■バーナンキ氏の「裏切り」が市場にショックをもたらした
ジェットコースターに乗っているような相場だ。
先週末(7月5日)、米雇用統計の好調で米ドル買いが進んだが、昨日(7月11日)未明、一転大きく売られた。
バーナンキ氏の「裏切り」がショックをもたらしたわけだ。
FRB(米連邦準備制度理事会)議事録による内部意見の対立が露呈した上、バーナンキFRB議長が「しばらくは非常に緩和的な金融政策が必要だ」と明言したことが、マーケット関係者を狼狽させた。
前回のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、出口政策やそのスケジュールに言及されていただけに、バーナンキ氏の「裏切り」はまさにショックそのものであった。変動率の拡大も当然の成り行きだ。
■やはり、米ドル上昇は限界と見るのが妥当
前回のコラムでは、主に2つ結論を申し上げた。
すなわち、米雇用統計の好悪と関係なく、米ドル全体の上昇余地が限られることと、米ドル/円の高値打診があれば、戻り売りの好機であることだ。
【参考記事】
●今回の米雇用統計はなぜ特別なのか?ドル/円の高値打診があれば売りの好機!(2013年7月5日、陳満咲杜)
実際、先週末(7月5日)の米雇用統計、予想より好調だったことから、米ドルは急騰していた。「米ドル全体の上昇余地は限られるといった見方は間違いだったではないか」とのお叱りもいただいているが、メイン通貨ペアのユーロ/米ドルと米ドル/円の値動きを検証してみたい。
前回のコラムでは、「ユーロ/米ドルは日足において『ヘッド&ショルダーズ(※)』といったフォーメーションを形成しているが、ただちに同ネックラインを下放れするかどうかは、なお慎重に見極めたいところだ」と強調していた。
そして実際、先週末(7月5日)、米雇用統計の好調があったにもかかわらず、ユーロ/米ドルは同ネックラインを打診したものの、割り込みはしなかった。
同ラインの下放れは、今週の火曜日(7月9日)まで待たなければならなかったことから考えて、筆者の見方が妥当であったことがおわかりいただけるだろう。
(※編集部注:「ヘッド&ショルダーズ」はチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。人の頭と両肩に見立てて「ヘッド&ショルダーズ」と呼び、仏像が3体並んでいるように見えるため「三尊」と呼ぶこともある)
(出所:米国FXCM)
そして、肝心の米ドル/円については、米ドル買いの限界がより明白だった。いくら好材料があっても、いわゆるアベクロラインの抵抗にすっかり拒まれ、ついに超えることができなかったから、まさに戻り売りの好機だった。
【アベクロラインに関する参考記事】
●カギは“アベクロライン”の平行線にあり!円安局面は外貨売り・円買いのチャンスか(2013年4月19日、陳満咲杜)
(出所:米国FXCM)
前回のコラムでは、101.20円~101.80円といったレジスタンスゾーンにて米ドル/円の頭打ちを想定していたので、今週(7月8日~)高値の101.49円は、ほぼ予想どおりである。
【参考記事】
●今回の米雇用統計はなぜ特別なのか?ドル/円の高値打診があれば売りの好機!(2013年7月5日、陳満咲杜)
上のチャートのように、ライン1本をもって事前にポイントを押さえることも不可能ではないが、実戦ではやはり、より具体的な戦略と戦術が必要だ。
米ドル/円のトップアウトおよび売りポイントについて、最近筆者がコメンテーターを務めるラジオ番組にて詳説しているので、興味のある方はそちらをお聞きいただければ、おおむね理解できるのではないかと思う。
■「ユーロクロス」と「ネットポジション」が今後のカギ
では、これから相場はどうなるか。筆者はこれからの相場を解くには、2つのキーワードが大事だと思う。
すなわち、「ユーロクロス」と「ネットポジション」である。
前者に関して、ユーロ/円がベア(下落)トレンドを展開していけば、ユーロ/米ドルのベアトレンド復帰と米ドル/円の軟調といったセットが考えられる。
よって、ユーロ/円の急落があれば、ユーロ/米ドルと米ドル/円の両方がベアトレンドにあるか、最低でも片方が急落していることを意味するであろう。
同じように、ユーロ/豪ドルの反落が続くのであれば、ユーロより豪ドルの切り返しの方が、一段と余地を拡大する公算が高いと思う。
では、ユーロはどうなるのか。そして…
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