足元の為替市場では一進一退が続きながらも、基本的には「米ドル高」基調が強まっている。
ドルインデックスは6月23日(木)の海外市場で、2010年高値から引かれたレジスタンスラインの上抜けを再びトライしているように見えるが、これをブレイクするようなことがあれば、一段高もあり得るだろう。
■なぜ、ストロスカーン前専務理事が逮捕されたのか?
さて、前回のコラムでは「米ドル高」の蓋然性について、正論以外に「邪説」もあると申し上げたが、今回はその部分について触れたいと思う(「5月以降、米ドルが反発したワケは?ギリシャ危機は二の次、QE3の有無が重要」を参照)。
すでにお話したように、これはIMF(国際通貨基金)のストロスカーン前専務理事の逮捕と絡んでいる。
このストロスカーン氏の逮捕について、ロシアのプーチン首相が「おかしい」と、異例にも自らの疑問をロシア政府のオフィシャルサイトで表明していた(「『QE3』の可能性は完全には消えていない。発動される場合、タイミングを計る方法は?」を参照)。
消息筋によると、プーチン首相はロシア国家安全局(FSB)が提供したレポートに基づいてこのように発言し、事の重大さを強調している。
それはなんと、米国のケンタッキー州北部に保存されていた金(ゴールド)の大量紛失事件に絡んでいるというのだ。
保存されていた金は米国政府が所有するものだったが、5月以降、IMFに運搬するように要求されていた。
その総量は191.3トンと言われている。1978年に結んだ米国政府とIMFの協定によって、特別引き出し権(SDR)の資金源に充てるため、米国政府はこの金をIMFに売却しなければならなかった。
ところが、最近になって、ケンタッキー州北部に保管されていたはずの金が紛失したという事実をストロスカーン前専務理事がつかみ、オバマ米大統領にその事実関係を迫ったそうだ。
このことを良く思っていない「連中」がワナを仕掛け、ストロスカーン氏が逮捕されたというのが「邪説」だ。
■金の紛失&ストロスカーン氏逮捕の背景にあるのは?
それでは、なぜ、金の大量紛失という事実が公になることを恐れたのか? そして、ストロスカーン氏を逮捕しなければならなかったのか?
筆者は、主に2つの大きな背景があると推測している。
まず、「SDR」の構成は各国が保有する金をもとにして計算されているが、実際のところは、米国がほとんど金を保有していなかった可能性が高い。
よって、ケンタッキー州北部に保管されていたはずの金は紛失したのではなく、もともとなかったことになり、このような事実がバレたら、とんでもない事態に陥るから、米国が先手を打ったと思われる。
次に、フランスがG7(先進7カ国)の中で一貫して独自路線を貫き、当時のド・ゴール大統領が「米ドル安」を見込んで大量の金を米ドルと交換してフランスに持ち帰ったことだ。これは「ブレトンウッズ体制」を崩壊させる引き金になったとも言われている。
「ブレトンウッズ体制」は金本位制であり、米ドルと金の兌換(だかん)が一定のレートで固定されていた。その分、アメリカ国内から大量の金が流出し、米国は米ドルと金のペック制を維持できなくなり、その後の「ニクソン・ショック」が引き起こされたわけだ。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
ちなみに、ストロスカーン前専務理事はフランスの次期大統領選に出馬すると見られ、事件前は世論調査で他の候補をリードしていた。
もし、ストロスカーン氏が本当にフランスの大統領になれば、米国にとってどれだけ不利になるかは容易に予測できることだ。だから、あの「レイプ事件」が発生したというのだ。
■金価格がなぜここまで上昇してきたのかがわかる3冊!
2つの背景のうち、前者のほうがより雄大なシナリオと「陰謀論」が控えていると言える。紙面の制限で詳説は省くが、日本、中国ともに、鋭い本質に迫った作家がいるので、次の3冊のご一読をおススメする。
・『日経新聞を死ぬまで読んでも解らない金の値段の裏のウラ』(鬼塚英昭著、成甲書房刊)
・『金は暴落する!2011年の衝撃 ロスチャイルド黄金支配のシナリオを読み解く』(鬼塚英昭著、成甲書房刊)
・『通貨戦争、影の支配者たちは世界統一通貨をめざす』(宋鴻兵著、武田ランダムハウスジャパン刊)
この3冊の本を読めば、金価格がなぜここまで上昇してきたのかを理解していただけると思っているが、すべて鵜呑みにしてはならないということも記しておこう。
特に、中国の宋氏は日本の鬼塚氏と違って、なかなか「詳しすぎる」内情を暴露しているから、彼は単に一介の作家ではなく、より重い任務を負っている「影の支配者たち」の「メッセンジャーボーイ」ではないかとさえ思える。
実際のところ、中国の庶民の間で空前の金購入ブームが現在起きているが、宋氏の本が直接の引き金であると言われている。
■金が足りないなら、金価格はさらに上昇するのか?
話は長くなったが、要するに、「金高」にしても「米ドル安」にしても、「世界金融マフィア」によって仕組まれた面は大きい。
ゆえに、米国が実際にはほとんど金を保有していないことがバレないように、工作の一環としてストロスカーン氏の逮捕があったというワケだ。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
ならば、金が足りないから、これから金価格がさらに上昇していくのではないかと思われる方もいらっしゃるだろうが、成り行きは正反対になると私は予測している。
なぜなら、それは通貨戦争の本質に迫る話だからであり、米ドルの基軸通貨の地位を保つためには、金が天井をつけて反落しなければならない。
すると、金の対極が米ドルであり、米ドルの反転がなくては金の大きな反落はあり得ないのだから、これから「米ドル高」の局面が続くと見ている。
このあたりの話もなかなか複雑だから、また次回のコラムに譲ろう。
もちろん、ここまでの話が「邪説」であることを、再度確認しておきたい。
私自身は必ずしも「陰謀論」を信じているわけではないが、大きな背景と流れをつかむには、世界の政治や経済の「裏側」に目を光らせることも重要だと思う。
■中国がユーロ資産に資金シフトしているとの報道が頻発
ところで、最近になって、中国がユーロ資産やユーロ債券へ資金シフトしているとの報道が頻発している。
このあたりの見方については、筆者は自身が発行するメールマガジンの6月22日(水)号で次のように記した。
「中国によるユーロ資産シフトが再び取り上げられ、足元のユーロの切り返しにつながっているもようだ。また米株の上昇によるリスク選好度の向上が、ユーロショート筋の買い戻しを促しているようだ。
もっとも昨年夏は、中国によるユーロ資産売却といった報道でユーロが大底をつけていた。今回はユーロの天井を示唆する材料として受け止めるだろう」
はたして、今回も「中国が出たら終わり」」というルールは通用するだろうか(「ドル安は宿命だが、いったんは円安か?『中国が出たら終わり』を今回も信じたい」などを参照)。
相場は実におもしろい!
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)