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日本を支配する「空気」に変化?ようやくできるようになったアベノミクス批判
おもしろい動画を見ました。
【徹底取材】超円安の源流を辿ったら、まさかの"大喧嘩"が始まった。(リフレ派/岩田規久男/日銀/異次元緩和/黒田東彦/アベノミクス)
(出所:NewsPicks)
超円安の原点であるアベノミクスに対する検証動画です。リフレ派代表である岩田規久男元日銀副総裁と、反対派である門間一夫氏、早川英男氏の対決です。
ネットの世界ではアベノミクスを批判すれば、あちこちから猛烈な反発をくらい面倒なことになるので、できれば回避したい話題です。でも、このような動画が作られるということは、状況はかなり変化したのかもしれません。
しかし、岩田規久男氏の反論を見る時、NewPicksのページに行きますが、Pickerの方々のコメントを見ると、やはりリフレ政策支持のコメントが強い。アベノミクスで日本は救われた、だからこの政策を変えてはいけない。こうした「空気」が依然として支配的にあるように思えます。
日本を支配するのは、昔も今もこの「空気」です。この安倍元首相が採用したアベノミクスという超緩和政策を変えてはいけないという「空気」がある限り、本格的な金融政策の変更もないし、円安も続くのでしょう。
(出所:TradingView)
よく言われるのが、「もう少し緩和政策を続けていれば…」、「もっと拡張的な財政政策を続けていれば…」デフレ状況に落ち込まずに済んだはずだ、という意見です。
早すぎる金融正常化、財政健全化が日本の成長を奪ってきたと植田総裁も2000年8月速水元総裁時代、0.25%利上げをする際には、反対票を投じられました。
「植田総裁が、あの時引き締め政策に転じなければ…」と、後世言われるのは大変不名誉なことでしょう。総裁自身も「引き締めが遅れるリスクよりも拙速に引き締めるリスクの方が大きい」と常々発言されています。
10月31日(火)に日銀政策決定会合が開かれますが、展望レポートにおいて物価見通しの上方修正がなされると報じられています。
日本の10年金利も0.8%台へと上昇していることもあり、一部には、1%の指値オペ水準を撤廃、ないしは1.5%程度のところまで後退させるというという案も予想されています。
(出所:TradingView)
しかし、植田総裁自身が仰っている拙速に引き締めるリスクを考えると、政策変更の可能性は小さいのではないかと思います。
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米ドル/円は動かず。150円乗せでの介入の思惑が上値を抑える
米ドル/円は150円の少し下でほとんど動かなくなっています(執筆時点)。
(出所:TradingView)
150円に乗せると介入があるかもしれないとの思惑が上値を抑えます。その一方、日米金利差からくるファンダメンタルズを考えると、円高になるシナリオも想定し難い。
こうした状況を逆手に取って、150.50円辺りにバリアを付けて、動かなければ利益を得られるストラテジーもかなり出回っているようです。
「動かなければ儲かる」、つまりボラティリティを売るストラテジーが流行ると、それがますます相場を膠着させます。
とはいえ、いずれマーケットは動き始めます。150円台に乗せたときに本当に介入が出てくるのか、確認したいところです。
10月3日(火)に介入的な動きがありましたが、その結果は月末に公表されます(外国為替平衡操作の実施状況)。注目したいところです。
【※関連記事はこちら!】
⇒米ドル/円の急落が為替介入でもそうでなかったとしても、いずれまた円安は進む!日米金利差が縮小しない限り、根本的に円安は止まらない(10月8日、志摩力男)
実際介入したのかどうか、それはわかりませんが、いずれ米ドル/円は埋め難い、大きな日米金利差を反映して円安(米ドル高)に向かうと思います。150円台ではいずれ介入が入り、米ドル/円が急落する局面もあるかもしれません。しかし、いずれまた米ドルは上昇していくでしょう。
(出所:TradingView)
2023年初頭、多くの大手経営者が見誤った米国経済への見方
一般的には、米国はいずれ利上げ局面が終わり、利下げ局面が来る、日本は、いずれ引き締め局面が来る。「日米金利差縮小=円安相場」の終わり、と予想している人が多いと思います。
しかし、それは2023年初頭、ほとんどの人が考えたシナリオです。1月1日(日)の日経新聞紙面には、必ず大手企業の経営者による相場予想が掲載されますが、多くの人が間違えたのが米国経済に対する読みです。
一部の経営者は米国のマイナス成長入りを予想していました。今週(10月22日~)26日(木)に発表される、米7-9月期GDP・速報値はプラス4.5%という凄い数字が予想されています。
