イスラエルがイランを攻撃! 避難通貨のスイスイフラン買いと原油急騰の円売りで、スイスフラン/円が急騰
西原宏一(以下、トレーダー西原) 叶内文子(以下、MC叶内) みなさん、こんにちは。
トレーダー西原 今年(2025年)はトランプ大統領の誕生により、マーケットのボラティリティが上がって乱高下するマーケットになりがちです。
先週末、それを加速させるニュースが発表されました。それはイスラエルがイランを攻撃したこと。
これにより地政学的リスクが一気に上がり、株、通貨のボラティリティもさらに上がっています。
こうした環境下、どの通貨が強いのかがはっきりしてきました。今週(6月16日~)はその通貨に、注目していこうと思います、
それではまず、先週(6月9日~)の株式市場の振り返りからいきましょうか?
MC叶内 はい、今週もよろしくお願いします。
米国株は週末一気に急落し、S&P500は前週末比-0.39%の5976.97と3週ぶりの下落となりました。木曜日(6月12日)までは順調に上昇し、最高値まであと2%弱に迫っていました。
NYダウも-1.32%で 3週ぶりに下落。ナスダック総合指数は-0.63%で、大型ハイテクが上昇し他の指数より下げは軽微です。半導体株が強く、SOX指数は +1.47%で3週連続上昇しています。
週前半は堅調な展開でした。雇用統計を受けて米景気の減速懸念が後退、インフレ指標でも落ち着きが確認できました。米中首脳による電話会談が行われ、貿易摩擦への過度な警戒感が和らいでいます。
木曜日に米政府が中東地域から米国人を退避させていると伝わり、金曜日(6月13日)にはイスラエルがイランを空爆、中東情勢が緊迫化しています。
イランも報復に出ており、原油価格は約5か月ぶりの水準に上がっています。インフレ高進をつうじて景気を冷やす可能性が意識されました。
日経平均は前週末比92円(0.2%)高の3万7834円と、2週ぶりに上昇。半導体関連が急伸し日経平均を支えました。一方、TOPIXは-0.46%と2週連続で下落しています。
為替市場はいかがでしたか。
トレーダー西原 米ドル/円こそ節目の142.00円が抜けないため、下げ渋っていましたが、木曜日まで他通貨では米ドル安が進んでいました。
牽引していたのがユーロ/米ドルで、節目の1.1600ドルをブレイクし、一時1.1631ドルまで急騰しました。
そのマーケットを一変させたのが、イスラエルがイランを空爆したこと。これを受け、避難通貨のスイスフランが急騰。ユーロ/スイスフランが急落したことから、ユーロ/米ドルは反落しています。

(出所:TradingView)
イスラエルとイランが交戦状態に入ったことから、マーケットの注目が集まったのが原油価格で、一時約13%も急騰しました。
この影響を受けたのが、資源を輸入に頼っている日本円。株が下落しているにもかかわらず、原油価格の急騰により円売りに。
スイスフランの急騰に加え、原油急騰から円売りになった結果、スイスフラン/円が急騰しています。
本日(6月16日)早朝、スイスフラン円は一時節目の178.00円をブレイクしました。

