■ドルインデックスはスピード調整するもののトレンドは継続
マクロ環境では、NYダウの史上最高値の再更新もあり、警戒感と安心感が入り混じった雰囲気がマーケットに漂っている。
バーナンキ氏の発言もあり、リスク回避の値動きは今のところ鮮明になっていないものの、テクニカル要素からマーケットには過熱感を心配、警戒する向きが多く、薄商いになりがちな夏場において、市場関係者はピリピリした緊張感を強いられている。
短期スパンでは、NYダウの急落がない限り、ドルインデックスが一段とスピード調整する可能性を否定できない。ただし、調整が深まるとしてもあくまでポジション調整、スピード調整とみなされ、ブル(上昇)トレンド自体は継続できる見通しだ。
ポジション調整の本意は、前回のコラムでも指摘していたように、通貨ペアごとに違う状況にあり、通貨ペアごとの値動きの相違で違った解釈があってもおかしくない。
【参考記事】
●米ドル/円の上昇は限界! 高値更新にはいったん下落が必要とみる理由とは?(2013年7月12日、陳満咲杜)
ドルインデックスは、7月9日(火)までの統計(IMM)では、ネットポジション(ロングとショートを相殺したもの)として24万4223枚のロングにあり、市場関係者がQE縮小に過大な希望を寄せていたことがわかる。
マーケットというものは多数派をがっかりさせることが得意だから、目先の反落は、こういったポジションを軽くする動きと理解できれば、より腰の据わったストラテジーを構築できると思う。
同様に、7月9日(火)までの統計では、ユーロのネットポジションはショートに傾き、総建玉は22万5051枚にも増えていた(7月2日までの統計に比べ、約150%増)。
ユーロ/米ドル同様に、「三尊型」を猫も杓子も描くようになった時点で、ユーロが素直に下放れせず、逆に切り返してきたから、当面踏み上げが続いてもおかしくなかろう。
ただし、昨年(2012年)夏場と比べ、ユーロのネットショートは総額からみればまだ微々たるものである。
この意味では、踏み上げ一巡後、ユーロ売りの余地がたっぷりあるということで、ユーロの戻りがあれば、売り好機ととらえるべきであろう。要するに、「のりしろ」が大きい分、ベア(下落)トレンドの進行余地、なお大きいと思われる。
■米ドル/円の「荷物整理」は来週も続く
対照的に、米ドル/円は高値圏に留まり、円の先安感が強い、または円安予想の多い中、円売りポジションに傾き、また円売りポジションが増加傾向になることも推測されやすい。
7月9日(火)までの統計では、ネットショート8万枚超となり、2007年前半以来の高い水準にある。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
これから円安トレンドが続くにしても、より高い山を登っていくには、重い荷物を下ろす必要があるように、傾いた円売りポジションをいったん整理しないと、円安トレンドの加速が難しいとみる。
したがって、米ドル/円の「荷物整理」は、来週(7月22日~)も続く公算が高いとみる。
■ユーロ/円、英ポンド/円は売りの好機?
最後に、前回予想していたユーロ/豪ドル、英ポンド/豪ドルのシナリオは、両通貨の高値更新によって「進行路線」の間違いが証左されたが、完全な間違いではないと思う。
【参考記事】
●米ドル/円の上昇は限界! 高値更新にはいったん下落が必要とみる理由とは?(2013年7月12日、陳満咲杜)
ゆえに、ドルインデックスの反落が続くかどうかと関係なく、短期スパンにおける豪ドルのリバウンド余地は、なお大きいとみる。
また、ユーロ/米ドル、英ポンド/米ドルの切り返しが短期スパンにおいてなお継続されるなら、ユーロ/円、英ポンド/円も高値トライの公算が大きいが、5月高値さえ超えなければ、2013年の年内一杯におけるもっともよい戻り売りの好機に恵まれると思う。検証はまた次回に。
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