■円高傾向が止まらない根本的な3つの原因とは?
足元の為替市場では、米ドル高と円高の基調が強まっている。ドルインデックスは81.50の高値をトライし、これに相まって、ユーロ/米ドルは16カ月ぶり安値(米ドルは対ユーロで16カ月ぶり高値)を更新した。
また、ユーロ/円の98円割れ、英ポンド/円の118円割れに象徴されるように、最近の円高はクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)にリードされる形で進行している。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨 vs 円 日足)
円高傾向が止まらない根本的な原因としては、円全体の内部構造が「最後の円高」をもたらしていること、日本の当局が中途半端な介入を行ったことが挙げられるだろう(「『介入するぞ!』と言いながらの介入は愚の極。日本の介入を成功させる方法は?」を参照)。
そして、米ドル/円よりもユーロ/円などのクロス円のほうが円高をリードしてきたためでもある。したがって、円売り・米ドル買いの介入だけでかたづくものではないことが明白だ。
そのような状況を理解してきたのか、最近では、安住財務相の口から介入の言葉が出てこない。
昨年、15兆円超もの血税を投入したが、結果は惨憺(さんたん)たるものとなった。それだけに、新たな行動に対しては日本政府も躊躇(ちゅうちょ)せざるを得ないようで、米国に批判されていることも大きいだろう。
結局のところ、先の選挙のマニフェストと同様に、民主党政権は為替政策でも中途半端な形で挫折しそうである。
■バブルは必ず弾けるものであるが…
言うまでもなく、ユーロのソブリン危機に伴う「ユーロ安・円高」を日本単独の介入で阻止できるわけがない。したがって、ユーロ安がどこまで進むかが肝心である。
暴落と言うほどは急落していないものの、ユーロは年初からジリジリと下がり続けている。その一方で、リバウンドはあまり見られない。
前回のコラムでも取り上げたが、IMMデータにおけるユーロのポジション動向を見ると、ショート(売り持ち)が過大に積み上がっている。1月3日(火)時点でのユーロのネット・ショートは13万8,909枚で、ユーロ発足以来の最高レベルにあった(「今のユーロ危機は周知されている危機。新材料が出なければ暴落はないとみる」を参照)。
したがって、短期スパンではリバウンドがあっても不思議ではないとみているのだが、現執筆時点では、リバウンドはまだみられていない。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
だが、バブルは必ず弾けるものである。
ユーロのショートポジションが過大なのに反動がないということは、このユーロ・ショート自体が「バブルではない」か、あるいは、「バブルであっても弾けるまでに時間がかかる」ということのどちらかしかない。
■ギリシャのEU離脱で、ユーロ売りは加速するか?
まず、このユーロ・ショート自体がバブルではないという視点で検証してみよう。
このコラムでこれまでも申し上げているように、基本的には、欧州をめぐる諸問題は周知されたものである。ユーロに関する悪材料が続出しているものの、すべては想定の範囲内である。
よって、本来ならばユーロ売りが一服すると、過大なショートポジションがいったん整理されるまでリバウンドしてくるはずである。だが、実際にはそうはなっていないことから、マーケットは新たに噴出するであろう悪材料を織り込もうとする可能性がある。
そして、その新たな悪材料は、フランスが最高格付けを失うといったレベルのものではなく、ギリシャがEU(欧州連合)を離脱するといったインパクトのあるものとなるだろう。
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