を超えて来ると想定しています。
(出所:TradingView)
そうなると、米ドルは総じて上昇トレンドに入ると考えていますが、主要米銀が注目しているのがユーロ/米ドル。
モルガン・スタンレーなどの主要米銀では、2022年に調達通貨である円やユーロが売られ、米ドルが買われるとの見方が増えてきているようですが、今月(11月)に入って、円よりもユーロに注目が集まっているようです。
欧州では新型コロナウイルスの影響が大きく影を落としている
その背景には、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響が大きく影を落としています。
欧州では先週(11月8日~)、新規感染者数が200万人近くに拡大し、パンデミック始まって以降の最多になったと報道されています。
ドイツでは、リモートワークの選択肢を義務付ける計画まで報道されており、ユーロの上値を抑え続けています。
2022年のユーロ/米ドルは1.0500ドルレベルへと急落する予想も台頭
結果、先週のユーロ/米ドルは節目の1.1500ドルをブレイクして、下落に加速がかかり、一時、1.1264ドルまで急落しています。
ユーロ/米ドルはフィボナッチ50%押しの1.1500ドル(正確には1.1493ドル)をどうして割り込めなかったわけですが、ここを割り込んだことで、マーケット参加者の目線が大きく下がってきたわけです。
来年(2022年)のユーロ/米ドルは1.0500ドルレベルへ急落するという予想も台頭。
(出所:TradingView)
来年(2022年)は一時的には終わらないインフレを背景に、米ドルが上昇するという予想が徐々にコンセンサスになってきました。
その米ドル高予想に加え、欧州での新型コロナ感染者数が週間200万人近くに拡大し、ネガティブな要因が増えて、上値が重くなったユーロ/米ドル。
米ドル/円、豪ドル/米ドルでの米ドル高トレンド以上に、ユーロ/米ドルの動向に注目です。
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