高いインフレ率にもかかわらず、トルコの中央銀行は利下げしたため、トルコリラは大きく下がってきた
高金利通貨に興味のある方や実際に取引をしている方にとって、2021年終盤のトルコリラの動きは気になるところではないでしょうか。
少し振り返ってみましょう。
トルコリラは他の通貨に比べて、かなりの高金利ということで一部の投資家の人気を集めています。しかし、トルコはインフレ率が高く、経常収支が赤字のことが多いこともあって、トルコリラはもともと通貨安になりやすい通貨といえます。
トルコリラが長期的に下落していることは月足チャートからもわかります。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 月足)
ただ、2020秋ごろから2021年夏にかけては下げ止まっていたようにも見えました。週足チャートで見てみましょう。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 週足)
これを見ると、2021年春先にかけては上昇局面がありましたし、2021年夏頃にもわずかではありますが、いくらか上昇しそうな気配が見えました。
そんなトルコリラが2021年9月ごろから下落し始めたことにはいくつか要因があるようですが、トルコの中央銀行が高いインフレ率にもかかわらず、利下げし始めたことがかなり決定的なことだったようです。とりわけ、11月18日(木)の利下げ決定後は1日で15%超も下落するようなショック的急落が起こりました。
【参考記事】
●【トルコリラ見通し】トルコリラの実質実効為替レートは最安値付近。エネルギー価格の上昇続けば、トルコリラの下落トレンドは続く(エミン・ユルマズ、11月10日)
●【トルコリラ見通し】トルコリラが15%を超える暴落! 政権交代がなければ乱高下を繰り返すか。投資家に重要なのはリスク管理(エミン・ユルマズ、11月24日)
トルコのエルドアン大統領はこれまでも、インフレ対策として利下げを実施するという謎理論を主張してきましたが、トルコ中銀の政策決定もこの路線に沿ったものです。
エルドアン大統領の新政策で急反発! 乱高下相場に…
ここからの約1カ月、トルコリラは続落しますが、トルコ時間の12月20日(月)にエルドアン大統領がトルコリラ建て預金の価値をトルコ政府が保証するという新政策を発表すると、トリコリラを買い戻す動きが出て、これがジェットコースターのような乱高下相場を引き起こしているわけです。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 1時間足)
上は2021年12月23日(木)午後時点での1時間足チャート。12月21日(火)の急騰後は7円台から10円台の間で大きく上昇と下落を繰り返しているのがわかります。
これが今後の上昇につながるかどうかが気になるところですが、預金価値保全の具体的な内容が示されていないことなどから疑問視する声もあるようです。
ザイFX!でコラム「トルコリラ相場の明日は天国か?地獄か?」を連載中のエミン・ユルマズさんも、12月22日(水)公開の記事でこの新政策は失敗に終わる公算が高いとの見方を示しています。
【参考記事】
●【2022年のトルコリラ見通し】エルドアン大統領の新政策は、大失敗に終わる可能性。政権交代がなければ、本格的な上昇は難しい(エミン・ユルマズ、12月22日)
ただ、乱高下してから数日経った段階では、トルコリラ/円は比較的堅調な値動きを示しています。
スプレッド比較では各社決め手に欠ける印象
冒頭でも触れたように、トルコリラはもともと通貨安になりやすいところのある通貨です。そのため、トルコリラの取引をするトレーダーは、値上がりに期待するというよりは、長期保有で高いスワップポイント(スワップ金利)を狙うという人が多いと思います。
ただ、上昇と下落を繰り返している今なら、短期売買のチャンスもありそう……ということで、今回はFX各社のトルコリラ/円スプレッドを調べて、短期売買に向くのがどの会社かを探ってみましょう。
トルコリラ/円の場合、米ドル/円のような原則固定スプレッドばかりではありませんし、表示スプレッドに条件がつく場合もあるので、必ずしも狭い順でおすすめできるわけではないのですが、まずは目安としてトルコリラ/円のスプレッドが狭い上位7社に絞ってみました。
ザイFX!が調べた限り、下表以外のFX会社ではトルコリラ/円のスプレッドがかなり広いか、もしくはトルコリラ/円のスプレッドの数字をハナから提示していないケースばかりです。
FX会社 「サービス名」 |
トルコリラ/円 スプレッド |
マネーパートナーズ 「パートナーズFX nano」 |
1.0銭原則固定 ※1/7までのキャンペーン (12/22より休止中) |
トレイダーズ証券 「みんなのFX」 |
1.6銭 |
JFX 「MATRIX TRADER」 |
1.6~11.3銭 |
ヒロセ通商 「LION FX」 |
1.6~11.3銭 |
外為どっとコム 「外貨ネクストネオ」 |
1.7銭 |
SBI FXトレード (1万通貨まで) |
1.89~5.80銭 |
松井証券 「MATSUI FX」 |
2.9銭原則固定 (現在は提示を休止中) |
【FX口座「トルコリラ/円」のスプレッドを比較!(2021年12月最新版)】
⇒トルコリラ/円のスプレッドが狭いおすすめFX口座ランキング!
