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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

米ドル/円を丁寧に押し目買い。中東情勢悪化を乗り越えて
底打ちも、152.00円に神田ラインを控えて上値も重くな
る。NZ連続利下げ予測で豪ドル/NZドルの上値余地が拡大

2024年10月10日(木)16:20公開 (2024年10月10日(木)16:20更新)
西原宏一

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中東の地政学リスクが高まっているにもかかわらず、米国株は底堅い動き

 みなさん、こんにちは。

 このところの金融市場で、どうしても気になるのが中東情勢です。

 本稿執筆時点で「イランがイスラエルに数千発のミサイルを発射する用意があり、攻撃された場合は経済拠点を標的にする」とBloombergが報道しています。

 中東情勢の緊迫が続いていることで、原油は下げ渋り、リスク回避通貨であるスイスフランも底堅い動きをしています。

 一方で、中東の地政学的リスクが高まっているにもかかわらず、米国株も底堅い動きです。

 10月9日の米株式市場は上昇。S&P500は5800ポイントの大台に接近しました。今年(2024年)、過去最高値を更新したのは、44回目になるとのこと。

S&P500 日足
S&P500 日足チャート

(出所:TradingView

 市場が米国の利下げを織り込んでいる状況で、実際に米国が利下げをすると、タイムラグをおいて、米国株がかなりの確率で反落するというアノマリーはあります。

 しかし、今回は時間をおいても 今のところ下げる気配はありません

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米ドル/円は中東情勢悪化を乗り越えて反発も、152.00円に神田ラインを控えて上値が重くなるため、丁寧に押し目買い

 そして、米ドル/円も反発しています。

 石破総理が植田日銀総裁との会談後、「個人的には現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と、みずから引き起こした石破ショックを全面否定

 米ドル/円の動きを確認すると、彼の自民党総裁選での勝利が米ドル/円を146円から141円まで急落させましたが、総理みずからの言葉により一気に147円台まで回復させてみせました。

【※関連記事はこちら!】
豪ドル/円を引き続き買い! 国慶節明けの中国市場で、中国株が上昇トレンドに戻るか注目。米ドル/円も押し目買い。石破ショックを総理みずから払拭し上値が軽くなった(10月7日、西原宏一&叶内文子)

米ドル/円 4時間足
米ドル/円 4時間足チャート

(出所:TradingView

 そして、先週金曜日(10月4日)の米雇用統計がかなり強い内容で発表され、米ドル/円は149円台まで回復しています。

 中東情勢の悪化により、米ドル/円は一時147円台前半まで反落する局面もありましたが、日本円はすでにリスク回避通貨ではありませんので、円買いは一時的

 そのため、米ドル/円は再び149円台に戻しています。

 米ドル/円は通称、神田(前財務官)ライン(※)と言われる、極めて重要な152.00円というレジスタンスが控えています。

(※編集部注:神田ラインとは、政府・日銀の為替介入を指揮した神田前財務官が介入の際、意識していたのではないかと、市場が推測する米ドル/円の水準のこと)

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足チャート

(出所:TradingView

 そのため、150円台からの米ドル/円は上値が重くなるため、高値を追うとゲームが苦しくなりますので、丁寧に押し目を拾いたいところ。

RBNZの連続利下げの可能性が高まり、豪ドル/ニュージーランドドルの方が豪ドル/円より上値余地が大きそう

 中国政府の大規模な景気刺激策を横目に、豪ドル/円は底堅い動きが続き、本稿執筆時点も100.30円レベルで推移しています。

 ただ、その上昇スピードは緩慢で、その要因はニュージーランドドルにあります。

 RBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])は昨日(10月9日)、政策金利であるOCR(オフィシャル・キャッシュレート)5.25%から0.50%引き下げ、4.75%にすると発表

 利下げは8月の0.25%に続き、2会合連続です。

 RBNZは8月に金融緩和を開始しましたが、景気失速で失業率が上昇。住宅価格も下落する状況に政策担当者は懸念を強め、利下げペースの加速に動いたと説明しています。

 インフレを封じ込めるために、昨年(2023年)まで主要国は高金利を維持してきましたが、各国とも経済が高金利に耐えられず、景気が徐々に失速。

 ニュージーランドはその傾向が顕著に出てきたと言えます。

 ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、ジェームズ・マッキンタイア氏は「予想以上にハイペースの労働市場悪化を、中銀が食い止めようとするのであれば、さらに急ピッチな利下げが必要になるだろう。2025年末までにさらなる追加利下げを見込んでいる」との見解を示しています。

 OIS(※)は短期金利の指標のひとつで、市場参加者の金融政策の見通しを反映すると言われているものですが、そのOISによれば、11月のRBNZ会合でも、市場はOCRの0.50%利下げを織り込んでおり、2025年8月にはOCRが3.25%まで下がることを織り込んでいます。

(※OIS(Overnight Index Swap)とは、固定金利と変動金利の翌日物レートを交換するスワップ取引のこと

 つまり、昨日RBNZが利下げをするまで、OCRは5.25%だったのに、10カ月で3.25%まで下落することが予測されているわけです。

 これでは、中期のニュージーランドドル/米ドルはじり安にならざるを得ないでしょう。

ニュージーランドドル/米ドル 週足
ニュージーランドドル/米ドル 週足チャート

(出所:TradingView

 中国政府の景気刺激策を受けて、豪ドル/円は100円台と底堅く推移しているものの、ニュージーランドドル/米ドルが軟調なため、豪ドル/円の上昇も緩慢。

豪ドル/円 日足
豪ドル/円 日足チャート

(出所:TradingView

 豪ドル/円の上昇基調は変わりませんが、RBNZの連続利下げ予測を受け、豪ドル/ニュージーランドドルのほうが、豪ドル/円より上値余地が大きいかもしれません。

豪ドル/ニュージーランドドル 日足
豪ドル/ニュージーランドドル 日足チャート

(出所:TradingView

 石破ショック、中東情勢も乗り越え、米ドル/円はボトムアウト(底打ち)。ただ上値を追わず、米ドル/円は丁寧に押し目買い。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足チャート

(出所:TradingView

 RBNZの連続利下げ予測を背景に、豪ドル/ニュージーランドドルの上昇にも注目です。


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