まず、為替市場のほうですが、先週の当コラムで予想したとおり、完全にレンジ相場に入り込んでしまいました。
【参考記事】
●金融市場は混沌、相場はレンジ入りか。 懸念は欧州経済危機の「負のスパイラル」(今井雅人、4月19日)
方向感を見極めるには、決定打不足です。
残念ながら、この傾向はまだ続くと思います。ていねいなトレードを心がけてください。
■日銀の「金融システムレポート」に注目
さて、今回は、2012年4月に発表された日銀の金融システムレポートについてご紹介をしたいと思います。
日銀は4月と10月の年2回、金融システムレポートというものを発表しています。
このレポートは、日本国内や海外の景気動向、金融市場動向、あるいは金融機関の動向について分析をしたものです。
金融は、いわば「経済の血流」のような役割を果たしていますので、経済全体を見るときには、こうした分析が非常に貴重な材料となります。
ですから、私自身、このレポートについては、大変重要視して見ています。
■資金調達難が欧州経済の低迷要因か
レポートの中身を見てみますと、冒頭で指摘したとおり、現在の世界経済全体が先行き不透明である、ということがいろいろなところで示されています。
まず、欧州に関してですが、欧州の銀行の資金調達環境がかなり悪いことを心配しています。
欧州の金融機関は、ECB(欧州中央銀行)が資金の供給をしてくれていることで、資金繰りの不安はかなり解消されています。
しかし、市場金利が高止まりしていることや、信用力が懸念されたイタリア国債などの証拠金率が引き上げられたことから、これらの国債を担保とするレポ取引(※1)が縮小するなどの影響もあり、資金の調達コストの上昇に悩まされています。
資金の調達コストが上昇していることによって、貸し出し金利も当然上昇しています。当然借り手である企業には、収益圧迫要因となってきます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 週足)
また、新しいバーゼル規制(※2)や各国における規制への対応のほか、欧州銀行監督機構から自己資本比率の引き上げを求められていることも影響して、銀行の貸し出し姿勢はより慎重になっています。
こうした点が、今後も欧州経済の低迷要因となってくることが予想されるということです。
(※1 編集部注:レポ取引とは、一方が債券を貸し出して、その担保として相手方から金銭を受け取り、一定期間経過後に双方が債券と担保金をそれぞれ返還する取引のこと)
(※2 編集部注:バーゼル規制とは、国際的な業務を行っている銀行が、健全性を保つために必要とされる自己資本比率などを定めた規制。同規制を定めたバーゼル銀行監督委員会は、主要各国で構成され、国際的な銀行業務の健全化や協力体制を整える機関として重要視されている)
次に米国ですが、欧州に比べると…
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