目先切り返しているドルインデックスだが、長くは続かない⁉
2024年5月23日(木)東京時間の未明、前回(4月30日~5月1日)に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事録がリリースされ、米ドル全体(ドルインデックス)の切り返しが拡大した。
(出所:TradingView)
議事録の要旨は、「より長期に高水準での政策金利維持が望ましい」だったので、米金利の切り返しがもたらされ、リンクしたドルインデックスの切り返しの拡大につながるのも当然の結果であった。問題は、同議事録の効き目がどこまで維持されるのかだ。
結論から申し上げると、ドルインデックスの切り返しは続かないのではないかと思う。なぜなら、同議事録自体がすでに「古い」存在なので、効き目が長く維持されるとは思わないからだ。目先までの切り返し自体を過大評価すべきではない。
というのは、米4月CPI(消費者物価指数)がリリースされて以降、米9月利下げが一応コンセンサスとなり、さらに前倒しで実施されるといった予想もあった。市場コンセンサスが常に正しいとは限らない(むしろその逆のパターンが多い)が、CPI発表前のFOMCだったので、最新の状況を把握した上でのスタンスではなかったはずだ。ちなみに、FOMCにおける投票権を持つ理事たちの過去の言動からすると、見方やスタンスがよく変わることも事実である。
だからこそ、ジタバタしないほうがよい。引き続きテクニカルの視点を大事に、相場を丁寧にフォローしていくしかない。
まず、ドルインデックスを点検しておきたい。プライスアクションの視点では、ドルインデックスの切り返しがそろそろ再度頭打ちになるか、続いたとしても頭が重いことが示唆されている。
チャートに番号を振っているので、順番に見てみよう。
(出所:TradingView)
まず、1番の大陰線(5月1日)は典型的な「弱気リバーサル&アウトサイド」のサインだったので、4月16日(火)の高値との「ダブル・トップ」を形成し、その後の続落をもたらした。
そして、5月3日(金)の「スパイクロー」風の大陰線をもって、いったん下げ止まりを果たしたものの、5月9日(木・3番)までの切り返しが限定的だったから、その後の安値更新につながった。
ちなみに、5月9日(木)と5月14日(火・4番)のローソク足はともに弱気のサインと解釈でき、5月15日(水・5番)の大陰線をもたらしたのも自然ななりゆきであった。
したがって、確かに5月16日(木)の安値から目先まで切り返しが続いているが、前述の弱気の構造をすべて否定していく(すなわち、上昇し続ける)のは難しい。
その上、「実効性のない」のFOMC議事録に支えられた「偽効果」の側面が大きかったのだとしたら、一層米ドルの高値を追えない。
米ドル/円は最大158円台半ばの再打診も覚悟しておきたいが、
「二番天井」をつける可能性があると予想
一方、厄介なのは米ドル/円だ。投機筋の仕掛けがしつこく、イエレン米財務長官が再三に渡って日本当局を牽制(介入に否定的)していることも、円売り筋の気炎を上げさせたと思う。
5月14日(火)高値のブレイクがあって、5月3日(金)の安値151.86円を起点とした切り返しの継続が認められたため、最大158円台半ばの再打診も覚悟しておきたいところだ。
(出所:TradingView)
早期頭打ちの可能性もあるが、目先、逆張り(米ドル売り・円買い)のテクニカル上の根拠があまりないことに注意したい。
筆者は、4月高値を超えるような米ドル高・円安の進行を想定していない上、目先の米ドル/円の切り返しは早晩終焉し、いわゆる「二番天井」をつける形のトップアウトがあると思っている。しかしながら、短期スパンでは米ドルの切り返しに即対抗するようなスタンスは取りたくない。
(出所:TradingView)
何故なら、主要クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の動向と総合的に見ればわかるように、サインなしの円買いは、なお性急であるからだ。
ユーロ/円をはじめ、主要クロス円における外貨の切り返し(要するに円安の進行)は米ドル/円より鮮明である。ユーロ/円は昨日(5月23日)再度170円台半ばに接近し、英ポンド/円は再度200円の大台に迫り、豪ドル/円に至ってはいったん104円台後半まで迫っていた。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
前述のロジック(すなわち米ドル全体の切り返しが長く続かない)が正しければ、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドル、豪ドル/米ドルの速度調整が短期に終わり、これから再度、対米ドルでの反発が見られるはずなので、対円では一層強まる可能性が暗示されている。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
なにしろ、米ドル/円の頭打ちが再度、後ずれになる可能性が大きいから、主要クロス円が本格的な頭打ちを果たすまで、4月末高値にもう1回接近、あるいは、いったん高値再更新の市況まで覚悟しなければならない。
もっとも、仮にそのような市況があっても、クロス円における「外貨高・円安」のクライマックス、といった認識は変わらないが、再度、頭打ちのサインが正式に点灯されるまで性急な行動を控えたい。これだけが今、言えることで、なおかつ賢明な考えだと思う。市況はいかに。
15:30執筆
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