■「EU危機=ユーロ暴落論」は安易すぎる!
実際、「EUへの資金還流が大規模に発生していることが確認され、EUのソブリン危機がこれから深刻化していくだろう」といったコンセンサスが強くなればなるほど、欧州の銀行と企業は海外資産を処分し、これからの危機に備え、本国へ資金を還流させようとする傾向が強くなるだろう。
これは何の変哲もなく、ごく普通の反応だが、なぜか日本ではこういった話があまり聞こえてこない。
以上の分析も基本的にはファンダメンタルズの範疇に入るので、これをもってこれからユーロが上がると断言する気は毛頭ないが、筆者が言いたいのは、ユーロが騒がれたほど急落していないのなら、このような資金の流れから見た視点が重要だろうということだ。
俗論で言う「EU危機=ユーロ暴落論」は安易すぎるため、それとは距離を置くべきだろう。
【参考記事】
●「日本は少子化、低成長だから円安になる」という考え方は根本的に間違っている!(陳満咲杜、4月27日)
■最近の豪ドル安は米ドルや円が強いから生じたのではない
第2に円のパフォーマンスに関しては、一貫して受動的な立場で見なければならない。
要するに円高の本質は外貨安であり、最近下げがきつかった豪ドル/円は豪ドルの下げが主因で、円がリスク回避先云々という話は二の次であることは明らかだ。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 日足)
実際、豪州の大幅利下げや豪州の通貨高抑制政策による豪ドル/米ドルの反落が大きく、その背景にはドルキャリートレードの解消が盛んだったことがあるとも言われる。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 日足)
その動きが一巡したかどうかはこれから見極めたいところだが、最近の豪ドル安は米ドルや円が強いから生じた現象でないことは明らかだ。
■ドル全体のパフォーマンスを見極める2つのポイントとは?
となると、米ドル/円を除き、米ドル全体のパフォーマンスを見極めるポイントは以下の2点に帰着できるのではないかと思う。
まず、ユーロ圏への資金還流が続くかどうか。次に、ドルキャリートレードの解消が続くかどうか、である。
状況はやや混沌としており、答えをすぐ見つけるのは容易ではないが、リセッション確実とされる英ポンドが対米ドルで堅調なことを考えると、米ドル全体の行方をあまり楽観視しすぎないほうが無難かもしれない。
テクニカルの視点では、米ドル/円が一時79.52円を割り込んでいたものの、これは終値ペースではなかったから、エリオット波動論に基づくウェーブカウントを現時点では堅持したい。
【参考記事】
●フランスの政局云々だけでユーロ安とは限らない。米国にも2つの不安が再浮上!(陳満咲杜、5月7日)
●エリオット波動論で説明! なぜドル/円は79円台前半への深押しがなさそうなのか?(陳満咲杜、4月20日)
(出所:米国FXCM)
また、ユーロ/米ドルは、1.2800~1.3300ドルといったレンジをブレイクするのはまだ先で、ブレイクした方向が次のメイントレンドを示唆することだろう。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
いずれにせよ、足元は様子見の段階にあるが、前述の分析のように、巷にあふれる安易なロジックに流されず、冷静に相場の流れを見極める必要がある。ゆえに、本日は手短に失礼する。
(5月11日(金) PM12:00執筆)
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