■最悪期は脱した米国、しばらくは調整が必要
次に米国ですが、欧州に比べると、かなり金融環境は良い状態にあります。企業の社債発行額も足元では増えていますし、銀行の企業向け貸し出しも増加しています。
ただ、問題となるのは、家計のバランスシート調整(※3)が、まだ道なかばであるという点です。
家計の債務残高の対可処分所得比率を示した「レバレッジ比率」を見ますと、サブプライムローンショックまでは一貫して上昇していましたが、それ以降は一転して下落傾向に入っています。
ところが、「レバレッジ比率」の水準は依然として2006年と同じであり、まだまだ調整は進んでいないことがわかります。
レポートでは、金融機関による差し押さえ物件の数が高止まりをしているため、こうした物件が潜在的な在庫として、今後の住宅価格の重石になる可能性があるということを指摘しています。
また、米国系銀行の「不良債権比率」を見ると、貸し出し全体では低下していますが、住宅ローンについては依然として高いままです。
米国も最悪期は脱しているものの、本格的な回復までには、バランスシート調整の期間が必要になってくるだろうということがわかります。
(※3 編集部注:急激な資産価格の変動の結果生じる莫大な債務を整理・縮小すること)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
■中国の住宅市場にも暗雲が…
そのほかに注目すべき内容としては、中国の住宅市場に関する見解が挙げられます。
中国の住宅価格が2012年に入って前年比マイナスで推移し始めた点も、世界経済全体に対する懸念材料であると指摘しているのです。
債務問題がくすぶり続ける欧州、最悪期は脱したものの本格的な回復には至らない米国、さらに住宅市場の雲行きが怪しくなってきた中国。
残念ながら世界経済の視界不良は、しばらく続きそうです。
冒頭に述べたとおり、為替市場は方向感に乏しく、完全にレンジ相場に入っています。
リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
しばらくはこの傾向が続きそうですので、ていねいなトレードを心がけるとともに、世界経済の動向を注視しながら、方向感を見極めるタイミングを計りましょう。
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