今週(6月21日~)の為替マーケットには大きな焦点が2つあった。ひとつは人民元レートの弾力化で、もうひとつは米FRB(連邦準備制度理事会)のハト派スタンスの表明だ。
■中国の得意技、意表を突いた人民元レートの弾力化
先週末、中国はまたマーケットの意表を突く形で人民元レートの弾力化の実行を発表した。意表を突くのは中国の得意技でもあるが…。
その一方で、人民元の大幅切り上げに関しては否定的なスタンスを堅持しており、G20首脳会議の前に欧米各国の圧力を回避する狙いがあると見られている。
今回の措置は人民元問題を解決するにはほど遠いと言えるが、為替マーケットの反応は今のところ、やはり少し円高傾向になったのではないかと思う。
理屈としては、人民元レートの柔軟化に伴い、事実上のドルペッグ制(※)の放棄となったわけだから、円を含めてアジア通貨は連れ高になりやすいということだ。円高進行があって当然といえば当然である。
ただ、円高傾向といってもその値幅は限定的で、過激な値動きにはなっていない。実際、米ドル/円は今週の高値(約91.50円)から2円超の下げ幅に留まっており、ユーロ/円、豪ドル/円、英ポンド/円の下げ幅も限定的だ。
(編集部注:「ドルペッグ制」とは、その通貨と米ドルの為替レートを一定の値で固定すること)
世界の通貨 VS/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨 VS/円 日足)
■2005年の人民元切り上げ時、米ドル/円はどう動いた?
2005年7月21日、人民元が2.1%切り上げられた際、米ドル/円は112円台後半から109円台後半へ、一日で約3円も円高に動いた。これに比べると、今回の人民元改革措置がもたらした円高圧力がいかに弱いか、おわかりいただけると思う。
無理もない。前回の切り上げ措置に比べると、今回は人民元管理相場の緩和に過ぎないからだ。今回の措置による円高傾向が、人民元問題に絡む本格的な円高傾向として、これからもマーケットの基調を支配していくとは考えにくい。
筆者はいずれ本格的、かつ急激な円高が来ると考えているが、それは目下の材料によるものではない。また、その時期がまだ来ていないことも明らかだ。
もっとも、2005年のケースでも、円高の動きは一過性で、同年7月26日には112円台後半の水準に戻っていた。今回も円高の傾向は限定的で、米ドル/円は割と短期間で元のレベルまで回復できるのではないかとみている。
■2005年の人民元切り上げ時、米ドル/円はどう動いた?
2005年7月21日、人民元が2.1%切り上げられた際、米ドル/円は112円台後半から109円台後半へ、一日で約3円も円高に動いた。これに比べると、今回の人民元改革措置がもたらした円高圧力がいかに弱いか、おわかりいただけると思う。
無理もない。前回の切り上げ措置に比べると、今回は人民元管理相場の緩和に過ぎないからだ。今回の措置による円高傾向が、人民元問題に絡む本格的な円高傾向として、これからもマーケットの基調を支配していくとは考えにくい。
筆者はいずれ本格的、かつ急激な円高が来ると考えているが、それは目下の材料によるものではない。また、その時期がまだ来ていないことも明らかだ。
もっとも、2005年のケースでも、円高の動きは一過性で、同年7月26日には112円台後半の水準に戻っていた。今回も円高の傾向は限定的で、米ドル/円は割と短期間で元のレベルまで回復できるのではないかとみている。
米ドル/円 日足

■いかなる材料も「相場の内部構造」には勝てない
本質的には、マーケットにおけるいかなる材料も「相場の内部構造」が指示する方向には勝てないから、その材料のインパクトが大きければ大きいほど、マーケットは大荒れするものの、結局は内部構造に沿って元のトレンドに戻る。
だから、それは賢いトレーダーに取引の大きなチャンスを提供してくれることになる。
2005年の人民元の切り上げはまさに大事件であった。前述のように、今回の措置と比べられないほどインパクトが強い材料であったにもかかわらず、結局円安に振れたのは、他ならぬ米ドル/円相場の内部構造が当時円安を支持していたからだ。
次ページのチャートを見れば、一目瞭然であろう。
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