■トルコCPIは16カ月連続で上昇。ロシアの部分的動員令からトルコに逃げるロシア人が住宅価格を押し上げている
今週(10月3日~)、TUIK(トルコ統計局)が発表したCPI(消費者物価指数)は16カ月連続で上昇となりました。
9月のCPIの上昇率は前年同月比で83.45%となり、前月比でも8月のペースを超える3.08%の上昇でした。エネルギーと食料品価格を除くコアCPIも上昇を見せていて、前年同月比で68.09%を記録しています。
(出所:TUIK)
(出所:TUIK)
CPIを形成する144項目のうち124項目で価格上昇が見られ、2つは変わらず、18項目では価格下落が起きました。主要項目の中で価格がもっとも上昇したのは交通・運輸で、117.66%の上昇でした。次に高いのは93.05%の食料・ノンアルコール飲料でした。
(出所:TUIK)
前月ベースでは9.99%上昇の住宅価格が目立っていますが、こちらはロシアの部分的動員令と深い関係がありまして、部分的動員令からトルコに逃げるロシア人が住宅価格を押し上げています。
G20の中で、トルコはインフレ率でトップ。PPIの数値も高くインフレ圧力が弱まるのはまだまだ先か
トルコは24年ぶりの高インフレですが、G20の中でもトルコがインフレ率でトップです。G20の中で2位は78.5%のアルゼンチンで、3位は14.3%のロシアです。
トルコの政策金利とインフレ率の差がさらに拡大していて71.5%に達しています。つまり、トルコの実質金利はマイナス71.5%です。9月のPPI(生産者物価指数)の上昇率は前年同月比で151.5%になりましたので、依然としてCPIとPPIの乖離も大きいです。PPIの高さからインフレ圧力が弱まるのはまだまだ先になることがわかります。
(出所:TUIK)
今週(10月3日~)、トルコリラは対米ドル・対円でともに大きく動かず、米ドル/トルコリラは18.50リラ、トルコリラ/円は7.80円前後で推移しています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
インフレ率の数字はトルコリラにほとんど影響を与えませんでしたが、その理由はインフレ率が高いからといって金融引き締めに転じないのを市場がわかっているからです。
トルコはロシアから買っている天然ガスの支払い期限の延長を要請。貿易赤字で国家財政に余裕がなくなっているのは明らか
今週(10月3日~)発表されたもうひとつの重要な指標は8月の貿易統計でした。
8月の貿易収支は112億ドルの赤字になっていますが、赤字額が前年同月比で159.9%増加しています。月次ベースでの貿易赤字額としては史上最多となりました。
貿易収支悪化の最大要因はエネルギー価格の高騰ですが、ブルームバーグの報道によれば、トルコはロシアから買っている天然ガスの支払い期限の延長を要請したようです。
要請を行ったのはトルコ国営ガス輸入企業のBOTASで、2024年までの支払い延期をロシア国営ガス大手のガスプロムに要請しています。
結果がどうなるかわかりませんが、記録的な貿易赤字で国家財政に余裕がなくなっているのは明らかです。
エミン・ユルマズ
<内容紹介>
今後の世界経済はどのように展開していくのか?すべてがバブルと思われるほど価格が上昇したいま(2022年春)、リーマンショック以上の世界経済の崩壊(!)が近づいていることを、著者は深く懸念している。さらにサイバーセキュリティへの懸念や暗号通貨の広がりなど、グローバル化、デジタル化した世界経済ならではの、新しい問題についても警鐘を鳴らしている。
著者は、こんなときだからこそ、日本に世界の資金が集まるチャンスとも言う。投資をする人も、そうでない人も、世界経済の大転換期に入った今、是非読んでおきたい一冊である。
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