「トランプトレード」による米ドル高。背景にある米長期金利高騰は、そろそろ終焉のタイミングに差し掛かっている
米大統領選が終盤に入っている。市場関係者の多くはトランプ氏の勝利を見込んでいるようで、その思惑に基づくトレードは「トランプトレード」と呼ばれている。
トランプ氏の勝利を見込んだ「トランプトレード」の、為替市場における主な結果は米ドル高であった。その背景には米長期金利(米10年物国債利回り)の高騰があったが、そろそろ終焉のタイミングに差し掛かっている。米大統領選におけるトランプ氏の当選の有無を問わず、米長期金利や米ドル全体の反落を覚悟しておきたい。
まず、確認しておきたいのは、米金利の高騰自体、位置づけとして反発であり、メイントレンドとしての流れではない。そもそも、2020年安値を起点とした米10年物国債利回りのトップアウトは2023年10月にて完成しており、同長期上昇波動はすでに完了したと見なされる。
その証拠として、もっとも有力視されるのが、2024年8月にて一時2023年12月安値を下回ったことだ。同安値打診が一時的であっても、テクニカルの視点ではトレンドの転換を完成させる条件を満たし、またトレンドの転換を認定できる要素として重要であった。
ゆえに、目先までの米長期金利の急騰は、昨年(2023年)高値を起点とした反落(下落)変動における調整波動と位置付けられ、トランプ氏の勝利をほぼ織り込み済である以上、仮にトランプ氏の当選があっても大きな上昇余地を見込めない。
(出所:TradingView)
さらに、2023年高値を「ヘッド」と見なした場合、9月安値を起点とした米長期金利の急反発は、むしろ米長期金利の頭打ちの構造を証明するものとして重視される。
換言すれば、2023年高値を中心に、大型「ヘッド&ショルダーズ・トップ」(三尊天井)というフォーメーションを形成していく途中であり、「トランプトレード」がもたらした最近の急騰があくまで頭打ちの一環として位置づけられる。
だからこそ、ここからむやみに米金利の上昇余地を想定できない。
ドルインデックスは少なくとも今年いっぱい、長ければ再来年前半までの反落が想定される
もっとも、ドルインデックス自体、2008年安値から2022年高値まで「史上最長」の上昇周期を形成していた。
16年~17年サイクル(為替市場のDNAと言われる変動周期)の示唆によると、同高値から少なくとも今年(2024年)いっぱい、長ければ来年(2025年)や再来年(2026年)前半までの反落変動が想定される。
(出所:TradingView)
同見方を証明するように、ドルインデックスは2023年10月にていったん高値を付けたが、2022年高値にはほど遠い水準であった。昨年(2023年)10月にて米長期金利が5%を超えて新高値を記録したことを照らし合わせると、ドルインデックスの値動きと歴史的な「ダイバージェンス」を形成していた。
(出所:TradingView)
このように、「為替は米ドルしだい、米ドルは金利しだい」とはいえ、歴史的な転換点において、米ドルと米金利の内部構造は大きな相違を示し、またその相違をもって相場の内部構造を示唆していたと思う。
ドルインテックスの伸び悩みや波乱があれば、米大統領選の結果にかかわらず、ドルインデックスの反落を見込む
米長期金利の高値更新にリンクした高値で米ドル全体(ドルインデックス)が2022年高値に遠く及ばなかったこと自体、米ドル全体が2022年高値からすでに大きなサイクルの下落段階に入っていたことを強く裏付けたとみる。
だからこそ、行きすぎた「トランプトレード」にむやみについていってはいけない。そればかりか、むしろ「トランプトレード」の終焉を覚悟し、またトレーディングの好機と捉えている。
遅くても11月上旬にて米大統領選挙の結果がわかるから、相場はすでに転換の準備を始めているとも思う。ドルインデックスの伸び悩みや波乱があればその前兆とみなし、また米選挙の結果を問わず、ドルインデックスの反落を見込める。
米ドル/円は早ければ2024年内、遅ければ2025年春に140円の節目トライがあるだろう
米ドル/円に関して、一般論としてドルインデックスの値動きとも乖離があって、ドルインデックスの頭打ち、また反落に対して遅れがちである。
それでも「トランプトレード」の一環として買われすぎの段階にあること自体は間違いないので、これから頭打ちを果たし、早ければ2024年年内、遅ければ来年(2025年)春にて再度140円の節目トライがあるとみる。
(出所:TradingView)
ところで、昨日(10月31日)日銀の金融政策決定会合の後、植田総裁は記者会見にて「時間的余裕という表現は今後使わない」と明言したところ、市場関係者の多くは「円安が急激に進むと『余裕』が消えて利上げに追い込まれる日銀だが、金融政策でも『為替従属』の構図は変わらない」と考えているようだが、それは杞憂だと思う。
何しろ、前述のように、今回円安の進行が激しくても(10月にて10円近く円安が進行、ここ35年で最大の月間値幅のようだ)、主な原因は「トランプトレード」がもたらした米ドル全体の反発であり、円売りが主因ではなかった。
ゆえに、遅かれ早かれ「トランプトレード」の終焉があれば、日銀の政策判断は、為替の要素に配慮しなくてもよいかと思う。市況はいかに。
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