■「米ドル全面安」は、このあたりで一服か?
米ドル全面安が続いている。しかし…。
7月24日のコラムで筆者がターゲットを示したユーロ/米ドルは、1.4700ドルの目標値をすでに達成している(「米ドル安トレンドが再開したかどうか米ドル/スイスフランを見ればわかる!」参照)。
同様に、豪ドル/米ドルは、当初の筆者の目標値0.8500ドルをすでに超え、0.8800ドル手前まで上昇している。これらのことを考慮すると、このあたりで米ドル全面安が一服してもおかしくはないとみる。
ユーロ/米ドル 週足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)
豪ドル/米ドル 週足
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 週足)
ただ、市場関係者の多くは、強気を増す一方だ。
米ドル暴落論が再び唱えられている中で、内外のマスコミが、専門家にコメントを求めている。彼らは、ユーロ/米ドルを1.5400ドルレベルに、豪ドル/米ドルを0.9220ドルレベルに、米ドル/加ドルを0.9000ドルレベルに、第4四半期の目標値を早くも引き上げているようだ。
言うまでもないが、ユーロは米ドルの対極通貨の役割を、そして、豪ドルと加ドルは高金利と資源国通貨の役割を果たしている。
従って、マスコミからすれば、米ドル安を説明するために、ユーロ、豪ドル、加ドルといった通貨は使いやすいのだろう。実際、多くの専門家は、同じような理由でこれらの通貨ペアを挙げることが多い。
彼らの見通しが正しいかどうかは、「神のみぞ知る」ということになる。
■小学生でも挙げられるほど、米ドル安の材料は多い
筆者は、2008年の年末から2009年2~3月のマーケットにおけるコンセンサスを思い返している。当時は、米ドル安ではなく、米ドル高に対する恐怖がマーケットを覆っていた。
内外を問わず、多くのアナリストはユーロ/米ドルの1.20ドル割れは必至と予測し、英ポンド/米ドルに至っては、パリティ(1の大台)割れもあり得るといった論調も多かった。
おもしろいことに、足元で米ドル暴落を論じている評論家やアナリストの多くは、前述したユーロや英ポンドの暴落を論じていた人物と同じだし、相変わらず理路整然と論点をまとめ上げている。
米ドル安を説明するには苦労しないだろう。理由はいくらでもあるからだ。
新たな材料としては「ドル・キャリートレード(※)」の広がりがあって、伝統的な「双子の赤字」などもあり、枚挙に暇はない。小学生でさえも、いくつかの理由を並べられるだろう。
(※編集部注:「キャリートレード」とは一般に金利の低い通貨で資金を調達し、それを相対的に金利の高い通貨に替えて運用する手法のことを指す。従って「ドル・キャリートレード」とは、金利の低い米ドルを売り、金利の高いユーロや豪ドルを買って、金利差を稼ぐ手法のことを指す)
■米ドル全面安の相場は、「幸福」とともに消えていく!?
だが、歴史が教えてくれたように、このような時期だからこそ注意が必要だ。
ただ、市場関係者の多くは、強気を増す一方だ。
米ドル暴落論が再び唱えられている中で、内外のマスコミが、専門家にコメントを求めている。彼らは、ユーロ/米ドルを1.5400ドルレベルに、豪ドル/米ドルを0.9220ドルレベルに、米ドル/加ドルを0.9000ドルレベルに、第4四半期の目標値を早くも引き上げているようだ。
言うまでもないが、ユーロは米ドルの対極通貨の役割を、そして、豪ドルと加ドルは高金利と資源国通貨の役割を果たしている。
従って、マスコミからすれば、米ドル安を説明するために、ユーロ、豪ドル、加ドルといった通貨は使いやすいのだろう。実際、多くの専門家は、同じような理由でこれらの通貨ペアを挙げることが多い。
彼らの見通しが正しいかどうかは、「神のみぞ知る」ということになる。
■小学生でも挙げられるほど、米ドル安の材料は多い
筆者は、2008年の年末から2009年2~3月のマーケットにおけるコンセンサスを思い返している。当時は、米ドル安ではなく、米ドル高に対する恐怖がマーケットを覆っていた。
内外を問わず、多くのアナリストはユーロ/米ドルの1.20ドル割れは必至と予測し、英ポンド/米ドルに至っては、パリティ(1の大台)割れもあり得るといった論調も多かった。
おもしろいことに、足元で米ドル暴落を論じている評論家やアナリストの多くは、前述したユーロや英ポンドの暴落を論じていた人物と同じだし、相変わらず理路整然と論点をまとめ上げている。
米ドル安を説明するには苦労しないだろう。理由はいくらでもあるからだ。
新たな材料としては「ドル・キャリートレード(※)」の広がりがあって、伝統的な「双子の赤字」などもあり、枚挙に暇はない。小学生でさえも、いくつかの理由を並べられるだろう。
(※編集部注:「キャリートレード」とは一般に金利の低い通貨で資金を調達し、それを相対的に金利の高い通貨に替えて運用する手法のことを指す。従って「ドル・キャリートレード」とは、金利の低い米ドルを売り、金利の高いユーロや豪ドルを買って、金利差を稼ぐ手法のことを指す)
■米ドル全面安の相場は、「幸福」とともに消えていく!?
