トルコ製造業は想定外の減速。ただ、これはトルコだけの問題ではない
TUIK(トルコ統計局)が10月12日(水)に発表した8月の鉱工業生産指数は前年同月比で1%の上昇となり、年間ベースでは2年ぶりに弱い上昇率となりました。前月比では2.4%の上昇でした。
事前の予想は前年比で2.7%の上昇でしたので、この結果はかなりのネガティブサプライズです。製造業PMIが7月に50を下回ってから製造業の弱さが懸念されていましたが、ここまでの減速は想定外です。
(出所:TUIK)
もちろん製造業の弱さはトルコだけの問題ではありません。欧州も同じような問題に直面しています。半導体不足の解消で自動車生産が回復しているものの、生産水準はパンデミック前のレベルに達していません。
また、高インフレ、地政学リスクなどの要因で消費者のセンチメントも大きく悪化しています。賃金上昇が物価上昇に追いつかないことによる不満で、今週(10月17日~)に入ってからもフランスでストライキが頻発しています。
トルコの雇用環境は改善。ひと桁の失業率は4年ぶり
トルコはすべてマクロ経済指標が悪いわけではなく、特に雇用統計が改善しているのが救いです。8月の失業率は前月比で0.4%低下し、9.6%になりました。ひと桁の失業率は4年ぶりです。
(出所:TUIK)
一時20%を超えていた15歳から24歳までの若年層の失業率も18%まで下がっています。パンデミックでダメージを受けていた観光業を含むサービス業の復活、トルコリラ安による製造業の活気が新たな雇用を生んでいるようです。
プーチン大統領はトルコを天然ガスの輸出ハブにすることを提案。米国は注意深く監視
今週(10月17日~)のトルコリラは、対米ドルでは大きく動いていませんが、対円では円安の追い風を受けて上昇しています。米ドル/トルコリラは18.50リラ前後で推移している一方で、トルコリラ/円は8.00円を超えました。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
10月13日(木)にロシアのプーチン大統領とエルドアン大統領がカザフスタンの首都アスタナで会談しました。
プーチン大統領はトルコをロシアの天然ガスの輸出ハブにしたい考えです。つまり、トルコを経由して天然ガスを輸出しようという話ですが、これで米国とEU(欧州連合)の制裁をバイパスしようとしている可能性が高いと思います。
トルコ政府はプーチン大統領の提案に賛成ですが、いかんせんトルコはNATO(北大西洋条約機構)の加盟国なので、ロシア制裁のバイパスに手を貸すことは欧米の反発を受ける恐れもあるでしょう。
エルドアン政権は過去にもイランへの経済制裁をトルコ経由でバイパスした前歴があり、米国は注意深く監視しています。
会談でプーチン大統領はトルコを天然ガスの輸出ハブにすることを提案。トルコ政府はプーチン大統領の提案に賛成だが、NATO加盟国なので欧米の反発を受ける恐れもある。写真はトルコのエルドアン大統領。 (C)Anadolu Agency/Getty Images
エミン・ユルマズ
<内容紹介>
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