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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

No.1避難通貨はスイスフランから円へ。
米ドル/円76.25円割れの可能性は高い!

2011年08月18日(木)15:49公開 (2011年08月18日(木)15:49更新)
西原宏一

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 みなさん、こんにちは。

■スイスフランの急騰で、SNBが自国通貨高抑制策を発表

 多くの市場参加者が夏季休暇を取るため、8月は流動性に欠ける傾向があります。

 薄いマーケットの中でリスクオフ相場になると、例年だと円高が大幅に進行する傾向がありますが、今年は円ではなく、スイスフランが急騰しています

 先週はグローバルな株価の下落もあって、避難通貨であるスイスフランが急騰しました。短期筋のみならず、リアルマネーも加わり、投機資金がスイスフランへと殺到したのです。

 ユーロ/スイスフランは一時パリティ(1ユーロ=1スイスフラン)に向けて急落し、1.0068フランの最安値をつけています

ユーロ/スイスフラン 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/スイスフラン 日足

 このような止まらない自国通貨高に対して、スイスの中央銀行であるSNB(スイス国立銀行)は8月17日(水)に、自国通貨高抑制策の第2弾を発表しました。

 その内容は、当座預金残高目標の引き上げなど、かなり踏み込んだ内容でした。

 しかし、マーケットが予測していたユーロとのペッグ制の導入は行なわれなかったため、発表後のユーロ/スイスフランは1.1550フランから1.1222フランまで、300ポイントほど急落しました。

ユーロ/スイスフラン 1時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/スイスフラン 1時間足

 その後は、スイス金利の低下もあり、ユーロ/スイスフランは1.1400フラン近辺で推移しています。

 グローバルマーケットが不透明さを増す中、中期スパンで見た場合のスイスフラン高は変わらないのでしょうが、今回のSNBの自国通貨高抑制策により、スイスフランは避難通貨として一歩後退しました

 つまり、グローバルマネーが避難通貨へ向かうとき、今後、その行先は円となるでしょう

ボラティリティは低下気味なのに、米ドル/円の上値は重い

 日本の当局による単独介入が8月4日(木)に行われましたが、昨年9月15日に行われた介入と同様に、1日で終了しました。

 一時的ではありますが、単独介入によって米ドル/円が80円台を回復したため、一部の本邦輸出企業は80.00円近辺で一定の米ドルを売ることができたようです

 ただ、そのチャンスはわずか数時間に過ぎず、介入が行われた翌日には再び78円台に回帰してしまいました。

米ドル/円 日足

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 米ドル/円はその後も、歩みは遅いながらもジワジワと円高が進行しており、本稿執筆時には76.60円近辺で軟調に推移しています。

 今週は、先週見られたようなグローバルマーケットの混乱は収まっており、スイスフラン以外の通貨のボラティリティは低下気味です

 こうしたマーケット環境下では、通常だとキャリートレードが活発化し、豪ドル/円や米ドル/円が底堅い展開となります。

 ところが、米ドル金利の低下により、キャリー取引は金利の高い豪ドルに集中しています。豪ドル/円は80円台を回復していますが、米ドル/円の上値は重い展開のままです。

豪ドル/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 日足

 低ボラティリティの状況下でも、金利の恩恵を受けない対円での米ドル買い需要は活発化してこないようです。

■米ドル/円の最安値76.25円を割り込む確率は高まっている

 友人に聞いたところによると、米ドル/円のマーケットは現在、日銀の再度の介入期待により、78~80円での米ドル売りの注文が増えつつあるとのことです。

 米ドル/円は今週に入り、ユーロ/スイスフランやクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の反発につれ、一時77円台に戻す局面もあったのですが、本邦からの米ドル売りの圧力は強く、77円台は一時的なもので終わり、76円台での推移が続いています。

 これまでのところは、76.20円近辺にあるバリアに阻まれ、下値は76円台前半でサポートされています。

 しかし、2年債のゼロ金利が今後継続しそうな米ドルについては、リアルマネーからの買い需要は見込めないでしょう

 時間の経過とともに円高が進行し、最安値の76.25円を割り込む確率が高まっていると考えています。

米ドル/円 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足

 ヘッジファンドの友人は、ボラティリティの高いスイスフランを中心にトレードしていますが、介入が入って米ドル/円が上昇する局面があれば、米ドル/円のショートポジション(売り持ち)を構築する体勢であるとのことです。

 8月26日(金)にジャクソンホール会合が予定されていますが、FRB(米連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長がその講演の中で、昨年同様に「QE(量的緩和策)」の実施を示唆するとみる市場参加者は増えているもようです。

 米ドルは対円のみならず、他の通貨に対しても弱含みの展開です。

 ユーロ圏からの悪材料は多いものの、ユーロに対しても米ドルは下落しており、ユーロ/米ドルは8月17日(水)に一時1.45ドル台を回復しています。

ユーロ/米ドル 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足

今週の注目は、SNBが積極的にマーケットに「介入」しているスイスフランなのでしょうが、戦後最安値の76.25円のブレイク目前である米ドル/円にも注目です。


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