言い変えれば、ユーロのソブリン危機の一段拡大によってリスク回避型の資金を米国へ流入させるために、ムーディーズが「奇襲」をかけたということだ。
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IMF(国際通貨基金)のデータによると、外債発行量の多い上位10カ国は、米国、ユーロ圏の7カ国、日本、オーストラリアである。この10カ国が発行する外債は世界全体の83.8%に相当し、ユーロ圏の7カ国で45%のシェアを有している。
つまり、米国の32%と比べると、ユーロ圏の7カ国のほうが上回っており、いかに莫大であるかは一目瞭然だ。米国にとって、まさに「そこにある脅威」である。
世界の資金量は限られており、ユーロ圏への資金流入は米国からの資金流出を意味する。従って、ギリシャ危機を封じ込めるよりも、ギリシャ危機をポルトガルやスペインの危機へと伝染させたほうが、米国債にとっては有利なのだ。
ユーロのソブリン危機が拡大すればするほど、米国のソブリン危機が起こるリスクは小さくなるというロジックでなる。
■今年後半はユーロのソブリン危機の再燃を覚悟すべき
もちろん、このような見方は筆者の「独断」と「偏見」である。
しかし、足元の米国債の危機を救うには、このようなロジックで物事を推進することが考えられる。そして、ムーディーズなどの格付け会社がその先兵として、「世界ソブリン戦争」の先陣を切った可能性は否定できない。
ユーロどころか、中国でさえも地方債務の大きさを理由に、格付け会社と一部のヘッジファンドが「中国ソブリン危機」のシナリオを練っていると言われている。これは「世界ソブリン戦争」前夜の様相を示していると言えるだろう。
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結論から申し上げると、「世界ソブリン戦争」に勝つのは米国である確率はかなり高い。当面は米国のソブリン危機が発生する確率は低いと思っている。
米国のソブリン危機も、中国のソブリン危機も、いずれも避けられないとは見ているものの、それらは時期尚早の上、順番も違ってくるので、今年後半はユーロのソブリン危機の再燃を覚悟すべきである。
その根拠は、ユーロサイドと米国サイドで、それぞれ3つある。
ユーロサイドでは、債務再融資の支援、ギリシャ危機が他国に蔓延する可能性、そして、ユーロ圏の大国への蔓延である。
一方の米国サイドでは、債務上限引き上げ問題、「QE2」終了後の問題、そして、「QE2」と米国の長期国債(10年もの国債)利回りの関係である。その詳説は、また次回に!
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以上をまとめると、ユーロが「世界ソブリン戦争」に負ける可能性は高い。よって、現在が「ユーロ高」の最終局面であるといった蓋然性も高まる。
それに対して、米国は「世界ソブリン戦争」に勝つために、もはや「米ドル安」を放置できなくなる。だから、米ドルは底堅く推移するだろうと予測する。
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