米長期金利は急騰し、株式市場は反落したが、米ドルは頭が重い。
「米金利バブル」は、いつ破裂してもおかしくない
米長期金利は、急騰している。
執筆中の現時点で、米10年物国債利回りは一時4.996%まで上昇、同30年利回りは昨日(2023年10月19日)5.119%まで上昇した。もちろん、16年ぶりの高値更新である。
(出所:TradingView)
当然のように、金利の上昇が圧迫要素として見なされ、日米株式市場はともに反落してきた。
その反面、為替市場において米金利上昇に比例した米ドル買いがあったとは言い切れず、やはり米ドル全体の頭が重いという印象が強かった。
(出所:TradingView)
ここまでくると、米ドル高の終焉と言いたいところだが、仮に米金利のさらなる高騰があれば、米ドル全体が一段と続伸してもおかしくないから、この場合は、やはり性急だと思われる。
肝心なのは、米金利の急騰がこれからも続くかどうか、である。
結論から申し上げると、今は「米金利バブル」の最終段階にあり、米金利の上昇が今後、続かない公算は大きい。なぜなら、米国債が総じて売られすぎだから、である。
短期国債の2年物から長期の30年物まで、最新の統計では米国債のショートポジションは100兆円相当まで積み上げられ、ネットでは74兆円ぐらいの売り超と報道されている。
ここまでくると、いくらなんでも米国債の売られすぎは明らかであり、「猫も杓子も」を超えて、「鼠も杓子も(?)」米国債の売りポジションを持っているような状況なので、「米金利バブル」は、いつ破裂してもおかしくないと思う。
これ以上、米金利の上昇があれば、米株式市場ばかりか、米景気後退が避けられないだろう。米金利の急伸を懸念し、FRB(米連邦準備制度理事会)は2023年年内の利上げに踏み切れないと見なされ、事実上、今年(2023年)の9月利上げをもって、米利上げサイクルはすでに終了したと思う。
来年(2024年)の話は流動的だが、年内「最後の利上げ」に踏み切れないから、来年もないとほぼ認識されおり、それが米ドル買いが続かない背景だと思われる。
ミセス・ワタナベのポジション整理が進まなければ、
米ドル/円は本格的な頭打ちにならない
もちろん背景と言えば、ミセス・ワタナベさんの米ドル/円に絡むポジションを除き、米ドル買いポジションの過大によっても、さらなる米ドル買いをもたらせなかったと推測される。
しかし、米ドル/円に限っては、ミセス・ワタナベさんたちは米ドルのショートポジションを積み上げており、事情がまったく違う。
行動パターンとして、昔からミセス・ワタナベさんは逆張り好きなので、今さら驚かないが、今回はいささか事情が違う。何といっても150円の節目前後において、日本当局の介入が期待されており、言わば「介入プレー」のようなものだと思う。「介入プレー」が成功するかどうかはわからないが、突っ込まれないことは確かだ。
(出所:TradingView)
要するに、米ドル全体の状況と関係なく、ミセス・ワタナベさんたちのポジション整理が進まないうちは、米ドル/円は本格的な頭打ちにならないということだ。
さらに、仮に米ドル全体が頭打ちとなって、諸外貨に対して反落していくとしたら、対円のみ異なる動きをする可能性がある。
理屈はシンプルだ。米ドル高の終焉があっても、日本の個人投資家がたくさん米ドルのショートポジションを抱えるから、米ドルの反落がある度に利益確定に動く、すなわち米ドルの買戻しをするはずなので、逆に米ドルの反落が円の反発といった市況を制限してしまう。
米ドル/円は、随分、高値圏において保ち合いが続いてきたので、マイナスのスワップ金利というコストを背負うミセス・ワタナベさんの心境を察しやすい。
これから主要クロス円の一段高を有力視!
最弱の通貨「円」は、しばらく強くならない
となると、やはりこれから主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の一段高を有力視する。
ずいぶん米ドル高が続いてきたが、主要クロス円は総じて崩れず、高値圏にて保ち合いを継続してきた。前述のように、「米金利バブル」が早晩崩壊するなら、米ドルの反落が推測された分、諸外貨対円の一段上昇が自然な成り行きとなる。
つまるところ、金利差で見ても円は最弱の通貨であり、ミセス・ワタナベさんたちの逆張りもあって、しばらく円は強くならない。
そのうち、対米ドルで売られすぎた諸外貨の切り返しがあれば、たちまちクロス円における円売りの再開につながりやすいから、クロス円では順張り、すなわち外貨買い・円売りが仕掛けられる可能性が大きい。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
日銀は、年内から来年前半には金融政策を変更するだろう。
そのインパクトを考慮すると、クロス円も「最後の円売り」か
ただし、仮に今回の仕掛けが成功する場合、時間の推移とともにクロス円でも「最後の円売り」になる可能性が大きい。
もちろん、ここで言う「最後の円売り」は、これから主要クロス円における高値更新がない、という判断したものではないが、「素直な円売り」が、しばらく見られる可能性を指摘しておきたい。
なぜなら、早ければ2023年年内、遅ければ来年(2024年)前半のどこかの会合で、日銀はYCC(イールドカーブ・コントロール)撤廃、またはマイナス金利を解消しなければならないであろうからだ。
日本のインフレ傾向や、その持続性に照らして考えると、日銀政策の修正自体、もはや時間の問題なので、いったん修正の可能性が示唆されると、最弱の円でも大きく買われる可能性がある。
主要国家のうち、唯一マイナス金利やYCC政策をとる日本は、その政策の修正があっても金利差の面では優位性がないが、唯一だっただけに、一時にせよ、政策修正があった場合、そのインパクトも大きい。
この意味合いにおいて、ミセス・ワタナベさんたちには頑張ってほしいところだが、おそらくうまくいかないと思う。
つまり、日銀の政策の変更まで、米ドル/円の逆張り筋は持ち堪えられないと思う。このあたりの話はまた次回、市況はいかに。
15:00執筆
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