米ドル/円はショート筋を踏み上げて急騰し、直後に急落!
肝心なのは米金利の動向だが、頭打ちを判断するには早いか
前回(2023年10月20日)のコラムの最後では、「米ドル/円の逆張りを継続的に仕掛けてきたミセス・ワタナベさんたちは、うまくいかないだろう」と記した。
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そして、そのとおりになっている。執筆中の現時点では、米ドル/円は一時150.79円まで急騰、ショート筋を踏み上げたことは想像にかたくないだろう。
(出所:TradingView)
そして、その後10分足らずの時間で、米ドル/円は高値からいったん149.90円まで急落。10月3日(火)の波乱パターンを再演した。
10月3日(火)と同様、日銀介入があったと疑われるが、値幅が比較的、小さかったから、介入ではなく市場の自律調整といった声も多い。
真相はともかく、ミセス・ワタナベさんたちの仕掛けは成功していない上、それなりの損失を被っている。不思議なのは、巷では155円とか、160円への米ドル高・円安の進行を見込む声が多く、ミセス・ワタナベさんたちの逆張りは文字どおり“逆”に行っているようだ。
つまるところ、ミセス・ワタナベさんたちの仕掛けはトレンドを見極めた戦略ではなく、単に「介入プレー」だった。
言ってみれば、150円以上になれば、日銀が介入してくれるという期待が根強かったので、150円の節目に接近すればするほど、ミセス・ワタナベさんの米ドル売りの意欲が高まるわけだ。
日銀の先を回って利益を享受したい一心で、結果的にトレンドの逆張りにはまった。
強調したいのは、米ドル/円の上昇波がこれからも続くとは言っていないという点だ。筆者はどちらかというと、米ドルの高値を追えない立場を取っている。しかし、米ドルの高値を追えないことと、米ドルの高値を売ってみることはまったく違う話なので、誤解されたら困る。
肝心なのは、やはり米金利動向であろう。代表的な米10年物国債利回りは、10月23日(月)にも新高値を形成したばかりなので、強気トレンドを維持している。
(出所:TradingView)
その反面、執筆前にリリースされた米3QGDP(第3四半期の実質国内総生産)が非常に好調(年率4.9%成長)だったにもかかわらず、同利回りが上昇ではなく反落してきたので、出尽くし感を払拭できない。
とはいえ、米10年物国債利回りの頭打ちを判断するのは、また性急になるかもしれない。ここで「まだ」ではなく、「また」と書いたのもわけがある。強すぎた米金利の急騰があっただけに、頭打ちされたのではないかといった思惑が幾度もあったが、すべて間違いであったからだ。
米金利の急騰が終焉したとは言えないが、モメンタムは低下!
頭打ちを検証するポイントとは?
テクニカルの視点では、米金利の頭打ちを検証するポイントがある。米10年物国債利回りなら、まずは10月24日(火)安値の4.8%を割り込むことが挙げられる。
次に、同安値の割り込みがあれば、10月12日(木)安値の4.54%を割り込んでいく可能性が高まり、最後は、やはり4.54%を割り込めなければ、今回、米金利の急騰が終焉したとは判断できないと思う。
(出所:TradingView)
当然のように、同水準の割り込みがあるとしても時間がかかり、また、目先4.8%も割っていないから、今すぐにという話ではないと思う。
しかし、好調な米GDPなどの指標を受けても米長期金利が続伸できなくなった現状から考えると、少なくとも、モメンタムが低下したとは言える。
強い米ドルは出尽くし!?
ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルは下値を割り込まず、速度調整か
もっとも、ドルインデックスを観察すればわかるように、最近の高値は10月3日(火)にて形成され、未だに突破されていない。
(出所:TradingView)
米金利の続伸があってもドルインデックスの頭が重くなったと言えるから、強い米ドル自体の出尽くしが示唆される。
リンクするように、ユーロ/米ドルは10月24日(火)高値から大分、再反落してきたが、10月3日(火)の安値を割り込むまでのモメンタムは示されていない。
(出所:TradingView)
むしろ切り返しの途中における速度調整の側面が大きく、米金利の頭が重くなれば、ここから再度、切り返していく公算が大きいだろう。
値動きの激しい英ポンドについては、対米ドルで再度、反落してきており、値幅も大きかったが、それでも現時点まで10月4日(水)安値を割り込んでいないから、安値圏での保ち合いの可能性を示している。
(出所:TradingView)
この場合、底固めしてから再度切り返していくのがシナリオとして想定しやすいかと思う。
米ドル/円の今後のシナリオは、2022年高値を
ブレイクできるかどうかで変わってくる!
問題なのは、米ドル/円だ。2023年年初来の高値更新があったものの、頭打ちしたかと聞かれると、答えに窮する。
なにしろ、前述のように、ミセス・ワタナベさんの逆張りポジションが一掃されるまで、米ドルの高値再更新があり得る。
と同時に、日銀介入か、それとも市場の自律調整かは定かではないが、これからも高値圏で波乱してくる市況が繰り返される可能性は大きい。
とはいえ、構造上の問題として、やはり去年(2022年)の高値をブレイクできるかどうかに尽きる。去年の高値のブレイクがあれば、それこそ長いスパンにおけるシナリオを再考せざるを得ない。逆に、やはり突破できないなら、従来のシナリオの維持につながる。
(出所:TradingView)
昨年(2022年)高値(152円の節目寸前)をもって、米ドル/円は16年半のサイクルをピークアウトし、2028年まで緩やかな低下(すなわち緩やかな円高)、というのが従来のシナリオだった。
かなりギリギリまで接近してきたが、米長期金利の上昇一服があれば、米ドル/円のメインシナリオが維持される公算が高まるだろう。
さらに、インフレ情勢から考えて、早ければ2023年年内に日銀政策修正の可能性があるだろう。この分、日本の長期金利もすいぶん上がってきた。市場関係者たちは目先、米金利動向ばかりに目を奪われているが、いずれ日本金利にも注目してくる。米ドルの高値を追えないことだけ、正しい判断だと思う。市況はいかに。
10月27日(金) 0:32執筆
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