だが、歴史が教えてくれたように、このような時期だからこそ注意が必要だ。
「相場は悲観の中で芽生え、懐疑のうちに育ち、楽観とともに成熟し、幸福とともに消えていく」という有名な格言がある。
これに照らせば、足元の状況は、米ドルのショートポジション(売り持ち)と株のロングポジション(買い持ち)を持つ投資家にとっては、楽観が幸福に変わっている時期であるだろう。
しかし、通貨先物市場では、米ドルのショートポジションがかなり積み上げられ、逆に、豪ドルと円のロングポジションは歴史的に高い水準にあり、反転リスクが増大していることを暗示している。
つまり、格言の「幸福とともに消えていく」のとおりになれば、米ドル安から米ドル高へ、そろそろ反転するかもしれないということだ。
筆者は、必ずしも、米ドルの反転を確信しているわけではない。だが、現時点においては、米ドルの安値追いに対して慎重なスタンスを取りたいと思う。
■「円キャリートレード」崩壊のメカニズム
ところで、米ドル/円は、2008年12月と2009年1月に87.12円レベルの安値をつけて、「ダブルボトム」を形成していた。前述した「当時は、米ドル安ではなく、米ドル高に対する恐怖がマーケットを覆っていた」の記述とは、かなり相違するものである。
実は、米ドル/円だけが、米ドル全体のパフォーマンスと遊離していたのだ。それは、「リーマン・ショック」以降、円と米ドルの両方がリスク回避先通貨として買われたことから生じた「ねじれ」であった。
具体的に説明する。2005年から「円キャリートレード」が盛んに行われ、米ドル/円を含めて、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)相場における円のロングポジションは、莫大なレベルまで積み上げられていた。
その結果、「リーマン・ショック」に端を発した米ドル資産への逃避により、(米ドル以外の)外貨安/円高までもが引き起こされ、雪崩を打った形で円高が次の円高を呼び、「円キャリートレード」を一気に崩壊させたのだ。
この事実から得られた重要な結論とは、米ドルとは異なり、円が資産として評価されたのは「円キャリートレード」の崩壊による受動的な要素が大きく、円そのものの価値が評価されたわけではないということだ。
■円高が進まなければ、円ロングの投げ売りが出てくる!