⇒FX会社おすすめ比較:トルコリラ/円が取引できるFX会社はここだ!(スプレッドの狭い順)
1位のマネーパートナーズ「パートナーズFX nano」は、現在スプレッド縮小キャンペーンを実施していて、1.0銭原則固定というスペックは申し分ないのですが、公式サイトによると「クリスマスを含む年末年始期間の取引参加者減少によるマーケットの流動性低下・急激なレート変動(ボラティリティの急上昇)の可能性があるため、2021年12月22日から当面の間休止いたします」とのことです。ちなみに、リアルタイムレートを確認したところ、6銭から12銭前後で推移していました。
ただ、キャンペーン自体は2022年1月7日(金)まで継続しているので、年末年始期間が過ぎればスプレッド縮小キャンペーンが再開する可能性もありそうです。また、これまでのマネーパートナーズ「パートナーズFX nano」のスプレッド縮小キャンペーンはたびたび延長されているので、1月7日(金)以降も続く可能性がありそうです。
【参考記事】
●マネーパートナーズ「パートナーズFX nano」で米ドル/円スプレッドが終日0.0銭原則固定に!さらに4通貨ペアも業界最狭水準に縮小中!
2位のトレイダーズ証券「みんなのFX」から6位のSBI FXトレードまでは、上限が表記されているかいないかの違いはあるものの、いずれも原則固定ではありません。上限のないトレイダーズ証券「みんなのFX」と外為どっとコム「外貨ネクストネオ」のリアルタイムレートをチェックしてみると、それぞれ2.6銭と3.9銭でした。
そして、順位としては7位ですが、2.9銭原則固定なのが松井証券「MATSUI FX」です。ただ、11月にスプレッド提示率が95%を下回ったことで、現在は提示を休止しています。リアルタイムレートを確認したところ、4~8銭程度で推移しているようでした。
こうして見てくると、原則固定をうたっているマネーパートナーズ「パートナーズFX nano」と松井証券「MATSUI FX」がスプレッド提示を休止していることもあって、スプレッド面からはいずれも決め手に欠けるという印象です。
ザイFX!の暫定おすすめFX会社は……? 1通貨から取引できて、スプレッドもまずまずなのはSBI FXトレード
スプレッド以外の評価軸としては、これだけ変動率が高い通貨ペアですから、リスクを抑えるための少額取引できるかどうかもポイントになりそうです。この観点なら、1通貨から取引できるSBI FXトレード、100通貨から取引できるマネーパートナーズ「パートナーズFX nano」と松井証券「MATSUI FX」あたりが有力です。
SBI FXトレードは、上位7社の一覧でスペック上は上限が5.80銭となっていますが、2021年11月1日(月)から12月1日(水)までの実績を確認すると、4.24%ですが8.80銭まで広がった時間などもあったようです。
また、マネーパートナーズ「パートナーズFX nano」や松井証券「MATSUI FX」のようなスプレッド提示休止には至っていないものの、SBI FXトレードもトルコリラ/円の証拠金率を引き上げています。つまり、通常よりレバレッジをかけられないことになります。
こうした注意点はあるものの、SBI FXトレードの発表によると、下表のように、1通貨から1000通貨までなら最も広がっても2.80銭ですし、1001通貨から100万通貨まででも、1.89銭の提示率は75%なのでまずまずの実績があるようです。
(出所:SBI FXトレード)
ただし、SBI FXトレードのリアルタイムレートを確認したところだと、1000通貨を超えた場合は、スプレッドが8.80銭、14.10銭、20.80銭といった数字に拡がってしまうことが多いようではありました。年末で流動性が低いため、スプレッドが拡がりやすくなっているのかもしれません。とはいえ、1000通貨までなら、おおよそ2.80銭で取引できるようでした。
SBI FXトレードには、過去にトルコリラがショック的な動きを起こしたときも、比較的スプレッドが拡がりにくかったという実績があります。このこともつけ加えておきたいと思います。
【参考記事】
●トルコリラ/円急落時の各社スプレッドを徹底調査! ローソク足が欠損している例も!?(2019年08月28日)
●イケダハヤト氏も知らない、トルコショックでもスプレッドが拡がらなかったFX口座とは?(2018年08月15日)
このように考えてくると、マネーパートナーズ「パートナーズFX nano」や松井証券「MATSUI FX」のスプレッド提示が復活するのを待ちつつ、SBI FXトレードを選択するのが賢いと言えるかもしれません。
トルコリラ/円は各社のスペック差がかなり大きい。「どこで取引してもいいや」とは考えない方がよい
今回のザイスポFX!では、乱高下しているトルコリラ/円を短期売買するなら……という仮定の下で各社のスペックを比べてみました。
トルコリラのような新興国通貨は通常時から流動性の低さには注意すべきといわれます。さらには年末年始は流動性が一段と低くなると考えられ、ザイFX!としても年末年始のトルコリラトレードを積極的におすすめしているわけではありません。
けれど、年末年始を過ぎて、流動性が回復してくれば、これだけ動いてきたトルコリラには短期トレードのチャンスがあるかもしれません。スペックのいいFX口座を開設しておき、準備を整えておけば、そんな際にすぐトレードできます。
米ドル/円などでは各社のスペック差が小さくなっていますが、トルコリラ/円のような通貨ペアは各社のスペック差がかなり大きいので、「どこで取引してもいいや」とは考えない方がよい面もあります。
激しく乱高下しているだけに、十分な情報収集と慎重な取引は必要ですが、トルコリラ/円の短期売買に興味のある方は以上の内容をぜひ参考にしてみてくださいね。
>>>マネーパートナーズ「パートナーズFX nano」のメリット・デメリットや特徴、最新のサービス内容はこちらをご覧ください
>>>トレイダーズ証券「みんなのFX」のメリット・デメリットや特徴、最新のサービス内容はこちらをご覧ください
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(山口学)
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