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西原宏一・叶内文子の「FX&株 今週の作戦会議」

米ドル/円は150円台が重くなり反落する可能性が高い!
152円の神田ラインを超えたのはわずか4カ月間、152円
以上は難しそう。カナダドル/円も大幅利下げ予想で注目

2024年10月21日(月)17:43公開 (2024年10月21日(月)17:43更新)
西原宏一&叶内文子

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日経平均は先週、一時4万円台を回復も「ASMLショック」で流れが変わった

西原宏一(以下、トレーダー西原)みなさん、こんにちは。

 早いもので、もう10月も後半戦に入りました。

11月の米大統領選もカウントダウンに入ったため、この結果もそろそろマーケットが織り込みに入る時期になりましたね。

 今週(10月21日~)も為替市場と株の展望をして行こうと思います。

 では叶内さん、今週もよろしくお願いします。

叶内文子(以下、MC叶内) はい、西原さん。今週もよろしくお願いします。

トレーダー西原 まず先週(10月14日~)、マーケットに衝撃を与えた「半導体関連」の株の動向、そして日経平均から確認しましょうか?

MC叶内 はい。日経平均を10月18日(金)終値で見ると、前週末比624円(1.6%)安と軟調でした。陰線が続いたことが特徴的です。

日経平均 日足
日経平均 日足チャート

(出所:TradingView

 連休明けは米国株の好調さに支えられて大幅上昇し、一時4万円台を回復する場面もありましたが、「ASMLショック」で流れが変わりました。

 オランダの半導体製造装置大手ASMLの受注下振れ、見通し下方修正などを受けて、米国でも半導体関連が売られる動きに。日経平均株価は半導体関連銘柄の寄与度が大きい指数なので、大きく影響を受けました。米国が半導体輸出規制を強化するとの報道も逆風になりました。

 その後、台湾TSMCが発表した決算は予想を上回る好調な内容でしたが、流れを変えるには至りませんでした。

 日米ともに、選挙という大きな不透明材料が近いということで、買いの手が入りにくい面もありそうです。

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米ドル/円は日経平均が一時4万円を回復しても、戻りが限定的だった

トレーダー西原 10月18日(金)の日経平均は、終わってみれば前週比マイナスですが、気になるのは日経平均と米ドル/円の相関

 8月5日(月)に、日経平均はまれにみる大暴落を演じましたが、先週は一時4万円台まで戻しています。

 ところが、米ドル/円の戻りは限定的。先週、米ドル円は一時150.32円と150円台に乗せていましたが、7月の高値は162円レベルなので、高値までまだ12円もあります。

日経平均&米ドル/円 日足
日経平均&米ドル/円 日足チャート

(出所:TradingView

 この相関から考えれば、仮に日経平均が高値を更新しても、米ドル/円の162円は遠く、戻りが弱いのが目立ちます。

米ドル/円の戻りが弱い要因は、三村財務官のコメントと国内輸出企業の断続的な売り。152円の神田ラインを超えたのは4カ月間だけ

MC叶内 米ドル/円の戻りが弱い要因はなんでしょう?

トレーダー西原 まず上げられるのが、三村財務官が「為替の動きを高い緊張感を持って注視する」とコメントしたこと。

 この三村財務官のコメントはまだ、単なる「牽制」ですので、通常であれば、再び円安に戻るはず。

 ただ、このコメントとは別に、米ドル/円の150円台では国内輸出企業の為替リスクヘッジによる米ドル売りが断続的に持ち込まれており、米ドルの需給が変化しつつあることが大きいと思います。

MC叶内 米ドル/円は、神田(前財務官)ライン(※)と呼ばれた152.00円というレジスタンスが控えていますね。

(※編集部注:神田ラインとは、政府・日銀の為替介入を指揮した神田前財務官が介入の際、意識していたのではないかと、市場が推測する米ドル/円の水準のこと)

【※関連記事はこちら!】
米ドル/円を丁寧に押し目買い。中東情勢悪化を乗り越えて底打ちも、152.00円に神田ラインを控えて上値も重くなる。NZ連続利下げ予測で豪ドル/NZドルの上値余地が拡大(10月10日、西原宏一)

トレーダー西原 そうなんですよね。

 152円の神田ラインは、ブレイクするのに1年半ぐらいかかっていました。それが今年(2024年)の4月にブレイク。

 一気に162円近くまで駆け上がりましたが、当局の介入が再び入ったこともあり、マーケットは152.00円レベルでサポートしきれず、決壊した後は140円レベルまで暴落しています。

 振り返ってみれば、神田ラインが超えていた期間というのは、わずか4カ月程度という短い期間

 こうしてみると、あらためて152円以上の米ドル高局面というのは、サポートするのがなかなか難しいレベルであると考えます。

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足チャート

(出所:TradingView

 ただ、日米ともに株が堅調であれば、円高になることもありません。

 今週の株の行方はどうでしょうか?

