(「自動売買反対だった全米最強FXコーチが ついに導入したEA『ワラボット』とは?」からつづく)
■チャートに箱を描いてワナを仕掛ける!
今年(2012年)からEAを操り始めた裁量巧者のロブ&ブラッドリーは、「ワラボット」、「マウストラップ」という2つのEAを同時に運用している。
前回の記事で説明したとおりで、ワラボットのロジックはだいたい理解できたが、気になるのがマウストラップ。ネズミのワナ……?
「市場にワナを仕掛けるような手法なんです。これはロブの『サプライズトレード』という手法がもとになっています。特徴はリスク・リターンが大きくて、勝率が低いこと。勝率は15%くらい(笑)」
(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
たった15%!? それってぜんぜん笑えない……と思うのだが、それでも問題ないことを、サプライズトレードの特徴を知れば理解できるはず。
サプライズトレードは『アリゾナルール』と呼ばれるロブが編み出した一連の手法の1つ。アリゾナルールでは、800SMA(単純移動平均線)と、62EMA(指数平滑移動平均線)、それに200SMAを使うが、サプライズトレードでは800SMAと62EMAの2本だけでOK。
【参考記事】
●ロブ・ブッカー流・米国式FX(1)相場の局面を判定する「アリゾナルール」
●ロブ・ブッカー流・米国式FX(2) 急落後、どこで止まるかわかる方法とは?
「15分足のローソク足が800SMAを上抜けしたり下抜けしたりして、レンジを形成しているときがチャンスです。ローソク足は800SMA付近がホーム、故郷ですが、トレンドが発生するとそこから旅立ちます。トレンドの発生です。
このレンジから抜けるときのブレイクアウトを狙うがサプライズトレードです」
(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
800SMAを挟んで上抜け、下抜けを繰り返しているレンジを見つけたら高値・安値でボックスを描く。このボックスを抜けたら、抜けた方向へ取引する。図の場合はボックス下抜けなのでショート。ただし、ブレイクアウトは15分足の終値が抜けたかどうかで判断。ヒゲで抜けた場合はエントリーせず、新しくできた高値あるいは安値でボックスを広く描き直す。
■連敗してもウツ病にならない最強メンタルのトレーダー
「でも、ブレイクアウト狙いの弱点は、一般的に勝率が低いこと。サプライズトレードも同様です。ボックスを抜けたと思っても、またすぐボックス内に戻ってきてしまうことが多い。
そんなときはすぐ損切りして、箱を大きく描き直し、次のブレイクアウトを待ちます。利益確定は62EMAが目安になります」
(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
先ほどのショートで入った場合、利益確定は62EMAの上で15分足の終値が62EMAの上にきたとき。反対にロングで入ったときは62EMAの下でクローズしたときだ。ボックスを抜けて本格的なトレンドが形成されると、大きな利益が期待できる。
サプライズトレードの難点は、チャンスが少ないこと。
800SMAを挟んだレンジになることはそう多くはないし、ボックスができたとしてもいつブレイクアウトするかわからないから、寝ている間にチャンスを逃してしまうかもしれない。
それにメンタル面もつらい。ボックスを抜けたと思っても損切りさせられることが多いから、損切り幅は小さく済むとはいえ、連敗が続くと嫌気がさしてしまうかも。
■サプライズトレードの弱点はEAを使えば弱点にならない
「だからサプライズトレードはEA向きなんです。いつブレイクアウトがきてもEAは24時間監視してくれるし、どんなに連敗してもEAがウツ病になることはありません(笑)」
ということで、サプライズトレードをEA化したものが「マウストラップ」なのだ。
「勝率は15%くらいしかないですが、損切りは10pips程度だし、勝つときは200pips以上とれることもある。勝率の低さをリスク・リターンの比率の大きさでカバーしてくれます。
ボクはこれをユーロ/米ドルの15分足だけで使っています。バックテストして、それがいちばん良い結果だったから」
バックテストはEAを始める前の基本。イケイケなロブに対して、慎重派のブラッドリーさんは良いコンビなのだが、ガチガチの裁量派だった2人が考えるEA運用のツボを聞いてみよう。
■便利なストラテジーテスターはもっと使ってみよう
「最初に絶対やるのがバックテスト。メタトレーダー(MT4)なら『ストラテジーテスター』を使ってカンタンにバックテストできるから、いろんな通貨ペアや足でやってみて、どれが結果が良いのか確認する。
バックテストするときは、なるべく長い期間のデータで検証してください」
(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)
メタトレーダー(MT4)の「ストラテジーテスター」は、カンタンにバックテストができる優れもの。こうした収益曲線や詳細なテスト結果をレポート表示させたりできる。また、ストラテジーテスターの隠れた利点に、ローソク足を1本ずつ表示させる機能がある。[セッティング]のタブで、[Visual Mode]にチェックを入れてバックテストを始めるとチャートが動き出すが、[||]ボタンや[>>]ボタンで動きを止めたり、再開させたりできる。
■バックテストレポートではココに注目を!
