現時点では、あくまで憶測に過ぎない。だが、このような事態となれば、現在のユーロ売りがバブルとは言えなくなる公算が高くなる。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
しかし、ギリシャのEU離脱も、これまでにまったく想定されなかったことではない。市場関係者の間では、ギリシャのデフォルト(債務不履行)とEU離脱を想定したヘッジファンドの賭けが公然の秘密とされているほどだ。
したがって、ギリシャのEU離脱という材料だけでユーロ売りが加速するという見方には限界があると思う。ギリシャのデフォルトは避けられないのかもしれないが、それがいつになるのか、かなり流動的だ。また、本当にデフォルトとなっても、EUから離脱しない可能性もある。
そうであれば、過大なユーロ・ショートはバブルではないと説明するためには、他の要素が必要となってくる。それは他ならぬ、「キャリートレード」である可能性が大きい。
■ユーロが「キャリートレード」の対象である可能性が高い
「キャリートレード」というと、日本では、かつて一世を風靡(ふうび)した「円キャリートレード」を思い出す方が多いことだろう。少し前でも、米ドル安を説明する理由として「ドルキャリートレード」という言葉をよく耳にした。
「キャリートレード」とは、その対象となる通貨を借り入れ、他の高収益通貨に転換してスワップ金利を享受するという手法であるが、一般論として、「キャリートレード」の対象として売られる通貨(借り入れる通貨)には、次のような特性がある。
(1)低金利か、これから利下げ必至と想定される通貨であること。
(2)「安くなっていく」といった市場センチメントが強く、「相場の自己実現性」を持って、そのセンチメントがさらに強化されること。
(3)こういった市場センチメントと相場の自己実現性に支えられ、近々のトレンドがはっきり表れていること。この点については、因果関係が絡み合っており、値動きが鮮明であることが、市場センチメントと相場の自己実現性を増強させていく側面も強いことに注意が必要。
以上の特性を考慮すると、ユーロが「キャリートレード」の対象となっている可能性が十分に考えられる。
■ユーロ売り・豪ドル買いのキャリー取引が増えている!?
このことは、典型的なリスク選好通貨で、かつ、高金利通貨の代表である豪ドルとの関係を見ると一目瞭然である。実際に直近3週間の豪ドル相場を見ると、対米ドルでは2%ほどの上昇にとどまるが、対ユーロだと5%も上昇(ユーロ/豪ドルは5%の下落)している。
このような状況を考慮すれば、ユーロを借り入れて豪ドルに転換し、スワップ金利を狙う動きが増えてもおかしくはない。ゆえに、ユーロ売りが続き、そのユーロ売り自体、バブルではないということを意識せざるを得ないのかもしれない。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/豪ドル 日足)
また、このような見方を成立させるために、その大きな前提があることを見逃してはならない。それは「キャリートレード」の対象となる通貨自体がリスク選好型ではないことだ。
米ドル高が進むにつれて、従来のような「悪い米ドル高」に変化の兆しが見えてきている。そして、ユーロ自体はむしろ、リスクオンとの連動性を強める傾向にある。これこそが重要なポイントであり、当面の為替相場の基調を決定するだろう。
以上、最近のユーロ・ショートの拡大はバブルではない可能性があること、そして、その理由をご説明してきた。
だが、本当のところを言えば、弾けるまでバブルかどうかはわからないという点も強調しておきたい。
このあたりの考え方も含めて、次回、一緒に整理したい思っている。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)