(出所:TradingView)
それでは、今週のスケジュールと株の展望をお願いします。
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中東情勢が緊迫化するなか、G7サミットや日米首脳会談でトランプ関税がどう話し合われるのか注目
MC叶内 今週は大イベントが続きます。
まず、日曜日(6月15日)から開かれている主要7カ国首脳会議(G7サミット)が6月17日(火)まであり、日米首脳会談もあります。
そして6月16日(月)~17日(火)に日銀会合(日銀金融政策決定会合)、6月17日(火)~18日(水)にFOMC(米連邦公開市場委員会)が予定されています。
ともに現状維持とみられていますが、今回の日銀会合に関しては「国債買い入れ減額計画の中間評価」と「2026年4月以降の買い入れ方針」の議論が注目されています。
6月20日(金)に財務省が開催する国債市場特別参加者(プライマリーディーラー)会合と合わせて、日本の金利の動きには注意が必要です。
FOMCは同時に出てくる経済見通し、ドットチャートが注目です。
6月19日(木)にBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])、SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])も政策金利を発表します。
経済指標では、米国は6月16日(月)に6月ニューヨーク連銀製造業景気指数、6月17日(火)に米5月小売売上高、米5月鉱工業生産、6月18日(水)に米5月住宅着工件数、6月20日(金)に米6月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数が発表されます。
米小売売上高の市場予想は-0.7%で、4月の+0.1%から減少に転じる見込みです。メーカー側の発表では、自動車販売台数が前月比▲9.4%、関税前の駆け込みの反動で大幅減。ガソリン価格下落も下押し要因になります。
そのほか海外では、6月16日(月)に中国の5月の小売売上高など主な指標発表があります。6月20日(金)に中国の6月最優遇貸出金利も出るほか、6月17日(火)に独ZEW景気期待指数の発表があります。
国内では6月18日(水)に5月貿易統計、4月機械受注、5月訪日外客数、6月20日(金)に5月CPI(消費者物価指数)と日銀議事要旨が発表されます。
そして、米国は6月19日(木)が奴隷解放記念日で休場です。
今週の株式市場の展望ですが、にわかに中東情勢の緊迫感が増しており、原油価格急騰のインフレや景気への影響などが気になってきます。
今のところ市場では、過去のパターンから一時的なショックにとどまるとの見方が大勢かと思いますが、双方の動きや米国のかかわり方などを注視している段階でしょう。
ホルムズ海峡封鎖といった事態にならないことを祈ります。
FRB(米連邦準備制度理事会)の利下げへの期待も株価を左右しそうです。今のところ株式市場は年内利下げを2回で見ていますので、これがすくなくなると下落圧力になりそうです。
日本株は半導体関連が値を保っているため、日経平均も粘り腰を見せています。
海外投資家の日本株買い越しも10週連続となりました。ただ、TOPIXがマイナスだったことからもわかるように、全体としては週ベースでマイナスの銘柄の方が多く、4月安値からの戻りに頭打ち感が出ています。そこへ中東情勢という新たな不透明材料が持ち上がり、投資家心理が冷やされる可能性もあります。
G7サミット、日米首脳会談でトランプ関税がどう話し合われるのか、自動車関税をさらに引き上げる可能性に言及しているトランプ大統領の発言にも注意が必要でしょう。日銀会合後の植田総裁の会見も要注目です。
為替市場はいかがですか。
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スイスフラン/円は180円の最高値ブレイクに向けて続伸へ。SNBの大幅利下げには警戒
トレーダー西原 イスラエルとイランが交戦状態に入ったことから、地政学的リスクが高まり、通貨の強弱が徐々に鮮明になっています。
アジア時間こそ株売り、リスクオフ、円買いというプログラムが働き、円が強い局面もあるのですが、欧米市場では原油の急騰による円売りが入り、結果的には円安に振れています。
前述のように、避難通貨のスイスフランの急騰と、原油価格の上昇による円売りの組み合わせで、スイスフラン/円が急騰。
トランプ大統領は6月13日(金)、イランに対し、合意を成立させなければイスラエルによる「さらに残忍な」攻撃に直面すると警告。イスラエルとイランは交戦状態に入っており、自体は徐々に深刻化しています。
叶内さんも取り上げていましたが、怖いのはこの紛争の激化により、「ホルムズ海峡が封鎖され、海上輸送が阻害される」こと。
資産運用会社のINGベアリングスは、最悪のシナリオ、つまりホルムズ海峡の長期封鎖が発生した場合、原油価格が年内に2倍の150ドルという過去最高値に達する可能性を予想していると、FT(フィナンシャルタイムズ)が報じています。
原油価格の高騰はインフレ懸念を再燃させ、FRBの利下げを後退させます。これは円安要因です。
結果、リスクオフ要因の高まりによるスイスフラン買いと、原油の高騰による円売りで、スイスフラン/円は史上最高値の180.00円ブレイクにむけて再び続伸すると見ています。
【※関連記事はこちら!】
⇒スイスフラン/円は180円の最高値更新が視野に! 円の価値が劣化する一方、「通貨が強いと工場が潰れる」法則が通用しないスイスフランは、ゼロ金利が見込まれても最強(6月12日、西原宏一)
スイスフランに関しては、6月19日(木)にSNBの政策金利発表を控えており、これも注目です。コンセンサスは0.25%利下げされ、政策金利はゼロになるというもの。
ただ、スイスフランが急騰していることにより、SNBのOIS(※)の利下げ織り込み度は1.23回になっています。
(※編集部注:OIS(オーバーナイト・インデックス・スワップ)とは、固定金利と変動金利の翌日物レートを交換するスワップ取引のこと。日銀の金融政策スタンスに対する市場の見方を観察するのに適した指標として注目されている)
つまり、0.50%の大幅利下げの可能性も否定できないため、
SNBの政策金利発表直前には、リスクを減らしておいたほうがいいでしょう。
SNBの大幅利下げに警戒しながらも、原油価格の動向とスイスフランの行方に注目しています。

(出所:TradingView)
トレーダー西原 MC叶内 それでは、今週も株と為替のトレードを楽しんでいきましょう。
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