米ドル全面高、ドルインデックスはコロナショック直後の高値を更新
「米ドル全面高が一段とみられ、また米ドル全面高だからこそ、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の大幅反落がみられた。」
最近の市況をまとめると、このような記述がもっともふさわしいのではないかと思う。
米国株の大幅続落でリスクオフの米ドル買いが殺到、米ドルこそ真の安全資産であることが再度証明された。
ドルインデックスは、コロナショック直後の高値である103.96を上回り、新たな上昇余地を拡大していると思われ、米ドル全体の強さは当面維持されると思われる。
(出所:TradingView)
「リスクオフなので円が買われた」といった、従来の解釈を繰り返す論調もあったが、それには同意できない。
言ってみれば、主要クロス円における円買いが先週(5月9日~)拡大したが、それはあくまで外貨安であり、円高の要素は少なかった。
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米ドル全面高だからこそ、円を除き、主要外貨の大幅安が見られた。ゆえに、主要クロス円における外貨安につられた円のリバウンドは、あくまで受動的な値動きで、円が主導性を発揮する値動きではなかった。
さらに、主要クロス円における円安の流れが大分進行していたからこそ、いわゆるスピード調整が必要とされる側面もあったから、一時反落幅の拡大があっても、あくまで調整波の位置づけで、メイン構造は変わらないはずである。
米ドル/円が「買われすぎ」だったとしても、深く調整してくるとは限らない
このような視点に基づくと、米ドル/円の底堅さに納得できるかとも思う。確かに3月初頭から連続暴騰してきたから、「買われすぎ」だったかもしれないが、「買われすぎ」だから深く調整してくるとは限らない。
先週(5月9日~)の127円台半ばのいったん打診で、調整の目途がついたと言うのはまだ性急だとは思うが、これから下値余地があっても一部市場関係者が期待するほど大きくないとみる。
(出所:TradingView)
なにしろ、リスクオフの米ドル買いであることを理解すれば、これからの流れを把握できる確率が高まる。
前述のように、米国株の大幅続落で米ドル全体が大きく買われた結果、ユーロや英ポンドなど主要外貨が大幅続落し、ユーロ/円や英ポンド/円の深い調整に繋がったわけだから、米国株の動向がカギとなる。
結論から申し上げると、これから米国株が更なる下値余地を拡大することがあってもおかしくないが、目先は「行きすぎ」となり、そろそろリバウンドしてくるのではないかとみる。
(出所:TradingView)
なぜなら、米国株の大幅続落は、米大幅利上げの継続を完全に織り込んだ結果なので、市場センチメントが悲観一色となり、センチメント自体が行きすぎているからだ。
言ってみれば、5月の大幅利上げは想定どおりに行われたが、直前に次回0.75%の利上げありといった極端な予測もあったほど、マーケットはこれからの利上げ幅ばかりにおびえていた。
次回0.75%のような「超大幅利上げ」がFRB(米連邦準備制度理事会)議長さんに否定された途端、マーケットは「6月、7月、8月連続0.5%利上げ」といった過激予測にまた支配され、米国株の狼狽売りに繋がったわけだ。
FRB政策に関する論争は専門家に任せ、我々トレーダーは相場の値動きに専念すべきだ。
今までの経験から言えば、FRB政策に関する予想や市場センチメントは、相場の行き先を予想する場合と同じく、実は冷静さを失いがちで、巷の論調が結局事実ではなかった前例は多い。
ゆえに、目先も巷の論調と距離を置くべきで、むしろ悲観一色となった相場のセンチメントから考えて、先週(5月9日~)の大幅続落で米国株が大分悪い材料を織り込んでいたのではないかと思う。少なくとも目先において、まったくスピード調整なしでさらなる下値を切り込んでいくとは思わない。
そうなると、仮に限定的なリバウンドだけでも、米ドル全面高のスピードを緩め、リスクオフ一色からの緩和でユーロや英ポンドなど対米ドルの切り返しをもたらすだろう。
主要クロス円の上昇トレンドへの復帰も想定され、連動して米ドル/円の高値トライも
円は最弱通貨の位置づけが変わってないから、結果的に「売られすぎ」に対する反動で主要クロス円の復帰が想定されやすい。もちろん、復帰とはブル(上昇)トレンドへの復帰である。
主要クロス円の切り返し、またブル基調への復帰があれば、米ドル/円における円売りの地合いの継続や強化にもつながる。
先週(5月9日~)の米ドル/円の反落が、クロス円の急速な調整とリンクした値動きと理解すれば、これから主要クロス円の切り返しと連動する形の米ドル/円の高値トライが想定しやすいかと思う。
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もっとも、筆者が繰り返し指摘してきたように、米ドル全面高の基調において円売りが継続されやすいが、米ドル高のスピードが速ければ、一転して米ドル/円の頭を抑える要素として鮮明になってくる。
それが外貨安による間接的な円買いと理解できれば、円売り派にとって、実は強い米ドル高を望めないわけだ。
そもそもドルインデックス自体が目先「買われすぎ」の兆しがある。
そのような兆しがあれば、米ドル高基調が変わらなくても、今までの強いスピードが緩和され、高値圏での保ちあいか、緩やかな米ドル高の市況が想定される。
そうなると、実は米ドル/円のロング派にとって「居心地のよい市況」になるから、米ドル/円の高値トライが引き続き有力視される。
米ドル/円がクロス円の下落に連動してきたから、深く調整してほしいと祈る市場参加者が少なくはないだろう。しかし、このような期待は本質的に「虫のよい」話だと思う。なぜなら、クロス円ではなく、米ドル/円が深く調整してくる場合は、米ドル全面高の基調が転換される可能性が大きく、逆に押し目買いに躊躇してしまうからだ。
このあたりの話はまた次回、市況はいかに。
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