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田向宏行
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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

米ドルの上昇は「トランプトレード」の一環で急騰した
米長期金利の影響と理解するが、行きすぎを警戒!
とはいえ、米ドルの本格的な頭打ちは米大統領選後か

2024年10月25日(金)19:08公開 (2024年10月25日(金)19:08更新)
陳満咲杜

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想定より強い米ドル上昇の背景に、あらゆる材料や思惑を
織り込んだことによる米長期金利の急騰あり

 米ドルの上昇が想定より強かった。為替は米ドルしだい、そして米ドルは米長期金利(米10年物国債利回り)しだいなので、米長期金利の急反発を背景とした最近の米ドル高は「正当化」できるふしがあると思う。

ドルインデックスVS米10年物国債利回り 日足
ドルインデックスVS米10年物国債利回り 日足チャート

(出所:​TradingView

 もっとも、米長期金利は米国債の取引で決定されるものなので、世界で一番流動性のある米国債市場だからこそ、当然、金融市場としての機能を有する。ゆえに、米長期金利の動向はあらゆる材料や思惑を織り込んでいる結果であると悟るべきだ。

 そんななか、事実よりも思惑のほうがより値段に反映されることもしばしばあり、金融市場では日常茶飯事とも言える。一昨日(10月23日)までの米長期金利の急騰は、いわゆる「トランプトレード」の一環として理解したほうがよさそうだ。

 トランプ氏は、当選したら直ちに中国製品に高い関税をかける、との政策を掲げている。米民間消費の多くは中国製品に依存していることから考えて、トランプ氏の政策が実行されたら、米インフレが一段と高騰しかねない。どうやら、こういった思惑が米長期金利の急騰をもたらしたようだ。

「トランプトレード」の行きすぎに要警戒!米ドルの高値は
むやみに追えない

 しかし、思惑は往々にして行きすぎである。仮にトランプ氏が本当に当選したとしても、その影響は現在の相場に織り込まれている可能性がある。

 さらに、富裕層減税などトランプ氏の主張(政策)の多くが米赤字を膨らませていく恐れが大きいと言われ、米赤字額の増大自体が米ドル高ではなく、米ドル安に作用する材料であると認識しておきたい。

 ちなみに、トランプ氏はたびたび「高い米ドル」を嫌う発言してきたことも念頭におきたい。

ドルインデックス 日足
ドルインデックス 日足チャート

(出所:​TradingView

 そもそも政治家の話は、そのまま額面どおりには受け取れない。選挙時の話と当選後の話がまったく違う、といった現象は、政治の世界では日常茶飯事だ。

 別に皮肉でもなんでもないが、最近の好例としてやはり石破さんの話が挙げられる。念のため強調しておくが、ここでは別に石破さんを批判しているわけではなく、単純に政治家の「君子豹変」が常であることを強調したいだけだ。

 となると、やはり「トランプトレード」の行きすぎを警戒したい。米選挙の結果しだいで相場はまた一波乱あるかもしれないが、中長期スパン(数年単位)における米長期金利の頭打ちや米利下げ周期の継続自体は変わらないだろう。米ドルの高値をむやみに追えない

2024年のメイントレンドは米ドル安のはず!
だた、米大統領選が終わるまで本格的な頭打ちは期待しにくいか

 何回も書いてきたが、米ドル全体(ドルインデックス)が2022年にてすでにトップアウトした以上、2024年のメイントレンドは米ドル高ではなく、米ドル安のはずだ。目先までの米ドルの急騰は、途中の紆余曲折としては認められても、米ドル高へ転換したと言うのはとても軽率だと思う。

ドルインデックス 週足
ドルインデックス 週足チャート

(出所:​TradingView

 筆者のXでアップしたチャートに示したとおり、2000年3月安値を起点とした米長期金利の上昇波が、すでに2023年高値をもってトップアウトしたのであれば、目先の切り返しが目立っても、基本的な構造は修正できない。

 換言すれば、米長期金利の上値余地は限定され、仮にトランプ氏の当選があっても、ここから大幅な上昇余地の拡大があるとは限らない。

 さらに、ドルインデックスを観察すればわかるように、ドルインデックスは2022年にてすでにトップアウト。昨年(2023年)米長期金利の高値更新があったが、ドルインデックスの高値は2022年高値を起点とした全下落幅の半分程度しか回復しきれなかった

ドルインデックス 週足
ドルインデックス 週足チャート

(出所:​TradingView

 これは外ならぬ、米ドル全体の弱気構造を示唆したサインと受け止められ、先月(9月)まで米ドルの軟調を推測する根拠だった。そして、少なくとも来年(2025年)前半まではその効き目があるとみる。

 米ドルは米金利しだいと言っても、昨年(2023年)は米金利の高値更新があっても大きな米ドル安の構造に対抗できなかった。目先、米金利の急反発があったとはいえ、せいぜい4.3%未満なので、大きな米ドル安の構造を否定できるわけがない。ここから昨年(2023年)高値の5%の水準を超えたら話が別かもしれないが、いくら何でもそれはないとみる。

ドルインデックスVS米10年物国債利回り 週足
ドルインデックスVS米10年物国債利回り 週足チャート

(出所:​TradingView

 ゆえに、米ドル全体の切り返しがそろそろトップアウトの時期に差し掛かる、という判断は不変。一方、米選挙の結果がどうであれ、選挙自体が終わっていないうちは、米ドルの本格的な頭打ちを期待しにくいかもしれない。

 換言すれば、ユーロ、英ポンド、そして円など主要外貨の底打ちがあっても、底値鍛錬の期間が必要となり、簡単にな反騰しないだろう。市況はいかに。

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