■バーナンキ議長、ドラギ総裁ともに発言は予測の範囲内
前回8月31日(金)の本コラムでは「ジャクソンホールのバーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演がマーケットにもたらす影響は限定的」と指摘していたが、結果はそのとおりだった。
【参考記事】
●QE3はある? ない? いずれにしても米ドル全体の値動きは限定的であると予想
バーナンキ議長の話には新味がなく、マーケットは早くも今晩(9月7日)の米雇用統計に焦点をシフトしてきたからだ。
ところで、昨日(9月6日)のECB(欧州中央銀行)理事会も、ほぼ事前予測に沿った内容を決定したから、ある意味では「新味なし」とも言える。
要するに、ドラギECB総裁は「有言実行」したわけで、マーケットの期待を裏切ってはいないが、サプライズを与えたとも言えない。
具体的には、ECBは新たな国債買い入れプログラム(OMT)を実施することに合意。「借入コストの高騰で困難になった国の3年物までの国債を無制限に買うことができる」と定めた。
こういった政策措置に関する「識者の見方」は本日(9月7日)多数出ているので詳しい説明は省くが、マーケットの事前予測とかなり近い内容だったことを強調しておきたい。
ゆえに、ユーロ/米ドルのみを見る限り、ECBの新政策がもたらすインパクトは限定的だ。
むしろ、「うわさの買い、事実の売り」が見られたほど、マーケットの反応は実に冷静だった。
■予想どおりのECB政策で「事実の利益確定」
実際、最近のユーロ/米ドルは高値圏での推移を保っているものの、8月31日(金)高値の1.2637ドルはバーナンキFRB議長の講演前にすでに達成していた。
これが昨日(9月6日)の高値1.2652ドルとかなり近かったことから考えると、マーケットは「うわさ買い」を行なっていたことがおわかりいただけると思う。
FRB議長の話を待たずにユーロを買っていたから、ECB政策に対する期待は熱かったと言えるだろう。
しかし、期待されたとおりの政策が発表されると、1.2652ドルまで上昇し、わずかに高値を更新をしたものの、一時1.2561ドルまで反落していた。「事実の売り」あるいは「事実の利益確定」が行なわれたと観察できるだろう。
■ドルインデックスとユーロ/米ドルの値動きを比較すると…
もっとも、筆者は一貫してユーロのリバウンドを指摘してきたが、ECB政策がどうであれ、当面、ユーロ/米ドルは目標達成感が強いとみていた。
いつものように、ファンダメンタルズからは上値目標を測れないため、やはり相場の内部構造から、つまりテクニカルアプローチでしか推測できない。ユーロのターゲットに関しては、昨日(9月6日)、筆者のブログで公開しているので、興味のある方はご参考まで。
こういった見方を証左するドルインデックスの値動きに、注意していただきたい。
下のチャートが示すように、ドルインデックスは安値圏に沈んでいるものの、ECBの政策発表があっても、実に8月31日(金)安値を割り込めずにいる。
こういったところが、ユーロ/米ドルとの「ダイバージェンス(※)」を示しているわけで、こういったシグナルが強ければ強いほど、前述のユーロ/米ドルに関する見方は有力になってくるだろう。
(※編集部注:「ダイバージェンス」とは、
(出所:米国FXCM)
■ユーロ/円上昇は米ドル/円の急伸が理由
ところで、9月6日(木)のユーロ/円は大きく上昇していた。
ユーロ/円の上値志向およびターゲットについて、筆者は前回8月31日(金)のコラムにて、チャートをもって説明していた。
【参考記事】
●QE3はある? ない? いずれにしても米ドル全体の値動きは限定的であると予想
よって、想定どおりの展開であり、まったくサプライズではないがユーロ/円はクロス円であるだけに、ユーロ/米ドルの値動きが限定的ならば、米ドル/円の急伸以外にユーロ/円上昇の理由はあるまい。
ゆえに、9月6日(木)の米ドル/円の急伸も、事前にある程度推測できたわけだ。
重要だから、繰り返しておきたい。前述のように、基本的にはユーロ/米ドルには目標達成感が強いとみていた。そして、内部構造からみるとユーロ/円の上昇の可能性が高く、それは結局、米ドル/円の上昇を織り込んでいたということだ。
以下のチャートと説明は、筆者が9月4日(火)に制作したものだが、参考までに提示しておく。
(出所:米国FXCM)
8月20日高値79.66を起点とした下落は5波変動(緑)の完成をもって31日安値78.19にて下落一服の公算。本日安値更新なしではリバウンドを展開する見通し。
V波のa-b-cパターンに鑑み、切り返しも同じくジグザグ型調整波を形成する見通しだ。また、同序列における下落c波(黄)の構造と同じく、78.19からの切り返しの最初波として、a-b-c-d-eの変動パターンをもって8月20日高値から引かれた抵抗ラインの打診を試す公算。
その後の調整b波は78円台前半に留まれば、再度切り返しを展開しよう。もっとも、8月20日高値からの全下落幅に対するスピード修正の意味合いは濃厚、c波は延長される見込み。79関門以上の
回復余地を拓く。
確かに、ECBの政策発表があったからこそ…
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