日本株は衆院選を控えて様子見が強まりそうだが、上値は重そう。米ハイテク株は好調

MC叶内 日本株は、衆院選投開票を10月27日(日)に控え、様子見ムードが強まるとの見方があります。

 アノマリーでは「選挙は買い」ですが、発足したばかりの内閣の支持率が低く、与党で過半数という固めに設定された勝敗ラインにも不安感があるようです。朝日新聞が、自公で過半数割れもと報じています。

 過去、自民党が下野した時は急激な円高株安に見舞われました。

 下野まではないとしても、この選挙の結果が芳しくないとなれば、自民党内が割れるなど考えられます。少なくとも経済政策が進むという期待は大きく後退します。政局の混乱は、特に海外勢に嫌われます。

 一方、米ハイテク株は好調で、日本株を支えてくれることは考えられます。

 10月23日(水)はテスラ、10月24日(木)はアルファベット・マイクロソフト、10月25日(金)はアマゾンと、ビックテックの一角決算を発表します。結果によっては、最高値更新を続けているS&P500の上値がさらに切りあがるかもしれません。

 日本でも決算発表が要注目で、10月23日(水)のニデックを皮切りに、10月24日(木)にキヤノン、10月25日(金)に信越化学などが予定されています。

 10月23日(水)の東京メトロの新規上場も注目イベントです。ムードを明るくしてくれるかもしれません。

 もうひとつ、手控え要因といわれているのが、11月5日(火)に控えた東証の取引時間延長です。新たに導入される「クロージング オークション」が始まってみないと、どうなるか想像しにくいためだと思います。日本株は上値が重そうです。

 一方、米国株は決算シーズンのスタートが概ね好調でしたし、米大統領選まであと1カ月を切る現段階でも、不透明感を嫌気するムードがあまり感じられません。AI関連、派生して発電関連が物色され、トランプトレードも再開しています。割高感は強まっているのですが、まだトレンドが続くのかもしれません。

トレーダー西原 なるほど。では、日本株が続伸するのもだんだん厳しいかもしれませんね。

 ここで、今週のイベントを確認してみましょうか?

MC叶内 まず、注目すべき経済指標と予想を確認しますね。


月曜日 米9月景気先行指数(予想前月比▲0.3%、前月▲0.2%)  
火曜日 米10月リッチモンド連銀製造業指数(前月▲21)
    IMF 世界経済見通し 
水曜日 米9月中古住宅販売(予想390万戸(年率)、前月386万戸)
    米地区連銀経済報告(ベージュブック) 
木曜日 米10月PMI景況感指数(製造業、予想47.6、前月47.3、サービス業、予想55.2、前月55.2)
    米週間新規失業保険申請件数
    欧州PMI
    米9月新築住宅販売(予想720千戸(年率)、前月716千戸) 
金曜日 日本10月都区部消費者物価指数(CPI)コア(予想+1.7%、前月+2.0%)
    米9月耐久財受注(予想▲1.0%、前月0.0%)
    ミシガン大学消費者態度指数(10月確報)


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カナダは大幅利下げが織り込まれつつある。ニュージーランドも大幅利下げで、高金利通貨に対して円高に向かう可能性が高い

トレーダー西原 これに加えて、10月23日(水)はカナダの金融政策決定会合もありますね。

 短期金利の指標のひとつで、市場参加者の金融政策の見通しを反映すると言われているのがOIS(※)なのですが、そのOISによると、BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])の0.50%の大幅利下げを織り込みつつあります。

(※OIS(Overnight Index Swap)とは、固定金利と変動金利の翌日物レートを交換するスワップ取引のこと)

MC叶内 カナダ銀行が大幅利下げに向かう材料を、詳しく教えて下さい。

トレーダー西原 BOCのマックレム総裁は「インフレ率が予測に沿って引き続き低下するようであれば、政策金利のさらなる引き下げが予想される」と述べており、今後も慎重に経済指標を見極めながら利下げを継続する姿勢を示していました。

 そして、そのインフレ率は2022年6月の8.1%から大幅に低下しており、物価上昇圧力が抑制されつつあることを示しています。

 次に懸念されるのが、経済成長の鈍化懸念です。

 7月の失業率は6.4%と、直近2年間で1.6ポイント上昇しており、BOCは予想以上に経済が減速するリスクを警戒しています。

 結果、OISによれば、10月23日(水)のBOC会合で利下げ幅を0.50%とする予想が織り込まれつつあります。

 BOCの利下げは10月で終わるわけではなく、連続利下げが予想されており、来年(2025年)の9月には2.50%程度まで利下げされることが織り込まれつつあります。

MC叶内 なるほど。

 一方、今月(10月)は、RBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])も0.50%に大幅利下げを行っていますね。

 主要各国は着実に利下げに進んでおり、金利差縮小と言う意味においては、さらなる大幅利下げが予想されている通貨に対して、
円高に向かう可能性が高まっているのでしょうか?

トレーダー西原 RBNZは、予想以上にハイペースの労働市場悪化を
中銀が食い止めようとしていると言われているので、多くの主要国が高金利に耐えられなくなっているのだと考えます。

 金利差縮小という視点では、高金利通貨と言われていた通貨に対して、円高に向かう可能性が高まっていると考えます。

米ドル/円は150円台が重くなり反落する可能性が高い! カナダドル/円も大幅利下げ予想で注目

MC叶内 今週の相場で、西原さんの気にしている通貨はなんでしょうか?

トレーダー西原 注目しているのは、150円台が重くなってきて反落する可能性が高まっている米ドル/円

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足チャート

(出所:TradingView

 また、BOCの大幅利下げが予想されているカナダドル/円でしょうか?

カナダドル/円 日足
カナダドル/円 日足チャート

(出所:TradingView

 そして、2週間あまりに迫った米大統領選の行方にも注目しています。これは来週の作戦会議で詳しく取り上げる予定です。

トレーダー西原MC叶内 では、みなさん、今週も楽しくトレードしていきましょう!
 


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