トルコCPIの上昇率は前年同月比80.21%で24年ぶりの高水準に。トルコの高いインフレ率はエネルギー価格の高騰だけが原因ではない
TUIK(トルコ統計局)は8月のCPI(消費者物価指数)を発表しました。
8月のCPIの上昇率は前年同月比で80.21%となり、24年ぶりの高水準に達しました。前月比では1.46%の上昇ですが、マンスリーベースでインフレの上昇スピードが落ちたように見えます。
(出所:TUIK)
(出所:TUIK)
一方でPPI(生産者物価指数)の上昇率は前年同月比で143.75%となり、こちらも記録的な高水準が続いています。
(出所:TUIK)
生産者のコストでもっとも上昇しているのがやはりエネルギーで、電力・ガスの価格は前年同月比で348.39%の上昇です。
食料とエネルギー価格を除くコアCPIは66.08%で、こちらも上昇トレンドが続いています。つまり、トルコの高いインフレ率の原因はエネルギー価格の高騰だけではないということです。
トルコの4-6月期GDP成長率はプラス7.6%。G20の中でも自国通貨ベースでの成長率は高いが、トルコリラ下落で米ドル建てでは下落傾向にある
トルコの4-6月期のGDP成長率はプラス7.6%で市場予想を上回りました。
(出所:TUIK)
トルコはG20の中でも自国通貨ベースで成長率がもっとも高い国ですが、トルコリラがそれ以上に下がっているので米ドル建てでトルコのGDPは近年下落傾向にあります。2013年に9500億ドルに到達していたGDPは2020年に7100億ドルまで下がりました。
トルコ経済に今後大きな影響を与える可能性があるのは、ロシアとEU(欧州連合)の対立です。
ロシアは現在、欧州に天然ガスを送る海底パイプライン「ノルドストリーム」の稼働を停止させていますが、これが一時的な措置ではなく、欧米の経済制裁が解除されるまで継続すると宣言しました。
トルコもロシアから天然ガスを輸入していますが、欧米の制裁に参加していないので天然ガスの供給は止まりません。しかし、天然ガス価格の高騰はやはりトルコにとっても望ましいことではありません。
また、エネルギー危機がEU諸国の経済危機に発展した場合に、EUと経済的なつながりが強いトルコ経済にとって大きな打撃になるでしょう。
トルコリラの実質実効為替レートは年内に、史上最低水準を下回る可能性も十分にある
今週(9月5日~)のトルコリラは、対米ドルで大きく動いておらず、米ドル/トルコリラは18.20リラ前後で推移していますが、対円では上昇に転じていて、トルコリラ/円は7.80円を超えました。しかし、対円での強さは円安の進行によるもので、トルコリラが強くなっているわけではありません。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
トルコ中銀が発表した8月の実質実効為替レートは52.84に下がり、今年(2022年)1月以来の低水準となっています。実質実効為替レートの史上最低水準は昨年(2021年)12月に記録した48.10なので、年内にこの水準を下回る可能性も十分あると考えます。
(出所:トルコ中銀のデータを参考にメルマガ部が作成)
エミン・ユルマズ
<内容紹介>
今後の世界経済はどのように展開していくのか?すべてがバブルと思われるほど価格が上昇したいま(2022年春)、リーマンショック以上の世界経済の崩壊(!)が近づいていることを、著者は深く懸念している。さらにサイバーセキュリティへの懸念や暗号通貨の広がりなど、グローバル化、デジタル化した世界経済ならではの、新しい問題についても警鐘を鳴らしている。
著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。
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