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志摩力男の「マーケットの常識を疑え!」

岸田政権は、米ドル/円が110円を下回る
ことを望んでいる? マーケットを揺らした、
ロイターの観測記事を書かせたのは誰か?

2022年01月26日(水)19:21公開 (2022年01月26日(水)19:21更新)
志摩力男

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日銀の政策変更なしで米ドル/円上昇のナゾ。ロイターの観測記事を書かせたのは誰か?

 1月18日(火)、日銀が金融政策決定会合の結果を発表した直後、米ドル/円は買われ115.06円まで上昇しました。理由は政策の変更がなかったからです。

 政策変更なしで、なぜ米ドル/円が動くのか?

 それは、1月14日(金)にロイターの木原麗花氏の書いた英文記事がインパクトを与えていたからです。

Exclusive: BOJ debates messaging on eventual rate hike as inflation perks up

出所:ロイター

※記事内容は後述。タイトルを直訳すると「日銀はインフレ目標達成前に利上げが可能か議論」

 重要なのは、この記事を書かれたのが日本人記者である木原麗花氏なのに、日本語翻訳がないことです。

 しかも、この記事は5人の関係者の話しから構成されていますが、微に入り細に入り、今の日本の現状を的確に指摘し、将来の金融政策の道筋にかなり質の高いヒントを与えています。かなりの高いレベルから、マーケット関係者のみにもたらされたメッセージに見えます。

 びっくりしたのが、「日銀はインフレ率が2%を超えるまで金利を据え置くと約束したことはない」との関係者の証言です。

 日銀は2016年9月21日に金融緩和強化のための新しい枠組みとして、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入しましたが、その際に「オーバーシュート型コミットメント」として、CPI(消費者物価指数)が2%の目標を安定的に超えるまで政策を変更しないと約束していたはずでした。

 ところが、2016年9月21日に日銀が公表した政策発表文を確認してみたところ、確かに「オーバーシュート型コミットメント」の記載はあり、そして、マネタリーベースの拡大、つまり量に関しては続けると約束していますが、金利に関しては何の約束もしていません。

 驚きました。さすがです。

2016年9月21日の日銀会合後の会見で「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を説明する黒田総裁 Bloomberg/GettyImages

2016年9月21日の日銀会合後の会見で「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を説明する黒田総裁 (C)Bloomberg/Getty Images

 日銀が発表する文章は、非常に注意深く作られているので、一部関係者しかわからない「日銀文学」と揶揄されていますが、このときも明らかに意図的に、金利に関しては文言から外していたのでしょう。

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2023年4月の黒田総裁退任以降、日銀の金融政策は動き出すか?

 前述したロイターの記事の主旨は、FRB(米連邦制度理事会)の利上げが目前に迫り、円安に起因する物価高、生活費の上昇に対する国民の不満が高まっており、緩和政策の出口をどうするのか、日銀は考え始めているという内容です。

 しかし、日銀がすぐに政策変更するとは思えません。特に、黒田総裁は2%の物価目標を、当初は2年以内に(楽勝で)達成すると言っていましたが、その約束は9年経っても果たされていません。会見でも黒田総裁は「大変残念であることは事実です」と吐露されています。

黒田日銀総裁は、当初2年以内で2%の物価目標を達成すると言っていたが、9年経っても果たされていない…Bloomberg/GettyImages

黒田日銀総裁は、当初2年以内に2%の物価目標を達成すると言っていたが、9年経っても果たされていない…Bloomberg/GettyImages

 この春には、携帯電話料金引き下げの効果が剥落するので、2%達成の可能性があります。それは日銀が当初意図したように、需要が高まることで値段が上がる形ではなく(ディマンド・プル・インフレーション)、外部からの物価上昇に急かされる形となります(コスト・プッシュ・インフレーション)が、それでも2%は、2%。黒田総裁は達成したいでしょう。

【参考記事】
米ドル/円は、128円が2022年のターゲットか。トランプラリーの高値118.67円を超えると、大きな上昇波が見込まれる展開に!(1月6日、志摩力男)

 とはいえ、安倍政権から岸田政権に変わり、「アベノミクス」から「新しい資本主義」に変わりました。政治の背景は変わってきています。

 何年も金融緩和を続け、政府が賃上げを要請しても企業は賃上げに動きませんでした。この先、さらに金融緩和が進められ、円安が進んでも、賃上げが実現するとも思えません。何か新しい方法が必要でしょう。株主に回すお金があるならば、労働者に回せ。「新しい資本主義」はそう言っているように見えます。

 おそらく、黒田総裁が来年(2023年)4月に退任されることをきっかけに、日銀の政策は変わっていくのでしょう。その前に、総裁候補の選任が始まるので、その頃から日銀の政策変更に対する思惑が市場を動かすことになります。

 ロイターの記事を誰が木原麗花氏に書かせたのか。それは明確ではありません。5人の情報筋が出てきますが、おそらく一部の日銀事務方(雨宮氏に近い筋?)と、岸田政権内部からでしょう。

 想像以上にニュースのインパクトはありました。この記事は岸田政権及び日銀の真意と捉えられているからです。

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悪い円安…。岸田政権は、米ドル/円が110円を下回る円高を望んでる?

 「悪い円安」という言葉に象徴されるように、インフレへの警戒感が国民の間に高まっています。ガソリン価格も170円を超え、うまい棒も10円から12円へ値上げされました。もうすぐ、我先にと値段を上げる動きが出てくるでしょう。

 そのため、おそらく岸田政権内は安倍政権と違い円安志向ではなく、120円ではなく、むしろ110円を下回る円高方向が望ましいというコンセンサスがあるとの観測が、海外投資家の間で広まっています。

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足

(出所:TradingView

 本当に金融政策を変更するかどうかわかりませんが、円安に迫られる形で政策を変更するより、こうした観測記事ぐらいでマーケットを誘導できるのであれば、その方が望ましいかもしれません。

 日銀が政策を変更するのであれば、今行っているYCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)の修正から始まるものと思われます。


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