先日、雑誌の『ダイヤモンド・ザイ』編集部にいるK君がザイのウェブ編集部へふらふらやってきた。
その時、記者はたまたまパソコンで、当コーナー「ドル・円・ユーロの明日はどっちだ!?」のバックナンバーページを開いていた。そこには「ドルはどこまで下がるのか?」というタイトルがズラリ表示されていたのである。
それを見たK君はこう言った。
「いつまで『ドルはどこまで下がるのか?』なんて書いてるんですか? ドル、上がってるじゃないですか。ボクなんか昨日と今日、日経225miniで20万円儲けちゃいましたよ」
ドル相場と「日経225miniで儲けちゃいました」のつながりが今イチわからなかったものの、確かにK君の仰るとおりである。このところ、ドルは上がっている。4月1日に『ザイFX!』がオープンし、「ドルはどこまで下がるのか?」シリーズを始めてから、ドル/円は基本上がり続けてきた。
米ドル/円 日足
相場の先行きは神のみぞ知る世界。これから再び、ドル/円が下がることも考えられる。当コーナー「ドル・円・ユーロの明日はどっちだ!?」では、もちろん、相場が上がろうが下がろうが、それを追いかけていくつもりだ。
ただ、オープニングシリーズとして続けてきた「ドルはどこまで下がるのか?」はK君の言うとおり、そろそろ手仕舞いする頃合いかもしれない(もしも「ドルはどこまで下がるのか?」を終了した途端、ドルがドンドン下がりはじめたら、このコーナー自体が恐るべき逆指標となってしまうが…)。
このシリーズでは、これまでマット今井さん、松田哲さん、広瀬隆雄さん、野村雅道さんと話を聞いてきた。今回はその「まとめ」をやっておきたいと思う。
取材したのはマット今井さんが3月下旬、松田哲さんが4月上旬、広瀬隆雄さんが4月下旬、野村雅道さんが5月上旬。
その間、相場は動いているし、さまざまな経済指標も発表されてきた。各氏のその時点での見解をそのまま比較してどうこう言うのはやや無理があるかもしれないが、そのあたりは少し割り引いて読んでいただきたい。
ではまず、今105円台にあるドル/円相場について、各氏の見通しをまとめてみよう。
マット今井さんに取材したのはドル/円がナイアガラ状態となり、95円台をつけた3月17日の1週間後ぐらい。まだ、生々しく、急落相場の印象が残っている時だった。そこでマット今井さんがドル/円について示したのは次の2つのシナリオだ。
(1)ゆっくりと90~92円ぐらいまで落ちていくパターン
(2)しばらく100円を挟んだ97円~103円ぐらいでもみあうパターン
後者のパターンを今井さんが考えたのは、「アメリカ経済が悪いということはもうかなり相場に織り込まれているので、さらに下がるかな」という思いがあり、「その一方、アメリカ経済に本格的に明るい兆しが見えないとドルもV字回復はしないだろう」という考えもあるので、その2つを合わせた結論とのことだった。
■65円のドル安予想から120円のドル高予想まで
『外貨崩落』などの著書があり、昨年からずっと円高局面を予想し、的中させてきた松田哲さんは80円までの円高を予想。さらに65円までの円高もあり得るとしていた。
ドル/円相場にはサイクルがあり、円高基調は通常2~3年続くので、少なめに見積もって今年一杯、長ければ2010年頃まで円高傾向が続いても不思議はないという見解だった。
広瀬隆雄さんは株の専門家だが、今回は為替について聞いてみた。広瀬さんは具体的なレートは示さなかったが、ここ1~2年はドル高局面になると予想。今、為替相場は大きな節目を迎えていると感じているとのことだった。
野村雅道さんは1970年代から今までの為替の流れを以下の3つに整理して、解説してくれた。
(1)1973年からの米国貿易赤字による長期的なドル安
(2)2000年以降のユーロ台頭、中国台頭によるドル安と円安
(3)2007年夏以降のサブプライム問題によるドル全面安
そして、(1)、(2)による長期的なドル安傾向は変わらないとしながらも、(3)のドル安局面は95円台をつけた3月17日に終了したとの見方だった。そして、当面は100~120円ぐらいで行ったり来たりするとみるが、どちらかというと、ドル高方向という予想だった。
以上をまとめると、当面のドル/円レートのメドは具体的なレートが示されたもののうち、一番のドル安で65円、一番のドル高で120円ということになる。
65円と120円、その差は2倍近い。
これを記者が素直にまとめると……
「まとまらない」が結論になりそうだ。
各氏の見解に大きな開きがある、まだまだわからないドル/円相場ということになるだろうか。
(「ドルはどこまで下がるのか?(まとめ その2)」へつづく)
(ザイFX!編集部・井口稔)
(1)ゆっくりと90~92円ぐらいまで落ちていくパターン
(2)しばらく100円を挟んだ97円~103円ぐらいでもみあうパターン
後者のパターンを今井さんが考えたのは、「アメリカ経済が悪いということはもうかなり相場に織り込まれているので、さらに下がるかな」という思いがあり、「その一方、アメリカ経済に本格的に明るい兆しが見えないとドルもV字回復はしないだろう」という考えもあるので、その2つを合わせた結論とのことだった。
■65円のドル安予想から120円のドル高予想まで
『外貨崩落』などの著書があり、昨年からずっと円高局面を予想し、的中させてきた松田哲さんは80円までの円高を予想。さらに65円までの円高もあり得るとしていた。
ドル/円相場にはサイクルがあり、円高基調は通常2~3年続くので、少なめに見積もって今年一杯、長ければ2010年頃まで円高傾向が続いても不思議はないという見解だった。
広瀬隆雄さんは株の専門家だが、今回は為替について聞いてみた。広瀬さんは具体的なレートは示さなかったが、ここ1~2年はドル高局面になると予想。今、為替相場は大きな節目を迎えていると感じているとのことだった。
野村雅道さんは1970年代から今までの為替の流れを以下の3つに整理して、解説してくれた。
(1)1973年からの米国貿易赤字による長期的なドル安
(2)2000年以降のユーロ台頭、中国台頭によるドル安と円安
(3)2007年夏以降のサブプライム問題によるドル全面安
そして、(1)、(2)による長期的なドル安傾向は変わらないとしながらも、(3)のドル安局面は95円台をつけた3月17日に終了したとの見方だった。そして、当面は100~120円ぐらいで行ったり来たりするとみるが、どちらかというと、ドル高方向という予想だった。
以上をまとめると、当面のドル/円レートのメドは具体的なレートが示されたもののうち、一番のドル安で65円、一番のドル高で120円ということになる。
65円と120円、その差は2倍近い。
これを記者が素直にまとめると……
「まとまらない」が結論になりそうだ。
各氏の見解に大きな開きがある、まだまだわからないドル/円相場ということになるだろうか。
(「ドルはどこまで下がるのか?(まとめ その2)」へつづく)
(ザイFX!編集部・井口稔)
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