■米ドル/円95円への期待は裏切られる?
日銀次期総裁人事や日本の経常赤字といった材料に期待し、95円の心理的大台を目指すといった思惑がくすぶるなか、市場関係者を失望させる可能性が逆に大きくなっているのではないかと思う。
マーケットというものは、市場の自己実現性を持つ一方、大衆の意表を突く習性も有していることを忘れてはいけない。
この意味では、「猫も杓子も」95円やら、100円やらと騒ぐなか、目先に限っては慎重なスタンスを取ったほうが無難であろう。
昨日(2月7日)一番動いていたユーロ/円が先行的な意味合いを持つなら、円安トレンドにおけるスピード調整の可能性について、ユーロ/円の日足から以下のようなサインが読み取れることを軽視すべきではないかもしれない。
日本伝統のチャート分析で言うと、2月4日(月)のローソク足の値幅を抱き込む形で2月5日(火)のローソク足が形成されており、「抱き線」というパターン(丸線で囲まれた部分)が示されていた。
(出所:米国FXCM)
このパターンが安値圏にて出現したなら、買いサインと解釈されるが、高値圏に出てきた場合、売りサインと解釈されている。
したがって、2月6日(水)にわずかに高値更新した後、陰線引けしたのは、この「抱き線」の意味合いに沿ったような値動きに見える。
また、昨日(2月7日(木))の陰線を入れて考えた場合でも、4日(月)のローソク足から「宵の明星」(四角線に囲まれた部分)の足型が示されており、やはりこれも売りサインとみなされる。
2012年9月安値から、米ドル/円と相まって、一貫して円安トレンドを大きく進めてきたユーロ/円の上昇一服があれば、必然的に米ドル/円やほかのクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)通貨ペアにも影響がある。
近々スピード調整による反動、つまり円売りポジションの買い戻しも意識しておくべきだろう。
2012年11月からの円安進行のスピードが速すぎただけに、場合によって、円安トレンドの再開は夏場まで待たなければならない可能性もある。
■RSIをトレンド系指標として見ると、円安が本物とわかる
もちろん、円安トレンドは簡単に崩れないから、円売りポジションの買戻しがあってもあくまでスピード調整に留まり、円安トレンド自体は継続されるだろう。
それを証左する材料として、今回は米ドル/円とユーロ/円の月足を見てみたい。
(出所:米国FXCM)
(出所:米国FXCM)
両チャートの月足には、RSIが表示されるが、RSIの変動レンジをよく観察すれば、実はブル(上昇)トレンドとベア(下降)トレンドが分かれていることがわかる(赤ライン部分で分かれている)。
つまり、RSIはオシレーター系指標でありながら、トレンド系指標の役割も果たすわけだ。
このような見方をマスターし、RSIを観察すれば、米ドル/円にしてもユーロ/円にしても、両通貨ペアが下落ウェッジというフォーメーションの上放れと同時に、かつてのベア変動レンジからブル変動レンジへ大きくシフトしてきたことがわかる。
ゆえに、今回の円安トレンドが本物で、これからも続く公算が高いというわけだ。
■RSIに点灯したリバーサルシグナル
また、RSIの見方を極めれば、足元では加熱しすぎで、トレンドの進行が行きすぎた分、リバーサルのシグナルも読み取れる。
米ドル/円で見ると、RSIが対応する位置が、2007年高値に対応する位置よりも高く、またユーロ/円でも、2009年高値に対応する位置よりも高いことがわかる。
これがいわゆるリバーサルシグナルの点灯で、近々スピード調整の可能性があることを示唆している。
まとめてみると、巷の円安期待の強さと対照的に、テクニカル的には円安がいったん限界にきている。
早ければ本日(2月8日)、遅ければ来週(2月11日~)から調整してくると思う。
もちろん、短期スパンに限って言うと、調整する前にもう一段高することもあり得るが、総じて上値余地は限定的で、反落しやすい時期に差し掛かっているのではないかとみる。市況はいかに。
最後に、今回は目先の市況に専念したため、前回のコラムで予告していた「総括」がまた次回になってしまうことを、ここでお詫びしたい。
【参考記事】
●「ミスター円相場」と「アベノミクス相場」、18年の時を経た2つの相場の相違点とは?(2013年2月1日、陳満咲杜)
(2月8日 PM1:20執筆)
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