(「JFX・小林芳彦社長に聞く(2) 大規模介入の日に「逆指値買い」で大勝!」からつづく)
この機会に、主要通貨ペアについて、JFX社長の小林芳彦さんに「3月末までの相場見通し」を聞いてみた。
その予想レンジは次のとおりだ。
米ドル/円 76.50-83.50円
ユーロ/米ドル 1.2850-1.3650ドル
ユーロ/円 101.50-112.00円
ユーロ/スイスフラン 1.1980-1.2200フラン
ユーロ/豪ドル 1.2100-1.2800豪ドル
損切りが損切りを呼ぶ展開で円安が進行
2月14日(火)に日銀の追加金融緩和が発表され、それ以降、円安・米ドル高に動いているが、「円安の流れは定着せず、そのうち反落してくる」というのが当初の小林さんの見方だった。
「今の円売り・米ドル買いはヘッジファンドの買い戻しが中心で、最初は下のレートで売っていたヘッジファンドが損切りの買い戻しをしていた」のだという。ところが…
「途中からテクニカルで見て買いが優勢となりました。米ドル/円はついに週足で一目均衡表の雲を上に抜く水準まで上昇。売っていた向きのストップロスがさらに出るようなドミノ倒しとなってクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の水準も大きく上昇しました。
これは日銀の金融緩和の材料で今も米ドル買いをしているわけではなく、売っていた向きの損切りが損切りを呼ぶ展開になって流れが大きく変わってしまったのです」
(チャート出所:JFX「MATRIX TRADER」)
「これはおかしい」と思っても、流れについていくのがトレーダー。だから、「今は米ドル/円、クロス円ともに買いからスタートするトレーダーが大半になっている」と小林さんは話す。
輸出企業の為替予約で円高になるからくり
さて、小林さんは例年、2~3月にかけて行われる輸出企業による為替予約やレパトリエーションといった円高要因について解説してくれたので、それをお伝えしよう。
為替予約とは、あらかじめ為替レートを決めておき、将来の決められた期日に、そのレートで通貨を売買する取引のこと。また、レパトリエーション(レパトリ)とは、外国に投資されていた資金が自国に還流することだ。
輸出企業にとって2~3月は、4~6月(あるいは4~9月)に用いる社内レートを決める時期。社内レートとは、財務部が営業部から外貨を買い取るレートのこと。
たとえば、社内レートが1ドル=78円に決められると、財務部ではいつでも78円で米ドルを円に交換しなければならない。この為替リスクをヘッジするため、財務部では米ドル売り・円買いの為替予約を行うことになる。
これが円高要因になるという。
「仮に社内レートが78円で、もし相場が68円になったら、10円の損失が発生してしまいます。このため、社内レートが決まった会社では、予算の最低でも半分、多ければ7~8割を為替予約でヘッジします。
円高見通しになるほど、米ドル売り・円買いの為替予約が活発になり、円高を加速させる要因になるのです」
さらに、2~3月は決算期末に向けてレパトリが増え、外貨を円転する企業が増える。一方、外貨建て資産への投資を行うはずの生損保は3月が決算期末なので、2~3月に新規投資を始めることはまずありえないというのだ。
ただし、今年はやや様相が違うとも小林さんは話す。
「東日本大震災やタイの大洪水の影響などで、今年は貿易黒字が減ってきています。輸出企業の輸出量が減ったため、輸出企業の米ドル売りは出ているんですが、その量が減ってきているのです。そのため、先ほど申し上げたヘッジファンドの買い戻しと相殺され、米ドル/円の下落につながっていません。
けれど、米ドル/円を80円台からどんどん新規に買っていくほど、米国経済が良くなっているとは思えません。だから、84円を超えて上がっていくような感じはしないんです。
売っていた向きの損切りが米ドル/円、クロス円ともに一段落すれば、米ドル/円のアタマは次第に重くなってくるのではないでしょうか。おそらく83円を超えるとそういう流れになってくると思います」
(チャート出所:JFX「MATRIX TRADER」)
輸入企業の米ドル買いに目をつけた戦術とは?
ところで、先ほどは輸出企業の為替予約について小林さんに聞いたが、輸出企業と輸入企業では為替取引のやり方が違うという。
為替予約でまとまった為替取引を行う傾向がある輸出企業に対し、商社や原油などの輸入企業は毎日の仲値水準で取引することが多いのだ。
多くの輸入企業は、商品の購入代金を米ドルで支払うため、仲値が決まる午前9時55分に向けて米ドル買い需要が高まる傾向があるという。
そこで、こんな戦術も有効と小林さんは話す。
「輸入企業が毎日米ドルを買うのに対し、輸出企業が毎日米ドルを売ることはないので、ふだんの仲値時の需給バランスは米ドル不足になりがちです。実際、夜2時と朝8時のレートを比べてみると、朝の方が上がっていることが多い。
ここに目をつけて、毎日午前3~5時に米ドルを買い、仲値が発表される前に決済するような戦術も描けるでしょう。その日の相場の流れにもよるのでもちろんこれで絶対勝てるわけではありませんが、勝てる確率は高いと思います」
(チャート出所:JFX「MATRIX TRADER」)
まずは、この戦術がどのくらい有効か、過去の相場で検証してみるのもいいだろう。
ところで、JFXの小林芳彦さんはユーロに関しては、ダウンサイドリスクが解消していないとみている。
ユーロは戻り売り方針。ギリシャは夏前にデフォルトか
ところで、JFXの小林芳彦さんはユーロに関しては、ダウンサイドリスクが解消していないとみている。
「ギリシャが3月の大量国債償還の危機を乗り切ったとしても、その後、デフォルトする可能性が高いと私はみています。
なぜかというと、第1次支援のときに決められた、公務員の削減や歳出の削減といった約束事がほとんど守られていないからです。これではお金は借りられません。夏前にはギリシャはデフォルトする可能性もあるでしょう。
さらに次はイタリア、スペインなどの問題も控えています。ユーロ/米ドルの1.3ドル台は、薄氷の上にいるようなものです」
予想レンジは、ユーロ/米ドルが1.2850-1.3650ドル、ユーロ/円が101.5-112円。
ユーロは戻り売り方針だ。
(チャート出所:JFX「MATRIX TRADER」)
(チャート出所:JFX「MATRIX TRADER」)
スイス中銀の介入期待トレードができるユーロ/スイスフラン
このほか、注目される通貨ペアとして、小林さんはユーロ/スイスフランとユーロ/豪ドルを挙げた。
「ユーロ/スイスフランは、スイス中銀が1.2フランを割り込ませないように無制限に介入すると宣言していますから、1ユーロ=1.2フランに近づいたところで買う戦術が考えられます」
具体的には、「1.2020フランに買い注文、1.1950フランにストップ注文」を入れておくというもの。介入が入ってグンと上がったところで決済する。ストップ注文を入れておけば、万一介入が入らなかったときでも安心だ。
(チャート出所:JFX「MATRIX TRADER」)
また、ユーロ/豪ドルは、豪ドルの上昇トレンドと、ユーロの下降トレンドに着目。
「中長期的に見ると、ユーロよりも豪ドルのほうが強くなると考えられます。したがって、ユーロの戻り売りが有効です」
(チャート出所:ヒロセ通商「LION FX」)
ユーロ/豪ドルの予想レンジは、1.2100-1.2800豪ドルだ。
(取材・文/河合起季 撮影/和田佳久)
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0.3pips原則固定 (9-27時・例外あり) |
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