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田向宏行
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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

円安で漂う「円安恐慌」の雰囲気は、円安
一服のタイミングが近づいている前兆かも。
相場が材料を後追いすることは決してない!

2022年04月22日(金)17:33公開 (2022年04月22日(金)17:33更新)
陳満咲杜

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円安が一段と進み、「円安恐慌」といった雰囲気に

 円安は一段と進み、米ドル/円は130円の節目直前まで迫った。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足チャート

(出所:TradingView

 繰り返し指摘してきたように、円安の流れは雄大で、安易な修正はないから、円安終焉の願望は早く捨て去るべきである。

 さらに、構造上の視点における重要な示唆として、日本の個人投資家の逆張りを問題視したのも正解のはずだ。

 なぜなら、大幅な円安の進行が続いており、さらに加速してきた分、逆張り筋の踏み上げは推測されやすい。強いトレンドであるがゆえに、損切りを迫られた結果、一段とトレンドを強化したわけだ。円売りが円売りを呼ぶような展開自体も、筆者が繰り返し懸念を表明したとおりであった。

 ここまでくると、「円安恐慌」といった雰囲気が漂う。ミセス・ワタナベたちがどれぐらいの損失をこうむったかは正確に把握していないが、円安はどこまで?といった質問が連日あちこちで聞かれ、今まで円安余地に非常に懐疑的な見方を示してきた、いわゆるプロや識者でさえ、君子豹変して大幅な円安ターゲットに言及するようになった。

 もっとも、君子豹変といえば、一部ウォール街の面々の得意技と言える。この前110円、ひどい場合は100円といった円高目標を提示したばかりの者が、今は一転して135円とか150円といったターゲットを言い、円安に対する恐怖をあおる論調に躍起になっている。厚かましいというか、タフすぎるとしか言いようがない。

 日本人「識者」の多くは、ここまで節操がないということはないが、円高予測だった方のほとんどが、円安方向へシフトしてきた。

 そして「言い訳」を探すというか、現実味の乏しいロジックを持ち出す例が多数見られるようになった。これもまた問題ではないかと思う。

 たとえば、ある方は強い円をメインシナリオとして展開してきたが、最近の円安進行に鑑み、一転して円安の危機を煽るようになった。理屈としては、「円安傾向にあるから日本の家計(1000兆円規模とされる円預金)が外貨買いに走る可能性が大きいから、さらなる大きな円安余地を作る」といった論調だ。

 しかし、日本の家計と言えば、世界でもっとも保守的と言われ、長年ゼロ金利(事実はマイナス金利)の環境の中でも預金が大半のままであった。いくら円安傾向にあるとはいえ、リスクを極端に嫌う日本の家計の大半が外貨買いに走るとは、到底考えられない。

 筆者が処女作を出した2008年前半まで、日本ではスワップポイント(スワップ金利)を享受する円キャリートレードが流行っていたが、その円売りの全盛期でも日本の家計の総額からみれば微々たる規模に留まっていた。したがって、これからそんな日本の家計の大半が外貨買いに走るといったロジックは飛躍しすぎで、現実的でないことは明らかである。

円安の進行が世界中で話題となっているため、そろそろ円安一服か

 日本国内のみではなく、円安の進行が世界中で話題となり、中国メディアにも大きく取り上げられた。そのせいか、普段まったく為替問題に興味のない中国人の友人にまで、最近、円の行方を聞かれるようになった。円はどこまで安くなるかを知りたがっている模様だ。

 経験則でいえば、これは円安一服の前兆であり、円安方向は変わらないが、少なくとも目先、円安一服のタイミングが近づいているのではないかと思う。

 もっとも、130円や132円の上値打診の可能性は、目先、円安一服の可能性が大きいからと言って消えるわけではなく、なお残るだろう。

 なにしろ、米ドル/円の強気トレンドが維持されており、「買われすぎ」と思われるがゆえに、さらに買われる展開になりやすいから、頭打ちのサインが本格的に点灯しない限り、性急な判断を避けたい。

 さらに、この前の本コラムで説明したように、年間平均変動幅の15円~20円で計算すると、130円や132円の打診があっても「正常範囲」なので、行きすぎた円安とは言い切れないかもしれない。

【参考記事】
米ドル/円のターゲットを130円や132円とする根拠あり! 円安はデフレ克服の代償として受け入れるしかなく、円高時代への逆戻りはない(2022年3月25日、陳満咲杜)

 年間平均変動幅の視点をもって円安を検証すると、いろいろとおもしろい見方ができる。

市場参加者が円安に恐怖を感じるのは、変動幅ではなくスピードと水準のせい

 前述のように、そもそも年間平均変動幅を超えていないのに、なぜ今、市場参加者は円安に対し、恐怖感に支配されるのだろうか。明らかに、変動幅ではなく、円安のスピードと今の水準が恐怖感につながっているはずだ。

 言ってみれば、3月から円は一本調子の急落を演じてきたから、「スピード違反」と言われても仕方がないと思う。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足チャート

(出所:TradingView

 さらに、米ドル/円は2015年の高値を超えたため、円安に危機感を抱くのも理解しやすいかと思う。

 2011年の円の高値から、より大きく、より長く続く円安のメイントレンドが形成されていると、市場参加者、全員の目に映っているから、相場の自己実現性から考えて、どうしても円安に対する恐怖に陥りやすいという市場心理が推測される。

米ドル/円 月足
米ドル/円 月足チャート

(出所:TradingView

 だからこそ、逆説的なロジックとなるが、猫も杓子も円安恐怖症にかかっているから、円買いを持つ者は損切り、円を売りたい者はすでに相場に参入したはずだ。

 言い換えれば、恐怖症の蔓延は投資家の行動を促し、また、その行動の結果が今のレートに現れているから、円安恐怖とか、円安パニックとかが市場の話題なってから、恐怖を覚えたりパニックになったりし始める者がいたとしたら、かなり鈍感というか、出遅れというか、相場の本質をわかってないと言える。

 このようなロジックは、実は米ドル全体にも通用する。

 ドルインデックスは連続して上昇してきたゆえに、米ドル高がこれからさらに続くと思われる。しかし、よく冷静に考えてみればわかるように、米ドル高の基礎は米利上げの継続、また、大幅利上げの可能性にあるが、その大半はすでに今のレートに反映されており、織り込まれている可能性が大きい

 これからドルインデックスが大幅に上昇するには、やはり、現在想定される米大幅利上げ以外の材料が必要だ。

ドルインデックス 日足
ドルインデックス 日足チャート

(出所:TradingView

 そうでないと、相場自体が材料の後を追うものとなり、本質的にそのようなことは決してない

 なぜなら、市場参加者はすでに発生した材料をもって相場に参入するのではなく、その材料に関する判断や思惑、さらに、これから出る材料に関する推測や思惑をもって相場に参入しているものである。

 それこそ相場の真実であり、このことを悟れなければ、一生、相場から利益を取れない。そのあたりの話は、また市況と合わせて説明していきたい。市況はいかに。

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