そうなると、仮に米ドル全面安がこれから進むとしても、かつてのような円高をもたらす原動力が見当たらない。「円キャリートレード」はすでに崩壊し、死語になってしまったからだ。
米ドル安の受け皿が、ユーロや豪ドルから、円に取って代わることは想定しにくい。
しかし、米ドルが反騰してきたならば、事情は異なってくる。前述のように、豪ドルと円のロングポジションの積み上げが突出しており、米ドル高は、対円、対豪ドルで進行しやすいと考えられる。
また、東京金融取引所のくりっく365のデータによると、日本人投資家による円のロングポジションは、くりっく365の取引開始以来、最高の水準まで積み上げられているという。
これは、警戒のサインとして受け止めたいもので、特に注意したい。
足元では、米ドル/円は90円割れを回避し、底打ちの兆しを見せている。これ以上円高が進行しなければ、円のロング筋の投げ売りが出てくることも想定しておくべきであろう。
これに照らせば、足元の状況は、米ドルのショートポジション(売り持ち)と株のロングポジション(買い持ち)を持つ投資家にとっては、楽観が幸福に変わっている時期であるだろう。
しかし、通貨先物市場では、米ドルのショートポジションがかなり積み上げられ、逆に、豪ドルと円のロングポジションは歴史的に高い水準にあり、反転リスクが増大していることを暗示している。
つまり、格言の「幸福とともに消えていく」のとおりになれば、米ドル安から米ドル高へ、そろそろ反転するかもしれないということだ。
筆者は、必ずしも、米ドルの反転を確信しているわけではない。だが、現時点においては、米ドルの安値追いに対して慎重なスタンスを取りたいと思う。
■「円キャリートレード」崩壊のメカニズム
ところで、米ドル/円は、2008年12月と2009年1月に87.12円レベルの安値をつけて、「ダブルボトム」を形成していた。前述した「当時は、米ドル安ではなく、米ドル高に対する恐怖がマーケットを覆っていた」の記述とは、かなり相違するものである。
実は、米ドル/円だけが、米ドル全体のパフォーマンスと遊離していたのだ。それは、「リーマン・ショック」以降、円と米ドルの両方がリスク回避先通貨として買われたことから生じた「ねじれ」であった。
具体的に説明する。2005年から「円キャリートレード」が盛んに行われ、米ドル/円を含めて、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)相場における円のロングポジションは、莫大なレベルまで積み上げられていた。
その結果、「リーマン・ショック」に端を発した米ドル資産への逃避により、(米ドル以外の)外貨安/円高までもが引き起こされ、雪崩を打った形で円高が次の円高を呼び、「円キャリートレード」を一気に崩壊させたのだ。
この事実から得られた重要な結論とは、米ドルとは異なり、円が資産として評価されたのは「円キャリートレード」の崩壊による受動的な要素が大きく、円そのものの価値が評価されたわけではないということだ。
■円高が進まなければ、円ロングの投げ売りが出てくる!
そうなると、仮に米ドル全面安がこれから進むとしても、かつてのような円高をもたらす原動力が見当たらない。「円キャリートレード」はすでに崩壊し、死語になってしまったからだ。
米ドル安の受け皿が、ユーロや豪ドルから、円に取って代わることは想定しにくい。
しかし、米ドルが反騰してきたならば、事情は異なってくる。前述のように、豪ドルと円のロングポジションの積み上げが突出しており、米ドル高は、対円、対豪ドルで進行しやすいと考えられる。
また、東京金融取引所のくりっく365のデータによると、日本人投資家による円のロングポジションは、くりっく365の取引開始以来、最高の水準まで積み上げられているという。
これは、警戒のサインとして受け止めたいもので、特に注意したい。
足元では、米ドル/円は90円割れを回避し、底打ちの兆しを見せている。これ以上円高が進行しなければ、円のロング筋の投げ売りが出てくることも想定しておくべきであろう。
米ドル/円 週足
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■9月と10月は、米ドル高へ転換しやすい時期!
最後に、サイクル論の視点から見れば、9月と10月は、米ドル高へ転換しやすい時期でもある。
サイクル論の解釈はかなり主観的な要素を伴うため、必ずしも確率の高いアナリシス手法とは言えないが、これまで述べてきた状況を総合的に考慮すると、ここで今一度、冷静に相場を見極める必要があると思う。
(2009年9月18日 東京時間18:00記述)
※9月25日(金)のコラムは、海外出張のため、お休みさせていただきます。
■9月と10月は、米ドル高へ転換しやすい時期!
最後に、サイクル論の視点から見れば、9月と10月は、米ドル高へ転換しやすい時期でもある。
サイクル論の解釈はかなり主観的な要素を伴うため、必ずしも確率の高いアナリシス手法とは言えないが、これまで述べてきた状況を総合的に考慮すると、ここで今一度、冷静に相場を見極める必要があると思う。
(2009年9月18日 東京時間18:00記述)
※9月25日(金)のコラムは、海外出張のため、お休みさせていただきます。
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