こういった認識の差があった以上、WSJの記事に関するウワサが投機筋を刺激し、米ドル全面高を引き起こしたのも自然な成り行きとも言える。
ウワサ自体がサプライズとはいえ、材料として出るべきところに出たので、我々の想定内とも言えるのではないかと思う。
■円安トレンドはどこまで拡大する?
では、円安トレンドは100円の大台突破をもって、どこまで拡大していくのだろうか。
巷では110円とか120円といった上値ターゲットが提示されるが、筆者としてやはり慎重なスタンスを崩さず、長期スパンではいずれ110円とか120円の大台打診を有力視するが、目先は102円台前後が天井ではないかと思う。
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最大の理由として、やはり米金利動向とFRB政策がある。
結論から申し上げると、FRBが早期出口政策を模索すれば、米金利高(債権安)を招き、現在の米ドル/円レートを後追いする形で、日米金利差は拡大。それをもって円安の正当性が証左されるだろう。
そうでなければ、米ドル/円は特に割高(つまりオーバーボート)の状況にあり、短期スパンでは続伸してもやはりおのずと限界がある。
では、肝心のFRB政策はどうなるのだろうか。
バーナンキFRB議場の腹にいる虫でもない限り、誰にも断定できないが、前述のように、FRB内部でも意見が対立している上、米景気回復になお懸念が多い現時点では、バーナンキ氏がQE3を直ちに縮小するわけにはいかない、とする推測は妥当で理にかなうだろう。
もっとも、つい最近、QE3が不十分で、QE4も必要ではないかとささやかれていただけに、最後の最後までやり抜けないと、リーマンショック以来のFRBの努力がすべて水の泡になってしまうことを誰よりも認識し、また危惧しているのは、他ならぬバーナンキ議長自身であろう。
したがって、WSJ報道に関するウワサはインパクトが大きかったものの、マーケットはいずれ冷静に考え、QE3縮小は時期尚早という結論にたどり着くだろう。
■ユーロ/米ドルと豪ドル/米ドルの値動きの違いに注目
このような見方を証左するように、ユーロ/米ドルと豪ドル/米ドルの値動きの違いが注目される。
同様に利下げした両通貨ペアの、ウワサが出た後のパフォーマンスに温度差があった。
ユーロ/米ドルは、執筆中の現時点でなお1.3000ドルの大台を維持できたことに対して、豪ドル/米ドルは2012年6月以来の安値となっている。
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言ってみれば、利下げ後も「意外」に底堅く推移したユーロと、利下げ後、直ちに売られてきた豪ドルの差が、ウワサの後も一段と拡大したのは、トレンドの継続といったテクニカル要素以外に、外貨サイド自体の事情がより重視された証拠ではないかと思う。
ユーロ圏は問題山積みなだけに、利下げがユーロにプラスとなる。逆に高金利通貨の豪ドルはさらなる利下げの可能性を示しているから、目先売られることになっているだけだ。
言い換えれば、米ドルサイドの事情には大きな変動がないと思われるから、外貨同士の差が出ているわけで、その裏読みをすれば、マーケットのコンセンサスとして言われるほどFRBは政策変更へ傾いてはいないとみる。
この意味では、前回のコラムで提起した円安トレンド継続の条件のうち、豪ドル/円に関する見方をなお堅持したい。
【参考記事】
●GW前は相場がトレンド転換しやすい!連鎖的に売りが売りを呼ぶリスクに要注意(2013年4月26日、陳満咲杜)
言い換えれば、米ドル/円とユーロ/円、英ポンド/円などクロス円が高値更新したものの、豪ドル/円が近々高値更新できなければ、一種のダイバージェンスとみなされ、米ドル/円や他のメジャークロス円も言われるほど高値の余地は大きくないだろう。
いずれにしても、米ドル/円に関しては、テクニカル要素から見れば、究極のオーバーボートの状況に達しているから、来週(5月13日~)あたりから頭打ちを果たしてもおかしくない。このへんの分析は、また次回に。
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