それはほかならぬ、ユーロキャリートレード(※)の再興ではないかと思う。
(※編集部注:「キャリートレード」とは一般に金利が非常に低い通貨で資金を調達し、それを相対的に金利の高い通貨に替えて運用する手法のことをいう)
■ユーロキャリートレードが始まっている可能性
ユーロ圏の貸し出し金利は0.75%となり、史上最低レベルだ。その上、預金金利はゼロになったから、ユーロはかつてないほどの低金利通貨に転落した。
ゆえに、低コストのユーロを借りて、なお高い金利水準をキープするNZドル、豪ドルなど資源国通貨にシフトし、その金利差を享受する狙いが出てくるのも自然な成り行きだ。
言い換えれば、ユーロ/NZドル、ユーロ/豪ドルの史上最安値更新はユーロキャリートレードの可能性を示唆するシグナルとして読み取れる。
(出所:米国FXCM)
(出所:米国FXCM)
しかし、かつて円キャリートレードが行われた時期を考えると、1つの疑問が浮かんでくる。
つまり、キャリートレードが行われる時期のほとんどがリスクオンのムードが強かった時期であっただけに、果たして今のようなリスクオフの動きがなお強そうに見える現状でキャリートレードが流行るかどうか、という問題だ。
現時点では断定できない問題であるだけに、答えも定かではないが、詰まるところ、「ユーロキャリートレードがホンモノならリスクオフが続かない」、逆に「リスクオフが続くならユーロキャリートレードが続かない」といったロジックが成立するだろう。
こういった考え方に基づき、あえてリスクオフの動きは長く続かない確率が高いのではないかとみる。
■各国中銀はさらなる追加緩和策を打ち出すだろう
まず、中国の利下げが豪ドルなど資源国通貨にプラスの影響を与え、ユーロを押し下げた側面も無視できないだけに、中国のすばやい行動がリスクオフの動きに歯止めをかける効果が期待される。
さらに前述のように、7月5日(木)のマーケットの反応を見ると、中銀には想定どおりの政策ではなく、さらに踏み込んだ行動を迫る雰囲気が市場には強かった。だから、市場の要求に合わせ、各国中銀はさらなる行動に踏み切る公算が高い。
この意味では、ECBの国債買い入れや次なるLTROもそう遠くないと思われ、さらにリスクオフの動きになるのは難しいのではないかと思う。
事実、本日(7月6日)から「中国人民銀行に見習え」といった声が早くも聞こえてきた。日銀に対する圧力もまた強まっている。近々、日銀がさらなる緩和措置に踏み切ったとしても、サプライズではなかろう。
米国の場合は、7月6日(金)の米雇用統計次第といった見方が強いが、その結果が想定の範囲内なら、QE3(量的緩和策第3弾)に対する期待は安易に打ち消せないと思ったほうが無難だろう。
■米長期金利から見たリスクオフ継続の限界
次に、もっとも重要なのは米10年物国債の金利水準(米長期金利)だ。
リスクオフの動きが強ければ強いほど米国債は買われるから、米長期金利は低下していく。そして、米長期金利のチャートを見ると、史上最低金利をつけた日が6月1日(金)であることがわかる。
6月1日(金)と言えば、ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドル、豪ドル/米ドル、そして、米ドル/円が直近の安値をつけた日でもあった。
それは偶然ではなく、リスクオン/オフの動きと米長期金利の高い相関性を示す好例であった。
言い換えれば、これからリスクオフの動きがさらに強まっていくには、米長期金利が6月1日(金)につけた1.4%のレベルをさらに割り込んでいかないといけない。
それはかなり難しいものだから、理屈としてはリスクオフの継続があったとしても、おのずと限度があるのではないかと思う。
したがって、ユーロキャリートレードが継続していく可能性は高く、またユーロキャリートレードが続くのであれば、これから徐々にリスクオンの環境に転換していくのではないかと思う。
また、ユーロキャリートレードが継続するとはいえ、リスクオンの環境にシフトしていけば、ユーロ/米ドルの下値余地は限定され、また、米ドル/円も上昇していくだろう。
最後にユーロキャリートレードの話をずいぶんしてきたが、前述のユーロクロスのほとんどはオーバーシュートの状況にあり、いったん切り返しを演じてもおかしくない。だから、今回述べたことは、あくまで中期スパンの視点でとらえる必要があることを記しておきたい。市況は如何に。
(7月6日 14:40執筆)
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