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西原宏一_メルマガ取材記事
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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

ユーロ/米ドルの1.1100ドル割れは確実で、
近いうちに1.1000ドル割れも視野に入る。
米ドル全面高のトレンドは、当面継続!

2022年01月28日(金)18:09公開 (2022年01月28日(金)18:09更新)
陳満咲杜

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FOMC後、ドルインデックスは2020年7月以来の高値を記録

 米ドル高は継続、いわゆる「パウエル・ショック」で米ドル全体が買われ、ドルインデックスは2020年7月以来の高値を記録した。

ドルインデックス 週足
ドルインデックス 週足チャート

(出所:TradingView

 本コラムが繰り返し指摘してきたように、「米ドル高の終焉やドル安への転換だと予測するのは、相場よりも先走った憶測」であることが証左された。

【参考記事】
米ドル/円は、相場が落ち着くのを待つべき。米ドル高の終焉や米ドル安への転換だと予測するのは、相場よりも先走った憶測!(2022年1月14日、陳満咲杜)

 そもそも、パウエル・ショックなどというのは大袈裟な言い方だ。

 FOMC(米連邦公開市場委員会)後、FRB(米連邦準備制度理事会)議長さんの話はきわめて普通であったが、タカ派基調と解釈され、米ドル買いにつながった。

 ここまですでに調整幅を深めた米国株が、3月利上げやさらなる大幅利上げを織り込んでいるかどうかは定かではない。しかし、FRBのスタンスが緩和されることを期待していた一部市場参加者が、がっかりしたのは確かであった。

 しかし、別にパウエル氏ではなく、誰がFRB議長さんであろうと、今はスタンスを緩めるわけがないことも明白なので、ショックと言うのは大袈裟だ。

 つまるところ、約40年ぶりの高いインフレ率となっている米経済環境で、FRBの3月利上げがすでに手遅れではないかと疑われるなか、FRBにハト派の選択肢は残っていない。

 米国株がこれからさらに調整していくとしても、FRBのスタンスが緩和されることは基本的に期待できない

 そもそもFRBのミッションは、雇用の最大化とインフレコントロールであり、株式市場の安定ではないことを再認識しておきたい。

リスクオフの真の回避先は米ドルしかない

 強いて言えば、パウエル議長がこれから連続利上げの可能性を否定しなかったのが、一部市場関係者の予想よりさらにタカ派的であったこと、また、米GDPの上昇が市場コンセンサスよりさらに加速していたことが、米ドルをさらに押し上げた。

ドルインデックス 日足
ドルインデックス 日足チャート

(出所:TradingView

 いずれにせよ、米国株の大調整をリスクオフと見なした場合、真のリスク回避先は米ドルしかないことが最近の市況で再度検証されたと言える。

 というのは、ビットコインをはじめ、最初から「リスク回避先」との位置づけでデザインされた暗号資産(仮想通貨)の総崩れに象徴されるように、リスクオフ時における資産はそのほとんどがリスクそのものであり、リスク回避先にはならないからだ。

 為替市場においても、従来は資金避難先とされてきた円やスイスフランの役割がだいぶ低下しており、円に至ってはかつての風貌がまったくと言っていいほど見られない。

 ゆえに、日米欧株の大調整、大反落があっても米ドル/円における円高進行は想定ほど進まず、113円台前半に制限され、また足元、再度115円台半ばまで円安が進んでいる。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足チャート

(出所:TradingView

 筆者は繰り返し、円高進行があっても、円売りポジションの整理にすぎないことを指摘してきたから、そもそも円高が進んだとしても限度があると思っていた。

 しかし、113円台前半に制限されたことは、さすがに筆者の想定よりも円高進行が限定的であった。

 米ドル高はホンモノで、また、米ドル高トレンドの継続が再確認できたと言うほかない。

ユーロ/米ドルは2020年6月以来の安値まで下落

 もちろん、米ドル高のメイントレンドが強ければ強いほど、主要外貨のうち、一番シェアの大きいユーロが受け皿としての役割を果たすから、ユーロ安が円安より進行しやすい

 ユーロ/米ドルが昨日(1月27日)、1.1132ドルまで一気に突っ込み、2020年6月以来の安値更新を果たしたこと自体、むしろ当然の成りゆきと言える。

ユーロ/米ドル 週足
ユーロ/米ドル 週足チャート

 

(出所:TradingView) 

市況を占う最重要キーワードは「織り込み」、ユーロ/米ドルは1.10ドルの節目割れも視野に

 ここからの市況を占うには、一番重要なキーワードはやはり「織り込み」ではないかと思う。

 要するに、米利上げ自体はもちろん、大幅利上げや連続利上げがどの程度、今の株式市場や為替市場に織り込まれているかが、一番肝心なところだ。

 だいぶ織り込まれているなら、株の調整はそろそろ終わり、米ドル高も一服してくると推測されやすいが、そうでなければ、株の一段の調整と米ドルの一段高が推測されやすく、また、方程式として定着しやすいかと思う。

 統計的な視点からみれば、これまでは予想される米利上げサイクルに入る前に、米ドルの強気変動は逆に一服してくることが多かった。

 それを根拠に、これから米ドル高の一服、または米ドルの反落を想定する市場参加者がなお多いと思うが、問題は米利上げサイクル入りとはいえ、利上げ幅や回数に関する予想は分かれており、相場がそれらをどこまで織り込んでいるかどうかである。

 結論から申し上げると、3月に50ベーシスポイント(0.5%)の大幅利上げや、2022年年内に4回ではなく5回利上げするといった可能性、あるいは不確実性が残っている以上、単に利上げサイクル入りということで米ドル高の一服を想定するのは性急だ。

 なぜなら、利上げ観測で「ウワサの買い、事実の売り」といった行動パターンをもたらす前提条件としては、利上げのプロセスが明白であることが挙げられるが、今回はそうではないと思うからである。

 つまるところ、米インフレの状況次第だが、FRB自体が先行きを読み切れない可能性が大きく、利上げ幅や回数に関する政策決定の不確実性も大きい。こういった不確実性を相場が完全に織り込んでいない以上、目先の米ドル高を「ウワサの買い」として完全には片付けられない。

 だからこそ、米ドル高はこれから紆余曲折があっても一段と継続されやすいかと思う。

 特にユーロの場合、利上げの見通しがまったく立たない分、対米ドルでの続落が想定されやすい。

ユーロ/米ドルは1.11ドルの節目割れが確実視されており、この節目を下回れば、近々1.10ドルの節目割れも視野に入る。

ユーロ/米ドル 日足
ユーロ/米ドル 日足チャート

(出所:TradingView) 

円の事情はユーロより複雑だが、米ドル全面高が当面維持されるだろう

 では、円はどうなるだろうか。ユーロと同じく、利上げの見通しが立つわけではない。しかし先日、ロイターさんが記事で書いたように、2%のインフレターゲットを達成したあと、日銀が利上げすることも可能なようで、事情はユーロより複雑だと思う。

 さらに、直近も確認されているように、ユーロ安の進行がユーロ/円の大幅反落をもたらしているから、間接的とはいえ、これが米ドル/円の頭を抑え込むという見方もある。

 このあたりの検証はまた次回に譲るが、まず米ドル全面高のトレンドが、当面維持されることを強調しておきたい。市況はいかに。

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