■日本の当局の、「駄策」によって円高が長引いている!?
依然として、為替市場は「円高トレンド」に支配されている。
9月9日(木)、米ドル/円は一時83.34円まで下落して15年ぶり安値を更新し、ユーロ/円も一時106円を再び割り込んだ。
このコラムでもたびたび指摘しているとおり、米ドル/円に関しては日柄的に、すでに「5年サイクル」のボトムをつけていたとしてもおかしくはないため、基本的には「売られ過ぎ」といった判断は変わらない(「5年サイクルで見て今は円安トレンド。人民元弾力化による円高進行は続かない」を参照)。
だが、それでも腑に落ちないところがある。
それは、日本政府や日銀の「無策」ではなく、「駄策」によって円高が長引いていると思わざるを得ないことだ。
つまり、マーケットへの日本政府・日銀発のメッセージが下手すぎるために、かえって円のロング(買い持ち)筋を元気づけていると見ているのだ。
■ヘタな口先介入やメッセージは市場に見透かされる
日本政府や日銀の当局者の発言はこの間にいろいろあったが、まとめて見ると、次のように象徴され、集約できるだろう。
政府側:「円高を断固した措置で対応する」
このように重ねて表明している一方で…
野田財務相:「円高に対応する具体的な措置を検討中」
これに対して日銀も、円高傾向に伴う経済への悪影響に懸念を表明しながら…
白川日銀総裁:「為替市場を自由自在にコントロールできない」
政府筋や財務相の発言に関しては、「円高を回避したいが、有効的な方法がないから口だけだよ」と言っているようなもの。
一方、日銀総裁に関しては「バカ正直すぎる」上に、正論でありながらも不適切な時に行われた。ゆえに、日銀総裁としてはもっとも「不適切」な発言だ。
これでは、円のロング筋が刺激され、執ような攻撃(円買い)が続いても仕方がない。
断っておくが、筆者は決して日本政府や日銀幹部の発言が円高を招いているとは思っていない。
彼らのスタンス・行動がどうであれ、短期スパンにおける円高一服、長期スパンにおける円高継続といった「宿命的」な行方は変わらないと考えている(「ドル安は宿命だが、いったんは円安か?『中国が出たら終わり』を今回も信じたい」を参照)。
だが、そうは言っても、短期スパンでは日本政府・日銀が発するメッセージの内容によって、程度の差が出てくるのも事実である。
はっきり言えば、ヘタな口先介入や混乱したメッセージは市場に見透かされるので、何も言わないよりもマーケットに与える悪影響は大きい。
■米ドル/円は底打ちの可能性が高い!
ところで先週のコラムにおいて、円高圧力は、米ドル/円主導よりもクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)主導になりやすいと指摘した。その根拠は、やはりドルインデックスにある(「ECBの声明は間違い!『二番底なし』と断言する慢心が次の危機を引き起こす!!」を参照)。
結論から言えば、中長期スパンでは米ドル安は宿命であるものの、短期スパンでは、ドルインデックスの「4カ月サイクル」が秋口までのリバウンド継続を示唆しているために、米ドル全体はもう少し堅調な値動きとなるだろう。
(出所:米国FXCM)
上のチャートは、ドルインデックスの「4カ月サイクル」を示すイメージ図だ。併せて、200日移動平均線にサポートされていることも注意していただきたい。
そして、米ドル/円の日足チャートを見ると…
上のチャートは、ドルインデックスの「4カ月サイクル」を示すイメージ図だ。併せて、200日移動平均線にサポートされていることも注意していただきたい。
そして、米ドル/円の日足チャートを見ると…
下に示した米ドル/円の日足チャートを見ると、5月中旬以降の値動きが大きな「下落ウェッジ(保ち合い)」を形成していることがわかる。
一般論としては、「下落ウェッジ」が形成された場合、下放れよりも上放れの可能性が大きい。
RSIの「強気ダイバージェンス」と相まって、底打ちの蓋然性を示唆するサインだと、筆者は見ている。
一般論としては、「下落ウェッジ」が形成された場合、下放れよりも上放れの可能性が大きい。
RSIの「強気ダイバージェンス」と相まって、底打ちの蓋然性を示唆するサインだと、筆者は見ている。
(出所:米国FXCM)
このシナリオが正しければ、ドルインデックスの上昇が、米ドルの対ユーロ、対英ポンドなどでの上昇をもたらし、同時に、米ドル/円の底割れを回避することも意味する。
したがって、円全体の上昇傾向が続くのであれば、米ドル/円に替わって、ユーロ/円、英ポンド/円といったクロス円相場において「外貨安・円高」の圧力がかかってくる可能性が出てくるだろう。
■米ドル全体の底打ちの可能性を示す2つのシグナル
米ドル全体の底打ちの可能性について、次の通貨ペアの値動きを見れば、さらに理解できるはずだ。それは米ドル/スイスフランである。
米ドル/スイスフランはドルインデックスの値動きとかなり似ているため、市況観察する際に経験上、役立つシグナルが多い。
このシナリオが正しければ、ドルインデックスの上昇が、米ドルの対ユーロ、対英ポンドなどでの上昇をもたらし、同時に、米ドル/円の底割れを回避することも意味する。
したがって、円全体の上昇傾向が続くのであれば、米ドル/円に替わって、ユーロ/円、英ポンド/円といったクロス円相場において「外貨安・円高」の圧力がかかってくる可能性が出てくるだろう。
■米ドル全体の底打ちの可能性を示す2つのシグナル
米ドル全体の底打ちの可能性について、次の通貨ペアの値動きを見れば、さらに理解できるはずだ。それは米ドル/スイスフランである。
米ドル/スイスフランはドルインデックスの値動きとかなり似ているため、市況観察する際に経験上、役立つシグナルが多い。
(出所:米国FXCM)
上に示したのは米ドル/スイスフランの日足チャートだが、7月以降、値動きとRSIの傾向がかなりカイ離し続けている。
「強気ダイバージェンス」といったシグナルが点灯していることは一目瞭然だ。
また、ドルインデックスの構成通貨ではないが、加ドルの動向も気になっている。
カナダ中銀は9月9日(木)に、連続して3回目の利上げを敢行した。だが、加ドルは4月にすでにトップアウトしたように見え、米ドルは足元で、想定より堅調な値動きを見せている。
上に示したのは米ドル/スイスフランの日足チャートだが、7月以降、値動きとRSIの傾向がかなりカイ離し続けている。
「強気ダイバージェンス」といったシグナルが点灯していることは一目瞭然だ。
また、ドルインデックスの構成通貨ではないが、加ドルの動向も気になっている。
カナダ中銀は9月9日(木)に、連続して3回目の利上げを敢行した。だが、加ドルは4月にすでにトップアウトしたように見え、米ドルは足元で、想定より堅調な値動きを見せている。
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