米国経済はいずれ減速するかもしれませんが、過小評価すると2023年予測と同じ間違いを犯すことになると思います。
利上げはなくても米国は高い金利が続き、日本の引き締めは植田総裁の下、極めてゆっくり行われます。米ドルを買って5%の金利を享受するのが、当然の選択でしょう。
(出所:いずれも日経新聞2023年1月1日紙面より・筆者提供)
神田財務官は10月16日(月)、為替相場が激しく下落した場合には、国は「金利を上げることによって資本流出を止めるか、為替介入で過度の変動に対抗する」と述べました。金利操作は日銀の所管となるので、金利に言及するのは極めて異例です。
その数日前、10月14日(土)にIMF(国際通貨基金)副局長が「円安は主に金利差が要因であり、経済のファンダメンタルズを反映している」、「介入の必要性を裏付けるような主要基準である市場の機能不全や、金融安定へのリスク、制御不能になったインフレ期待をIMFは認識していない」と述べましたが、その発言に呼応した面もあるかもしれません。
財務官は、いずれ介入だけでは円安を止められないと覚悟されているのではないかと思います。その時、財務省に非難の目が向けられる前に、責任回避のヘッジをしているようにも見えます。
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政治的には日銀に政策変更圧力がかかってくる可能性もあるが…
政治的には、日銀に対し政策変更圧力がかかってくるかもしれません。
しかし、金融政策の変更は、日本においては「空気」がより重要なのではないかと思います。物価高に苦しんでいますが、それでもアベノミクスを支持する「空気」は強い。この「空気」がある限り、植田総裁は容易には動けません。
「空気」をどのように判断するか。それは、やはり選挙かなと思います。
岸田政権は円安を止めたいと思っているでしょうが、アベノミクスの変更には大きな政治リスクがあります。それでも選挙で負けると、自民党は動き出します。
その意味では、10月22日(日)に行われた長崎と高知・徳島で行われた補欠選挙は注目でしたが、結果は自民党の1勝1敗。ここで2連敗すれば、岸田首相は本格的に円安対策に舵を切ったかもしれません。
アベノミクスがどうして導入されたのか。もうデフレはたくさんだ、という国民の強い思いが、安倍政権を誕生させ、黒田バズーカとなりました。
アベノミクスが終了するためには、もう円安はこりごりだ、金融緩和は勘弁してくれ、という強い思いが国民の間で醸成されなければならないと思います。
金融政策を変更し、円安を止めなければ、自民党が政権を失ってしまう。そこまで行かないと、アベノミクスは続いていくのだと思います。よって、150円というとてつもない円安レベルですが、それでも米ドル/円相場のリスクはさらなる円安方向ということになるでしょう。
バイデン政権は、イスラエルを抑えて状況の悪化をコントロールしている?
もちろん、今はガザ地区において本格的な戦闘が始まろうとしているタイミングです。バイデン政権はイスラエルを抑えて、状況の一方的な悪化をかなりコントロールしているように見えます。イスラエルだけであれば、もっと酷い状況になっていたでしょう。
ただ、ガザ地区において罪のない人たちが空爆で殺戮されるシーンが続けば、本来ハマスによるテロ行為の被害者であるはずのイスラエルが、国際的批判にさらされることになります。
世界各地でユダヤ人に対する反感が高まってしまうかもしれません。それこそがハマスの目的なのでしょう。
【※関連記事はこちら!】
⇒ハマスのイスラエル攻撃から1週間経過し情勢はどう動いた?何かの衝撃で原油が100ドル超となれば米ドル/円は155円へ向かうことも想定すべきか(10月15日、志摩力男)
それでも、批判に構わず、相手を完膚なきまでに打ちのめすのが、これまでのイスラエルのやり方でしたが、多くの人がスマートフォンを持つ現在においては、悲惨な光景はすぐ拡散されます。
米軍がイラクに侵攻した時、50万人の一般市民が犠牲になっても、その光景は誰も知りませんでした。イスラエルに対する批判が、それをサポートする米国への批判となると、世の中は複雑化します。
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悩ましい米国株。季節性としては買い場になるが、単純な判断はできない
為替市場では、リスクオフの円高は消えたので、引き続きスイスフランへの買いが進むのでしょうか。商品では金と原油が堅調。そして問題は米国株です。
米国株の季節性を考えると、ここは買い場になりますが、今は特殊な状況なので、単純に判断できないかもしれません。11月に大きな反発がない場合、米国株の調整は大きくなるかもしれません。
(出所:TradingView)
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