「バックテストのレポートではどのくらいの利益が期待できるか、収益率を確認したり、1回のトレードで最大いくら損する可能性があるかを見てください。大きなロスカットがあっても強制決済されないよう、取引サイズを決めるためです。資金管理のためには、最大ドローダウンも大切です」
ドローダウンとは下落幅。最悪の場合、どれだけ資金がへこむ可能性があるかを見るために、最大ドローダウンは自動売買で重視される指標だ。
そして、最大ドローダウンがあっても口座がパンクしないように、取引ロットを決めていこう。
このような収益曲線のEAがあったとする。矢印を引いた箇所では資産が減少している。これらがドローダウンで、なかでも青い矢印のドローダウンは下落幅がいちばん大きい。この青い矢印が最大ドローダウンとなる。
■資金管理のツボ「裁量は『%』、EAは『ロット固定』」
「資金管理が大切なのは裁量トレードもEAも同じ。自分の口座資金のどのくらいをかけるのか、よく考える必要があります。
裁量トレードだと『1トレードあたりの損失額は口座資金の1%まで。同時にポジションをとっても最大で5%以内』としていますが、EAでは『%』ではなく、固定のロットサイズで考えるようにしています。
『%』で考えると、損切り幅が小さいときでも、予想外に大きな取引ロットになってしまって、何かあったときに大きく資金を減らしてしまうかもしれない」
ということは、EAでは「ちょっと少ないかな」というくらいの取引ロットで回すのがよさそう。アルパリジャパンなど1000通貨単位で取引できるメタトレーダー(MT4)口座の会社もあるので、少額でEAを試してみたい人にはいいかも。
【参考コンテンツ】
●メタトレーダー(MT4)が使えるFX会社を徹底比較(1000通貨単位で取引できるFX会社を上位に表示)
■EAを安定稼働させるためにVPSが必須。その選び方は?
「本気でEAに取り組むなら『VPS』も必要です。24時間ずっとEAで取引するためにはメタトレーダー(MT4)を24時間起動しておく必要があります。自宅のパソコンをつけっぱなしにするのは不安定ですが、VPSなら安定的にEAを稼働させることができる」
VPSについての詳細は、以下の【参考記事】で。
VPSにインストールしたMT4ならば、スマホや出先のパソコンからMT4にアクセスしてEAの運用状況を確認したりもできる。
【参考記事】
●今すぐVPSを始めるべき3つの理由。MT4派必見の「VPS」最終案内!
●しろふくろうさんに聞くVPSの魅力(1) 自宅PCでシストレをやってはいけない理由
●しろふくろうさんに聞くVPSの魅力(2) メタトレーダー用に最適なVPSとは?
●しろふくろうさんに聞くVPSの魅力(3) VPSがグ~ンと安く使える裏ワザとは?
「VPSはいろんなサービス、プランがありますが、ボクが使っているのは英国の会社のいちばん安いプラン。2、3個のEAを稼働させるだけならそれで十分です。
ただ、以前使っていたVPSサービスではサーバーが不安定でログインできないことが多かった。安定して稼働するVPSを選んでください。最初は少し高くなっても毎月更新の支払いにして、『ここは良さそうだ』と思ったら、半年、1年の契約にするのが良いと思います」
日本のシステムトレーダーだと、「お名前.com」(サービス名は「Windowsデスクトップ」)と「使えるねっと」の2社いずれかを利用している人が多いようだ。
■EAは自分を補うツール、使う目的をよく考えよう
「EAは魔法の杖じゃない。ボクが銀行にいたとき、システムトレードで運用する部隊がいましたが、たくさんのエンジニアが毎日チューニングしながら運用していました。
自動売買だからといって裁量トレードよりもカンタンに稼げるわけではありません。自動売買は『自分の代わり』ではなく、ツールです。どう使うかは結局、自分次第なんです」
「楽して儲ける」ためではなく、自分で監視できない時間帯をEAに補ってもらったり、手法分散の1つの手段としてEAをポートフォリオに取り入れたり、人の目じゃ気づかないようなチャンスをEAに見つけてもらったり…。
EAをどんなツールとして使うのか、自分なりの目的、用途をよく考えてからEAを使うべし。そうすればEAはきっと強い味方になってくれるはず!
(取材・文/ミドルマン・高城泰 撮影/和田佳久))
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